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七:そのスパイ、焦る。


 現役の勇者の登壇にクラスメイトは大きな拍手を送った。

 するとガラン先生がゴホンと咳払いをし、生徒の注目を集めた。


「まぁ、説明は不要だとは思うが……こういうのは一応、な? みんなも知っての通り、フェルブランド先生は、あのレスドニア家の才女。若くして閃光の勇者となった超が付くほどの有名人だ」


 ……そんな超有名人がどうして、この非正規クラスの副担任になったんだ。


 言いたいことも聞きたいことも山ほどあるが、とりあえず俺は机にうつ伏せになった。

 大魔法<変身/メタモルフォーゼ>で顔を変えているが、あまりマジマジと見られると気付かれるかもしれない。

 そもそもツァドラスはかなり勘の鋭い奴だった。彼女の子孫であるフェルもその気質を引き継いでいる可能性は十二分にある。


「それじゃ、前列右端から一人ずつ簡単に自己紹介をしてってくれー。次の授業もあるから、今回は名前と軽い一言だけでいいぞー」


 ガラン先生がそう言って、手を打つとクラスメイトはそれぞれ自分の名を名乗っていった。


(……おいおいマジか)


 さすがにそれはマズい。

 顔をばっちり見られることもマズいが、何よりこの名前がマズい。


(……あのポンコツ魔王め。何故に潜入時の名前を『オウル』にしやがった……っ)


 いくつもの恨み言が脳内に湧いては消えを繰り返す。

 そして――ついに俺の番になった。

 このままずっと机に突っ伏しているわけにもいかない。


 俺は仕方なく立ち上がり、決してフェルと目を合わせないように自己紹介をした。


「……オウル=ハイドリッツです。よろしくお願いします」


 目線は斜め下に固定し、可能な限り声も低くした。

 涙ぐましい些細な抵抗だが……やらないよりはマシだと思った。

 そうして最低限の自己紹介を終えた俺が、そそくさと着席すると。


「オウル……くん? あなた……どこかで?」


 やはりというか何というか……フェルがストップをかけた。


(そういえば、あの人の名前もオウル……だったわよね? ……よく見れば、どこか面影があるような気も……?)


 彼女は訝しがるようにジッとこちらを見ていた。


「おや? 先生、どうかしましたか?」


 すると俺たちの微妙なやり取りに違和感を覚えたガラン先生が、素晴らしいタイミングで口を挟んでくれた。


 まさに渡りに船――これで話は流れてくれるだろう。


「あぁ、いえ、すみません。知人と同じ名前の生徒だったので、ちょっと驚いてしまいました」


「あー、そうでしたか。どうです、確認してみては?」


 ……おい、その展開はおかしいだろう。


 ガラン先生に対してぶつけようのない怒りを燃え上がらせていると、フェルが再び同じような質問を投げ掛けてきた。


「あなた……あのオウルじゃないわよね?」


「……ど、どちらのオウルさんのことでしょうか?」


 フェルの鋭い視線が体中に突き刺さる。

 十秒か二十秒か……長い沈黙の間、俺は決してフェルと目を合わせることはしなかった。

 すると、


「そう……変なこと聞いて、ごめんなさいね」


 根負けしたのか、フェルが謝ってきた。


「い、いえ、気にしないでください」


 口ではそう言ったものの、どうやら疑いは全く晴れていないようだった。

 その後、他の生徒が自己紹介をしているときも、フェルはジーッとこちらを注視しており、何とも居辛い時間が流れたのだった。

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