それ行けつっちー号!
投降遅れてすみませんm(_ _)m
やはりこのペースではきついので3の倍数日に投降させていただきます。
※開人の異能の説明を追加しました。
「いやー、最初からこうしとけばよかったかね……」
「そうだね〜」
城の屋根を走り抜け、時には違う屋根に乗り移りながら移動する。
簡単そうに聞こえるかもしれないが相当傾斜の大きい屋根での話である。
一般人なら確実に滑り落ちた後、ジ・エンドだ。
「ん、あそこが城門じゃない?」
「あー、そうっぽいな。じゃあ、脱出と行きますか」
しかし、開人がそう言った瞬間どこからか叫び声が聞こえる。
どうやら、巡回していた兵士にみつかってしまったらしい。
「ぞ、ぞ、ぞ、賊を発見!!現在………屋根屋根を走っています!!!城門を目指しているようであります!!!!至急応援を要請します!!!!!」
自分で言っておいて信じられないと言った様子だ。ビックリマーク多目だ。
「というわけでちょっと急ごう」
「ああ……ちょっと遅かったみたいだよ」
「だな。中々優秀な兵士が多いみたいだな」
まだ、兵士の伝令が入ってからたいして経っていなのにも関わらずどこからかかわらわらと兵士達が出てくる。
それに構わず屋根から飛び降りる開人と白音。
「ホッと!」
「ヤッと!」
謎の掛け声と共に屋根からジャンプし、器用にも空中で回転することで勢いを殺して着地する。まるで猫のようだ。
城門前の兵士達の数が凄まじいため、しょうがなくそこへの着地を諦め、2人は城門から100mほど離れた広場へと降りたった。
その広場もすぐに2人が来たことで兵士が詰めかけてくる。
「賊共今度こそ追い詰めたぞ!年貢の収め時だ!諦めて捕縛されろ!」
先程城内で出くわした兵士が投降勧告をしてくる。中々偉い立場でいたらしい。
「なーんかさっきも同じようなセリフ聞いたんだけど」
「そこの兵士さん?ボク達なんも悪いことしてないよ〜。みんなが襲ってくるから床と窓壊しただけだよ」
だが、2人に話しかけていた兵士は舐められたと勘違いしたらしい。
「ッ!嘘をつくな、この逆賊共!我々が成敗してくれる!」
その言葉を受け面倒くさそうな顔で開人が言う。
「はぁ。そちらさんの恨みをあんまり買いたくないからわざと戦わないようにしてたんだけどな………」
「そうも言ってられないよねまあ、。殺さなければそこまで恨まれることはないんじゃない?」
「まあ、それもそうか」
2人が悠々と話している間にいつの間にか兵士は100人を超え開人&白音包囲網が完成しつつあった。
先程の兵士が号令をかける。
「総員、攻撃開始!」
その言葉を皮切りに兵士達が2人に殺到する。
「あー、白音。今回俺やっちゃっていい?」
「いいよー。ボクの場合力加減難しいもんね〜」
白音からの了解を、貰った開人は行動を始める。
「じゃあ、いっきまーす。【異能】起動、【土蜘蛛】召令」
軽く呟くと開人を中心に半径4m程の黒いシミが地面を覆う。
「な、なんだこれ!?」
「うわ!?急に止まるな!」
開人の出した影を驚いて立ち止まってしまった兵士達に、あとから来た兵士達がぶつかってみんなまとめて転ぶという見るも悲惨な状況になってしまった。
そんな中突然、開人の生み出したシミから黒く不気味な何かが這い出てくる。
異様な光景にその場にいる開人と白音以外の人間が、みな一様にその動きを止める。
多くの人々に見守られ(?)ながら黒いシミより這い出てきた物体、それは巨大な蜘蛛だった。
しかし、おかしなことにその蜘蛛には肉がない。
つまり骨だけなのだ。しかも、真っ黒な。
その背中には既に開人と白音が乗っている。
「こっちでも問題なく能力も使えるらしいな」
「うん、大丈夫そうだね」
先程開人が生み出した蜘蛛。
これは開人の異能によって召喚された生物である。
開人の異能災厄の黒帝は骨と踊るは自身の骨を成長させ、防具や武器として使うことができる能力だ。
そして、その能力の延長として死体を吸収した生物を自身の下僕として使役することができる。
「な、なんなんだそれは!?新種のモンスターか!?」
「なーにいってんの。そのモンスターとやらは知らんがそんなちゃちなもんじゃないぜ」
「で、では一体……」
ここで開人は呆れたように言う。
「あのなあ、俺が敵に手の内晒すようなバカに見えるか?」
「うっ……」
苦虫をかみ潰したような顔をする兵士。
「まあ、いいや。さっさと終わらせよう。つっちー、やっちゃって」
まるでその声に答えるかのように前足を上げる骨の蜘蛛。
その場の兵士全員がネーミングセンスヤバいなこいつ、と思わず突っ込む中黒骨の蜘蛛、通称つっちーが動き出す。
口の部分の骨をカチカチ鳴らすつっちー。
何かを口内で生成しているらしい。
その様子に慌て始めるのは兵士達だ。
「お、おい!お前ら!今のうちにあいつらを仕留めるぞ!」
それは言外にこのままだとまずいと伝えていた。
先程から想定外のことばかり起こしているのを見ている兵士達は一も二もなくその声に従って、つっちー並びに開人&白音に襲いかかろうとする。行動が迅速で中々優秀である。
だが、
「あ、ちょい遅かったかな。もう出来ちゃった」
そう言うと同時につっちーの口(骨)から白い液体のようなものが大量に溢れ出てくる。
その液体は周りにいた兵士達を飲み込みその動きを止めた。
「な、なんなんだこれは!?か、体にくっ付いていて離れない!?」
広場のあちこちで真っ白になった兵士達が液体に絡め取られ身動きが取れないでいる。
「残念。それは粘着性を限界まで高めた糸で、ちょっとやそっとじゃ外れませーん。ということでしばらくここで待っててねー」
「それでは、つっちー号はっしーん!目的地は……あそこの兵舎っぽいところで!」
白音の言葉に従い動き始めるつっちー。
その巨大さに見合わない素早い動きをみせながら、兵士達が出てきた建物を目指す。
その間つっちーに揺られながら2人は話す。
「どうやら、王は俺たちを召喚したことを隠して賊として捕縛するよう命じたようだな」
「うん、そうみたいだね。何か隠したい事情でもあるのかな?」
「うーん、今の時点ではなんとも言えないが何か裏はありそうだな。気には止めておこう」
そんな会話をしているとつっちーが止まる。
どうやら、兵舎らしい建物にたどり着いたようだ。
「じゃあ、俺はここでつっちーと見張りやってるから中から役立ちそうな物を探してきてくれ」
「おっけー♪とりあえず金目の物と地図探してくるよ」
「任せた。あと、白音なら大丈夫だとは思うけどなんかあったらすぐに念話繋げろよ」
「了解!」
そう言うと開人はその場に留まり白音は兵舎と思わしき建物へ入っていったのだった。