小さな冒険
「いやー、昨日は色々なことを知れたな。今日は研究施設にはいかないのか?」
俺はレイに問う。
「ああ、俺、今日学校だからさ。知りたいことは山ほどあるけど、水曜日まで待って」
「今日、月曜日か。あと2日も待つのかー。はやく知りたいな」
「まあ、そんな焦るなって」
はやく真相を知りたい俺をなだめるようにカジナはそう呟く。
「行ってきます!」
そうこうしている間にレイは学校に行ってしまった。
その後二時間くらいたったころ、ココミの顔色が急に悪くなってきた。
「おい、どうしたココミ。大丈夫か?」
ココミの様子にいち早く気づいたカジナは、ココミの具合を心配する。
「やばい! ひどい熱だ!」
ココミの体は明らかに熱かった。
「どうする? レイは今学校だし、もしレイに会えてもレイが治せるとは思えないぞ!」
俺は、そう言う。
「なに言ってんだバカ!昨日言ったクライアントβに行くに決まってんだろ!」
俺は見当違いな意見を出していたことに気付き、恥ずかしくなった。
「そ、そっか。でも豚三匹、しかも一匹病気の状態で行けるかな?自転車で10分くらいとは言え、豚の足で歩いていかば一時間はかかるぞ」
「ほっといてもこのままじゃ死ぬ勢いだぞ!行くしかない!」
カジナは力強くそう言い、三匹は外に出た。
カジナは、レイの家の近くにあった荷台を短い手足を器用に使いながらたぐりよせてきた。
「ほら、ココミ。これに乗れ。」
ココミはよれよれと歩き、なんとか荷台に乗った。
「よし、行くぞ!」
カジナの大きな声と共に、俺らの小さな冒険は始まった。
20分後
「疲れた......。」
豚の体には徒歩もキツいらしく、20分歩いただけで2000m走を本気で走ったくらいの疲れだ。もうやだこの体。
ただ、カジナはなぜかいつもより暑苦しく、力強い。
「これくらいでヘバッてるんか!!まだまだじゃのう少年!!」
もはやキャラ崩壊していた。
俺はここであることに気付く。
...カジナ、ココミのこと好きなんじゃね?
そう考えれば、そう無理もない。確かにカジナも中身は人間だ。例え相手が豚でも、恋はしてしまうものなんだろう。
それは、仕方ない。恋愛観とは人それぞれなのだから。
これってなんて言うんだろう。豚に対する豚の愛だから、ブタズ・ラブ。略してBLなのだろうか?
と、下らないことを一人で考えているとカジナが話しかけてきた。
「なあ、あのイノシシ、さっきから俺らのこと見てないか?」
そう言いながら、カジナは左の方向に指を指す。
確かにそこには大きなイノシシの姿が見えた。
そのイノシシは、俺ら二匹と目が合うと、すぐどこかに去って行った。
(なんだったんだ今の...。)
俺はそう思いながら今まで通り歩く。
その後30分ほど歩いただろうか。
クライアントβの看板が見えてきた。
「見えてきたぞ!クライアントβだ!」
俺は声を張り上げた。
そして、三匹はなんとか施設に着いたのだった。




