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一触即発・・・・した

「あぁ? てめぇはあのときの。何か用か?」

「こんにちはエヌマさん」


 警戒心全開なエヌマとは対照的に、アドリアーナ女史は穏やかな笑顔を向ける。

 先日二人は会った仲だが、それほど良い出会いではなかった。

 あまり思い出したくないのか、エヌマは「ふんっ」と鼻を鳴らして前を向き、残っている魚料理に手をつける。

 アドリアーナ女史は周囲の男たちから視線を集めていたが、本人は意に介している様子はなく、ゆっくりエヌマの隣へと腰を下ろす。


「何で隣に?」

「空いていたもので」

「他にあったろ?」

「ここならあなたと話ができます」


 私と? と怪訝な顔をしながら魚の頭を丸飲みして派手な音を出して咀嚼するエヌマ。

 アドリアーナ女史はカウンターの店主にミルクと適当なつまみを注文した。


「気に入ったよ。酒を頼まない客は珍しい」


 と店主は苦笑した。

 相変わらず不機嫌そうなエヌマは火酒に口をつける。

 アドリアーナ女史はそんな彼女に話をする。


「お酒、お強いんですね」

「あ? 別に普通だろ」

「ご謙遜を」


 エヌマは舌打ちした。

 真意が読めない。

 アドリアーナ女史は新進気鋭の魔法大学教授。自分に会う理由なぞないはずだ。


「私は、リートン教授を愛してるんです」

「ほーん・・・・・・ぶっ!?」


 興味なさそうだったエヌマだが、言葉を改めて考え、酒を噴き出した。


「・・・・・・汚い」


 少し酒に濡れた店主は疲れた顔で呟くが、今のエヌマにはどうでも良い。

 目をこれでもかと開いて、驚愕。

 何故? どうして? 正気か? お前イカれてるぞ?

 と口に出したかったが、驚きのあまり喉から言葉が出てこない。

 

「やはり驚かれますか」


 失礼な耳長族の反応は予想通りだったのか、特に気にするようすはなく、運ばれたミルクとソーセージのつまみに喜ぶ。


「美味しそうです」

「お前、それわざとやってるならユーモアあるぞ」

「はぁ、そうなのですか?」


 アドリアーナ女史は優雅に首を傾げる。知らぬがなんとやらだ。

 ミルクの容器を大事そうに持つと、エヌマの方に向ける。

 

「何だよ?」

「乾杯しませんか? 再会を祝して」

「悪いが、酒でしか乾杯しない主義だ」

「まぁ、それは残念です」


 肩を落として、アドリアーナ女史はミルクを飲む。


「んで? さっきのは本当なのか?」

「はい?」

「だから、あのクソ野郎がどーとかってやつ!」

「はい、もちろん」


 アドリアーナ女史は幸せそうに頬を赤くして、ミルクを置いた。冗談を言う顔ではない。

 しかし、エヌマは胡散臭そうである。

 指を三本立てて見せた。


「私が信用しない女の種類は三つ、男に媚びる女、スラムにいる娼婦、そして女に誰々を愛してるとか平気で言える女だ。どういう意味かわかるか?」

「さあ?」

「サヨナラってことだマヌケ」


 エヌマは残りの火酒を一気に飲み干して、席を立った。金は先に払ってるから呼び止められることもない。

 隣の客を除いて。


「待ってくださいっ」


 穏やかさから一転、強い語気で呼び止める。

 エヌマは止まり、ニヤニヤした表情で振り返った。


「何だよ?」


 アドリアーナ女史は表情を強張らせている。


「私は、あなたが気に入りません! リートン教授をタブらかす不埒者ではないのですか?」

「へー、私があのクソ野郎を?」


 少し茶化すような表情。

 やっと正直になったなと言わんばかりに、エヌマはニヤケている。

 そういう態度はアドリアーナ女史の琴線にやや触れるらしく、指先を突きつけ、このような宣言をさせる要因にもなった。


「ですから、あなたを実力で排除させていただきます!」

最後まで読んでいただきありがとうございます!

日が空いて申し訳ありません(汗 リアルがなかなか忙しいものでして、お話を考える暇も余裕もなくて。でもなんとか出せたのは僕自身嬉しい限りです!

ではでは、また次回お会いできるなら頑張ります!

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