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とりあえず、落着?

 三者が叫んだ後、もっとも早く行動したのはアドリアーナ女史だ。


「リートン教授! お下がりください!」


 前に出て、右手を掲げる。すべての指の一本ごとに小さな石の装飾が施された指輪がはめられており、そのうち薬指の指輪が光る。

 謎の空間での大立回りで疲労していたエヌマは咄嗟に動けず、「よせ!」というリートン教授の制止は少し遅かった。

 光から、金属の鎖が勢いよくエヌマへ放たれる。


「っ!?」


 動けないエヌマの体に、まるで意思があるかのように鎖は巻きつき、縛り上げる。


「ぐっ、ぐがあああああ!」


 エヌマは苦悶の表情、面倒ごとを起こしやがってと憤慨していたリートン教授としては「これもありか」という呟きの通りそこまで危機感は持っていなかったが、アレでも自分が雇った女中なので一応アドリアーナ女史に言っておく。


「おいアドリアーナ女史、アレは私が仕方なく雇った女中だ。その位にしておいてくれないか?」

「え、そうなのですか!?」


 驚く女史。当然だろう。

 しかし、女嫌いのリートン教授が庇うのだから嘘ではないだろう。そう考えて、アドリアーナ女史は鎖の力を弱めて拘束を解いた。

 

「がはっ」


 膝をついて荒い息を整えようとするエヌマ。鎖は淡い光を放って消えていく。

 恨めしそうにエヌマは二人の方を向いた。


「おいてめぇ! いきなりなにすんだ!」

「そ、それはこちらの台詞です!」

「んだとぉ!?」


 エヌマは吠える。

 彼女から見れば、会っていきなり攻撃されたのだからそう言うのも当然だろうが、リートン教授が溜め息混じりに割って入る。


「おい、お前はここで何をしてるんだ?それに気づいていないようだが、エドゲンが下にいるぞ?」

「あ?・・・・・・どわぁ!?」


 怪訝な顔で下を向いたら、なんと気絶つしていたハズの初老の男性アウグストゥス教授が、やらしい顔でエヌマの女中服を覗き見ていた。


「げへへへ、なかなかの絶景じゃわい」

「黙れ変態!」

「げばっ!」


 顔面を蹴って黙らせる。

 アウグストゥス教授から離れたエヌマは顔を真っ赤にさせて、猫のようにフーフー言って警戒。

 その様子を見てリートン教授は一言。


「やれやれ」



「いやぁ、スマンかったなお嬢さん! なかなかの別嬪さんなもので、ついな!」


 悪びれずない笑顔で豪快に笑いながら、アウグストゥス教授は蹴られた顔を擦っている。

 隣に座るリートン教授は溜め息を漏らし、対面に座るエヌマはまだ警戒中、彼女の隣で茶を淹れるアドリアーナ女史は無言を貫いた。


「ところで、どうして君はワシの研究室に? もしや惚れたか?」

「なわけねぇだろ、あんたが一番偉そうって聞いたから殴り込みに着たんだよ」

 

 さらりと、エヌマは危ないことを言っている。隣のアドリアーナ女史は、本当にこの人は女中なのですか?と目でリートン教授に訴える。

 リートン教授は我関せずを貫いて口を閉じたまま。

 アウグストゥス教授はふむ?と怪訝な顔をした。


「ほう、偉そうとな。もしやそれはエロそう、の聞き間違い、ということはないかな?」

「聞き間違い?」

「そうだ。ワシは自分で言うのもなんだが気さくじゃ、女性の気を引くためにな。偉そうな男というのは同性も近づきたくないほど不快じゃないかな?」


 エヌマは少し考える。というのも、話していて確かにこの人物から偉そうな気配はしない、実際笑顔のよく似合う初老の男性にしか見てない。


「そういや、殴り飛ばしてすぐに聞いたから、口が上手く動かなかったのか?」

「ふん、ただお前の耳が悪いだけだ耳長族。それと頭が悪かっただけだ」

「何を!?」


 リートン教授はほくそ笑み、薬指の指輪が光った。


『アウグレストゥ教授だ、その人が一番エロそうで・・・・』


 光から声がした。聞き覚えのある、そうだあの男子学生の。


「お前を一人にするのはいささか不安でな。小型の使い魔を忍ばせてある」

「うぇ!?」

「はっ、お前じゃ見つからんさ。それに安心しろ、もう外してある」


 リートン教授は慌てて体を触るエヌマの反応に満足するが、隣と対面の二人は目を丸くしていた。


「ベネディクト、お前はついに女嫌いを克服したのか?」

「リートン教授、まさかこの人のことを」


 リートン教授は不機嫌に即答した。


「違う!」



 二人は帰路についていた。

 しつこい二人の質問攻めに辟易したリートン教授はやや疲れた顔をしている。

 結局、あの二人はエヌマが何故アウグストゥス教授の研究室にいたのか、どうしてエヌマを雇ったかなど聞いてこなかった。どういう関係なのか、女嫌いが治ったのかしか聞いてこない。


「もう少し聞くことがあったろう」


 ボソッと呟いた。

 幸い、前を歩くエヌマには聞こえていない。だが呑気な様子の後ろ姿が気に入らず、リートン教授は嫌がらせの意味も込めて訊ねる。


「どうだ? 密売に関わっていた教授はあたか?」

「何で知って、ってそうか。使い魔か」

「それでどうなんだ?」

「けっ、いたのは変態だったぞ」

「ふはは、変態か! あいつが喜ぶな」

「何だそれ本当に変態じゃねーか」

「・・・・・出過ぎたことだったぞ」

「・・・・・わーってるよ」


 拗ねて、唇を尖らせるエヌマ。

 彼女としても自分の落ち度と浅はかさはわきまえているので、言い返せない。


「もう少し慎みが必要だな」

「うるせ」

「そこでだ」

「うん?」


 エヌマは振り返る。

 リートン教授はニヤニヤと意地悪く笑っていた。何か、嫌な予感を彼女は感じずにはいられない。




「ふぅ、やれやれですね」


 その人物は安堵する。

 どうやら気づかれなかったようだ、咄嗟のことだから今になって肝を冷やしたが。


「とりあえずしばらくは安全、と見ていいかな」


 笑う。

 人物は背を向けて、大学の方へ戻っていった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

とりあえず第一部的なものは終わった感じですが、正直説明不足な点もあるので改稿する可能性もありますので注意してください。

それでは、次回で!

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