4話 相手を間違えた
今回は短め
期末考査を来週に控えているはずの大学構内でも、リートン教授とエヌマの噂で騒がしかった。
授業中、教室の最後尾の席に座って退屈そうなエヌマは外野の学生たちにとって注目の的だ。あまりに視線が集まり過ぎて授業にならないため、リートン教授は自身の研究室で大人しくするよう命令した。
「はっ、自分の授業が大したことないからそうなるのよ」
「ふん、お前も授業をやってみれば大変さがわかるだろう」
そんな捨て台詞を吐いてリートン教授は次の授業に向かう。
もうここは大学内であるから護衛の心配はないとのこと。
「ふぁぁ」
屋敷の書斎に似た研究室は退屈で、椅子に座って退屈と戦うエヌマは欠伸をする。
「そういや、大学の教授が密売の片棒担いでるとか言ってたな」
朝の酒場でのことを思い出した。
「あの野郎の鼻を空かすのも悪くないな」
ニヤリ、と笑う。
椅子から離れて、小走りで扉まで行った。
「ん?」
扉を開けようとして、止めた。
誰かの視線を感じたのだ。振り返り、研究室を見渡すが何もない。
「ん~?」
頭を掻いて怪訝な顔をするが、特に何もない様子なので、腑に落ちないが外に出る。
その瞬間、エヌマはその場から飛び去った。
着慣れなず、彼女には動き難い女中の服のせいか、いつもより反応が遅れて肩に何かがぶつかる。
「ぐっ」
廊下の壁に背中を預け、飛んできた何かを見る。
そこら辺に転がっている石ころだったが、肩に走る痛みにしては不釣り合いだ。
「誰だ!?」
即座に周囲を確認、すると離れた場所に複数の学生が下品な笑みを浮かべてこちらを見ている。
「おぉー、女中さん! 元気? もしかして怪我してる?もしよければ、俺たちがお世話しちゃうよ?」
先頭にいる体格の大きな男子学生が軽薄に笑った。釣られて、後ろの連中もゲスな笑い声を上げる。
「・・・・んだ、てめぇら?」
恐らく石を投げたのは連中だと直感する。理由は良くわからないが、連中はリートン教授ではなく自分を狙っているらしい。
吐き気がした。
弁明もする気はなさそうである。弁明しても許さないが。
なので、彼らの方へエヌマは走った。
「へ?」
先頭の学生が間抜けな声を出した直後、エヌマの膝が顔面に刺さった。飛び膝蹴りだ、その着地後、左の掌打で豪快に殴り倒した。
「なっ!?」
「ひぃ!?」
いきなりリーダー格があっさりやられて、学生連中は反撃しようという発想は なく、恐怖で顔が真っ青になる。
更にエヌマは近くにいた、逃げ遅れた男子学生の顔面に左右の掌打を叩き込む。
張り倒された学生の鼻から鼻血が飛び散り、それを見た彼らは恐慌状態に陥って、我先に逃げ出した。
「はぁー」
エヌマは退屈そうに溜め息を吐く。
もう少し耐えると思ったが意外とあっけない。
常日頃、命の危険に晒されてきた彼女にとってこの程度大したことはなかった。
「ん、そうだ」
何かを思い付いたのか、エヌマは倒したばかりのリーダー格の男の髪を掴んで引き起こし、頬を張って覚醒させる。
「はぁっ! え、俺どうな・・・・ぎゃわぁ!?」
目の前のエヌマの顔を見て恐怖で奇声を上げる。
もう一発殴ろうと思ったが、それでは聞きたいことも聞けないのでであえてなにもしない。
「うるさい。おい、質問に答えろ」
「ぇぇえ!?」
「殴ろうか?」
「こ、こここ答えます答えます! 何でも答えます!」
「よし」
満足そうに頷いたエヌマ。それなら、彼女は自分の聞きたいことを洗いざらい喋らせた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!今回は前書きの通り短めですが、理由は少しバトル要素があるためです。作者はバトル描写苦手なんですよね(泣)
さて、今回はここまで。次も会えるよう頑張ります!