やったる反乱!
※訂正済みです。
題名も変えさせて頂きました。
「はあ、もういいや。とりあえず言っとくよ」
痺れを切らした白音が自称・王に言う。
「当然ながらボクたちは死ぬつもりもあなた達に捕まる気も一切ない。しかし、ボクたちをこのまま逃がすと何か不利益が起きるというのも分からないでもない」
そこで1度言葉を切る。
「そこで提案なんだけど、君たちが十分な額の旅費を支払ってくれればボク達はこの国から出る。そのあとはお互い不干渉だ。どうかな、王様?」
白音が朗々と述べていく。
始めはポカンとしていた王は突然大声で笑い出した。
「フハハハハッ!提案だと?この状況でか?笑わせてくれる」
まあ、こちらもまさか受けいれてもらえるとは思ってないがな。
「それは、交渉決裂と受け取っていいのかな?」
「もちろんだとも!!」
この時王は気づいていなかった。俺らの口元に黒い笑みをうかんでいたことに。
「そうかい……じゃあ今から君たちは敵だ」
「フハハハハッ!言うに事欠いて敵とは。お前らに一体何ができるというのだ。いくら勇者といえどまだレベル1。おい、近衛兵!こいつらを痛め付けてや…………」
「「黙れ」」
軽く殺気を放ちながら俺と白音が同時に言う。
突然雰囲気の変わった2人に一瞬たじろぐ兵士たち。
「な、なんだ……」
「あれ?聞こえてなかったの?黙ってくれないかな?オ・ウ・サ・マ?」
挑発するように白音がいう。
何か言い返そうとするが少し殺気を強くすると黙ってしまう。
「さぁ、今までのおさらいだ」
開人は満面の笑みで言う。
「お前たちはそっちの都合で俺と白音を呼び出し魔王とやらを討伐させようとしていた。更には隷属の首輪?とやらを付けて強制的に従属させようとしていた。そして、俺らが勇者じゃないと知るや否や俺らを殺そうとしていると」
「うんうん」
白音が合わせる。
「そして、ここまでの仕打ちを受けながらも心優しい白音が提示した最後の交渉まで蹴ったと。OK?」
「OK!」
「つまり―――――今俺たちが何をしても責められる謂れはないということだ」
「そーだ、そーだ!」
理路整然と話をしていく開人たちの様子に、得体の知れない恐怖を覚えた王は再び命令を下す。
「ええい、何をしている兵士共!さっさとその狼藉者達を捕らえよ!」
狼藉も何もこっちは何もしてないのにとは思うモノの口には出さない2人だった。
「まあまあ、焦るな王よ。1つゲームと洒落こもうじゃないか」
白音が語る。
「げ、ゲームだと!?」
「そう、ルールは簡単。俺たちは今からこの建物から脱走する予定だ。そこで、俺達がこの建物から逃げ切る前にあなた達が俺たちを捕まえたらそちらのお好きなようにしてもらって構わない。しかし、もし捕まえられなかったら…………」
「たら?」
王は聞く。
ここで開人は冷たく微笑んだ。
「――――1ヶ月以内にこの国を貰い受ける」
「な、なに!?」
普通ならここで一笑に付すはずなのだが、あまりの事態に王国陣営は動揺しまくっており、開人の言葉に慌てふためいてしまう。
「そ、そんなことが出来るわけなかろう!?」
「さあ?どうかな。じゃあ早速だが、始めるぞ」
ちっとも話を止めようとしない開人の発言に焦る王。
「ええい、もういい!魔法使いども!あいつらを消せ!」
「は、はい!第一部隊、ファイアボール準備!」
マリアーナとやらが叫ぶ。
と、同時に魔法使いたちがブツブツと呪文のような物を唱え出す。その間およそ30秒ほど。
そんなにかけてて戦力として使えんのと思う2人であったが手は出さない。
すると、直径30cm程の炎の球が10個ほど現れた。
どうやら、1人につき1つの炎の球をつくっているらしい。
「王城で炎使うとか頭大丈夫なのか?こいつら」
「まあまあ、こいつらはその程度だってことだよ」
明らかに挑発している2人に魔法使い達は怒りを露わにする
。
「そんな余裕でいられるのも今のうちですわ!総員、発射!」
号令と共に10数個の炎の球が2人に向かって放たれる。
「やれやれ。やるか白音」
「そうだね。カイト」
迫り来る業火前に慌てる素振りを見せない2人はおもむろに指をならす。
瞬間2人を黒と白の竜巻がそれぞれ開人と白音を覆い隠す。
その竜巻に容赦なく炎球が衝突するが、当たった魔法は全てかき消されたように消え、霧散する。
「な、なんですとー!?ま、魔法が消えた!?」
マリアーナ嬢がまた乙女らしからぬ奇声を発しているが気にしない。
竜巻が発生してから5秒ほどたっただろうか。
おもむろに竜巻はその回転を緩め霧散する。
すると、中から装いの変わった2人が無傷で現れる。
「な、何が起こったんだ!?」
中から出てきたのは服装の変わった2人だった。
まず、開人は今までの学ランがジーンズの長ズボンと半袖のロゴTシャツ、そして、腰に真っ黒なパーカーを結んだ姿となった。
そして、白音。
今まで着ていたセーラー服が消え、代わりにスカートとこちらもまたロゴTシャツ、そして、真っ白なパーカーを着ている。
「そ、そんなものどこに隠しておった!?」
「さあ、どこでしょ〜か♪」
「ぬ〜、舐めおって!」
「残念ながらこれで終わりじゃないんだな」
「な!」
おそらくなんだと!なにー!?とか言いたかったのだろうが開人の行動に邪魔される。
「【異能】起動!【骨闘品:黒手】!」
そう唱える開人。
すると、その右肩から1mはありそうな巨大な黒い骨腕が生えてきた。
おどろおどろしいその様相にヒッ、と息を飲む王国陣営。
そして、白音が続く。
「【異能】起動♪【血魔装:大剣】!」
すると、突然白音の右手首から鮮血が吹き出した。
そのグロテスクな様相に顔を青くする王国陣営だったが次の瞬間思わずその顔をポカンと口を開くことになるの。
なんと溢れだした血液が、次第に白音の背丈ほどあろうかという巨大な大剣へと形作り出す。
「お、お前達は一体何者なのだ!?」
何とか正気を保とうとしている王は問う。
「そういえばまだ自己紹介すらさせてもらってなかったな。まあいい。やるか、あれ」
「そうだね。やろうか、あれ」
2人はひとつ頷くとききを吸い込む。そして、
「我こそはがしゃどくろの末裔にして異能の使い手、黒星開人である!最近の趣味は映画観賞と観光だ!」
「同じく我が名は赤羽根白音!吸血鬼族の血を引く、異能の使い手だ!ちなみに趣味は本屋巡りと観光だよ♪」
そこで、示しあわせたようにニヤーと嗤いながら、開人は拳を構え、白音は大剣を肩に乗せる。
「では……」「じゃあ……」
後日談だがその時その場にいた者達曰く、この時今世紀最大のイヤーな予感がしたそうだ。
「「楽しい楽しいショータイムの始まりだ!!!!」」
そういうと、開人はその拳を、白音は持っていた大剣を振り上げ――――――――――床に思いっきり打ち付けた。
瞬間、とんでもない量の土煙が視界を埋めつくしたのだった。