そう、マゼルナキケン!
間に合わ……なかった。
すみませんでした。
※白音の能力の説明を追加しました。
数分後、パンパンになった大きな袋を持った白音が建物から出てくる。
「ただいま〜。誰か来た?」
「ああ、何組か来たけどみんな粘着済だ」
周2人の周りにはつっちーお手製の液体によってガチガチに固められた兵士達が数十人転がっている。
ちなみにつっちーがこの液体に絡まることは無い。
「で、そっちの収穫はあったか?」
「うん、これ。非常用の資金だったぽいのをまるごと貰ってきたよ」
そう言いながらつっちーに飛び乗った白音は自分の担いでいた袋を開ける。
「これは……金貨か?」
「多分ね」
その袋の中には金色にの光り輝く大量の貨幣らしきものが詰まっていた。
「この世界の換金率は知らないが相当な金額なのは間違いないだろうな。でかした」
「えへへー。もっと褒めて〜。あっ、あとこれ地図。さすがにこの世界全体の地図はなかったけどこの辺りの国の地図はあったよ」
「おお、それは良かった。これで当座はどうにかなりそうだな」
軽く頷き白音との会話を終える開人。
すると、白音は無造作に自分の来ているパーカーのポッケに金貨の入った袋と地図を押し込む。
明らかにポッケでは容量が足りないはずなのだふつうに入ってしまった。
実はこのパーカーのポッケは異空間に繋がっており1種のイベントリのようになっているのだ。
しかも容量無制限、時間経過なしのいたれ尽くせりだ。
やはりチートなパーカーである。
「よし、もうここは用無しだからさっさと出てくか」
「そうだね♪とりあえず近場の国にでも行く?」
「それがいいかも知れないな。よーし、つっちー城門から外に出るぞ」
開人の命を受け、テクテクテクテクと走っていく。
先程からつっちーに乗って派手に移動しているのだが誰にも邪魔される様子がない。
2人は知らなかったが実は城にいた兵士は既につっちーの液体で粘着されているか、または粘着している兵士をどうにか剥がそうとしているかで2人に構っている暇がないらしい。
だが、2人は忘れていた。
この城には兵士達以外の戦力がいた事に。
「お、もうすぐ城門だな」
「意外と近かったね」
「逆に近くないとなんかあった時すぐ駆けつけられないからな」
「それもそうか」
だがことはそんなに上手くいかない。
つっちーが城門まであと数メートルという所まで至った瞬間だった。
「ッ!カイト!」
「ああ、分かってる!止まれつっちー!」
突如虹色に輝くシャボン玉のような膜が城全体を囲いこんだ。と同時に城門が閉まり出す。
10秒程で完全に城門がしまりきった。
何とかその膜にぶつかる前に止まることが出来たつっちー。
だが急に止まったことでその八本の足で地面を大幅に削り取ってしまった。
「ふー、ギリギリ間に合ったな。よくやったつっちー」
ポンポンと、労うようにつっちーの背を軽く叩く開人。
「うーん、あの膜は見た感じ結界とかか?」
「結界か……こっちの世界のは初めて見るね」
白音と開人は言葉を切ると、つっちーから降りる。
「とりあえずつっちーは1回帰ってもらえるか?この結界をどうにかしないと進めないからな」
すると、器用に前足を使って了解、とポーズをとる。
「ありがとなつっちー。助かったよ」
「うん、ありがとね♪」
「ということでバイバイ」
すると出た時と同じよう開人の影が広がると、つっちーがその中に飲み込まれていく。
前足を振り振りしながら帰っていくつっちー。
全く可愛いやつである。
「まあ、とりあえずこれどうにかしようか……」
白音らが城門に向かって歩こうとすると、突如2人と、門を隔離するように明らかに先程の兵士達より豪華な鎧に身を包んだ騎士らしき集団が現れる。
そして、2人の方を向き武器を構える。
と、同時に何か神輿のようなものを担いだ男達が現れ騎士達の前で止まる。
そして、その上にはやはり派手な服に身を包んだ中年の男が座っていた。
「ついに見つけたぞ!お前ら!この儂を貶めてタダで帰れると思うなよ!」
対する開人と白音の回答は。
「あの人誰だっけ?」
「えーと……誰だっけ?」
「キングスマン18世だ!」
そう、2人の前に現れた中年の男は2人をこの世界に呼んだ張本人、キングスマン18世だった。
「あー、そんなやつもいたっけな?」
「いた気もするね〜」
2人の会話を聞き、馬鹿にされたと勘違いした王は顔を真っ赤にして怒り出す。
「我を馬鹿にしておるのかお前ら!まあ、そんな余裕で居られるのもいまの内…………」
「うーん、この結界は魔法?とやらによってできているのか?」
「なんとも言えないね。ボク達にとって未知の術
だからね」
王の話を無視し話し出す2人は、いつの間にやら2人は王や騎士の後ろ、つまり城門の方まで移動しており門をぺたぺたとさわっていた。
「なっ!?いつの間にそんなところに!?」
少人数ならまだしもここに居るのは50名を超える人間達だ。
さすがに、目の前で移動されたら気づくはずだが2人が話し出すまて誰もきづかなかったのだ。
驚かないわけが無い。
慌てて武器を構える騎士達。
「お前達、何をしたのだ!?答えよ!」
だが、相変わらず完璧に無視して話出す2人。
「まあ、何でできてるかはよく分からないけど普通に壊せそうだね」
「そうだな、今度は任せた」
「りょーっかい♪」
おどけて敬礼をしながらも何やら準備し出す白音。
そんな様子を見てやっと余裕が出来たのかまた、ご高説を始める王。
「フッ!笑わせてくれる!今この城に施された結界魔法は王家に伝わる魔法の中でもトップラスの防御力を発揮する!この結界はな外界からの攻撃を防ぎ、内側から外に逃げることも出来なくなる。過去にはドラゴンのプレスさえも防いでみせたのだ!つまり……」
1度ことばを切る王。
「お前らがここから出るのは不可能なのだ!この国を貰うだったか?そんな生意気な事が言えなくなるよういたぶりつくしてや…………」
そんは汚い王の声を突如凛とした白音の声が阻む。
「【異能】起動、纏血【鬼金棒】」
白音がそう言うと胸の辺りに直20センチ程の血でできた球が現れる。
白音はも無造作にその中に腕を、突っ込むと何かを引き摺りす。
それは全長1.5mほどの真紅の金棒だった。
「よいしょ!」
という軽い掛け声と共に身の丈ほどの金棒を、軽々と振り回す白音。
それだけで辺りには風が巻き起こる。
「そ、それは一体……」
「じゃあ、行っくよー!」
またしても王を無視し、金棒を腰に溜めるように構える白音。
すると、周りにいる人の耳にキーンという音が聞こえ出す。
白音の生み出した覇気が耳鳴りを発生させたのだ。
「必殺、鬼殺し!」
気合い一発、開人と白音以外には見えない速度で、金棒がスイングされ結界と門にぶつかる。
結界と門は全く堪える様子も見せずまるで薄紙のように破られ、あとかたもなく消え去った。
瞬間地上にとんでもない強さの風が吹いてくる。
「…………な、なんだこれは……」
王国陣営は皆固まってしまった。
「いやー上に向かって打ったからよかったけど真っ直ぐ打ってたらこの国無くなってたね」
「そうだな、もうちょい手加減しろよ」
「しょうがないじゃんもっと丈夫だと思ってたんだもん」
白音が放った一撃は結界を、破ったあと一直線に空へと飛んで行き雲を蹴散らし晴れぞらにしてしまった。
その余波だけで城のあちこちが壊れているのを見ればどれほどの威力だったから想像にに難くない。
白音の能力、【鮮血の女王は月夜に嗤う】は自身の゛血液゛を操る能力だ。そして、その発展系として過去に吸収した事のある対象を武器として使用することが出来る。
どれも対象の生前の能力が受け継がれており強大な力を保持している。
「お前達は一体何者…………」
「だから、さっき言ったでしょ」
呆れたようにが白音が言う。
「いずれこの国を貰い受ける者の名だもう一度だけ名乗るから今度こそ覚えとけよ」
背筋を延ばす2人。
「俺の名は黒星開人!」
「同じく赤羽根白音!」
そして、一呼吸おき、
「「そして、2人合わせて地球最強ギルド《マゼルナキケン》だ!!!!」」
と、息ぴったりに言い切った。
未だ固まって動けない王国陣営を尻目に壊れた城門から悠々と出て行く2人。
そして完全に城から出ると振り返って満面の笑みで言う。
「これでゲームは俺たちの勝ちだ。宣言通り1ヶ月後にまた来よう」
「精々つかの間の平和を楽しんでいてね」
そう言って指を鳴らすと黒と白の竜巻が2人のを覆い隠す。
しばらくして竜巻が消えると…………そこに2人の姿はなかった。