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弱い死神に価値はありますか  作者: 神楽あまみ
36/53

5-1-2

 実習室に入ると小さな部屋になっており、そこで訓練用の服へと着替える。着替えると言っても鎌を振るだけだけれど、気持ちは引き締まった。

「シロ、あなたに実習は無理よ。終わるまで、ここで待っていなさい」

 黒銀が白銀のことを思いやって待つように言うと、白銀は首を振って拒否した。

「わたしも行くよ。こうなったのは、わたしの所為だもん」

「いいえ、あなたは待っているの。足手まといは要らない」

「あ……ぅ……い、……いや、わたしは嫌。わたしはクロちゃんと一緒にいたい。邪魔だったら無視しても構わないから、お願いだから一緒にいさせて」

 白銀の瞳が潤む。黒銀は顔では平静を保っていても、心の中は揺らいでいた。

「わたしも連れて行きたいの。でも、中には死鬼が放たれているのよ。とても危険なの」

 死鬼とは死神の敵だ。闇でできた靄のような物体で、それが何なのかを黒銀は知らない。授業では裏側の世界から来た生物で、死神の敵だとしか教わらない。実際に会った生徒はいないけれど、実習では何度も対峙していた。

 その死鬼が障害物としてはだかり、行く手を阻んでくる。もちろん本物ではないけれど、強さのレベルが変更できる方が厄介だといえた。レベル5で実戦レベルとされており、レベル9では三倍もの強さになる。魔法を自由に使える死神には障害物でしかないが、神力を温存しておきたい黒銀には面倒な相手だった。白銀を庇いながらではとても戦えない。

「いいじゃないの。わたしと杏子が守ってあげるわよ」

 沙希が気軽に余計なことを言ってくる。

 黒銀だって連れて行きたいのだ。離れたくない。しかし、飛ぶことしかできない白銀を連れて行くのは、沙希と杏子にも負担を掛けることになってしまう。

「沙希、わたしは勝ちたいの」

「だったら連れて行くべきだ。その方が黒銀も本気になるだろうからな」

「わたしはいつも本気よ」

「素直じゃないなぁ。足手まとい、結構じゃない。それが仲間ってもんだよ」

「でも……、でも……」

 黒銀が何か言い返そうと口籠もっていると、軽い電子音がそれを遮った。

「作戦開始時刻です。生徒は実習を開始して下さい」

 放送が作戦の開始を告げる。議論している時間は無くなってしまった。

「……行きましょう」

 白銀には出口へと向かう黒銀を見ていることしか出来なかった。付いて行きたいのに、どうしても身体が動いてくれない。

 怖かった。ここで拒絶されたらと思うと、無理に付いていくことが良いのか、いけないのかが分からない。

「何してるの。行くわよシロ」

 白銀は視界が明るくなったように感じた。雲間から光が覗き、白銀を照らし出す。

 そんな気がした。

「まったく、素直じゃないんだから」

「うん…」

 走っていく白銀を見詰めながら、沙希と杏子が微笑み合っていた。

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