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イージスの皿は砕けない! ~龍に勝つ方法? 飯を喰らって食事強化《バフ》ればいい~  作者: タック
二章 同じ皿の飯を食う冒険者ギルド、アルゴナウタイ設立

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幕間 皿とオトナのハロウィン

 あらすじ

 皿のジスと魔女ヴェールが出会って、冒険者ギルドを作り、森で猪とかライオンとか軍神を撃退したのであった。

 時間軸はいったん戻る。

 それは“カリュドーンの猪狩り”作戦前のことだ。


 “いつもの”ギルド、一階酒場。

 ──いや、だが状況的にはあまり“いつもの”とはいえない。

 アルコールの臭いがいつも以上に漂っていて、全員のテンションがやたらと高い。


 そして知能指数は低い。


「ポセイドン印のペルセウス因縁酒──略してドン・ペルの蜜酒頂きましたぁ!!」


「ウェーイ!! ウェーイ!!」


「ステキな女には! ステキな冒険者には! ステキなお酒がよく似合うぅ~ッ!」


 半裸というか、裸エプロンでやたら筋肉を見せている冒険者の野郎共が練り歩き、それを女性客がキャイキャイと楽しんでいる。

 どんちゃん騒ぎというやつだ。


 一方で、綺麗な魔女風ドレスを着たヴェールが仁王立ちしながら、ぼろきれのようになった女性客を見下している。

 困り顔の裸エプロンなエリク。


 どうしてこうなった……。


 そう、あれは確か数日前にヴェールが提案してきて──。



* * * * * * * *




「ねぇ、ジス。今度って子供達にお休みをあげるじゃない?」


『ああ、うん。それで花形のクリュ達看板娘がいなくなるし、どうせだから酒場は休みにしちゃってもいいかなと考えていたところだ』


 閉店後の静かな酒場。

 テーブルの上に載っている皿の私──ジスと、椅子に座っているヴェールの会話。


「どうせだから、冒険者のみんなに手伝ってもらって、逆に! 逆に特別な感じにしない!?」


 ヴェールが何やら興奮気味に話している。

 嫌な予感しかしない。


『うちの冒険者、筋肉ムキムキ、偉丈夫、豪傑。つまりはむくつけき野郎ばかりだぞ……?』


 顔は良いのもいたりするのだが、大体は戦うための筋肉を付けている。

 そのため看板娘のような普通の客寄せは難しい。


「とある地域にはハロウィンというお祭りがあってね。いつもと違う服装でオモテナシする、マンネリ解消法があるのよ」


『ほぉ。マンネリ解消は金稼ぎにピッタリだな。詳しく聞かせてもらおう』


 うちの酒場は繁盛しているものの、客層が固定化されてきている気もする。

 新規開拓が見込めればウッハウハのガッポガポである。


「くくく……」


 なんかヴェールが怪しいニヤニヤを。


「実はね、もう衣装は用意してあるのよ! あの道具屋に押しつけられたというか!」


『じゃあ、冒険者達の野郎共にそれを着せて営業するか。それで……どんな衣装なんだ?』


 ヴェールが掲げたのは、白い布。


「じゃじゃーん! エプロン!」


『……エプロン? そんなもの、普段から見慣れていて面白みも何にも……』


「それは百も承知! まず服を脱ぎます!」


『うん』


「そして裸にエプロン! 裸エプロンなのよ!」


『……うん?』


 野郎に裸エプロンとか何言ってんだコイツ、と思ったが、男女ともにいける私はオールオッケーだ。

 とりあえず納得した。

 ハロウィンという行事はすごい。すごいぞ……!


『で、女性の格好は?』


「え……。そ、それは……」


 男性が裸エプロンなら、女性はそれ相応の格好だろう。

 (さいわ)い、子供達もいないのでR18な格好でもオールオッケーである。


「あ、あたしは……丁度、魔女風ドレスを格安で道具屋から譲ってもらっていて……。つ、ついでにエリクさんの吸血鬼風王子服もあったりなんかしちゃったりして……」


 何となく魂胆が見えてきた。




* * * * * * * *




 うちの店で働くのは、ほぼ男性だ。数少ない花形の看板娘も、お休みでどこかに出かけている。

 つまり……ヘルプの冒険者による漢祭り──もといハロウィンが始まったのである。


 幼女であるクリュに癒やされたい男性常連客は、何も知らずに酒場に足を踏み入れてしまった。


「ッッッ!! いらっしゃいませッッッ!!!!」


「ッシャーセェーッッ!!!」


「独り身様ァ!! 連行だルァ!!!」


 不幸な男性客への洗礼。

 まずは野太い漢達の怒声。


「ひっ!?」


 クリュ目当ての男常連客は回れ右、ダッシュ!

 それを、裸エプロンをヒラリひるがえしながら、肌色成分多めの冒険者の漢達が捕縛しに行く。

 日々鍛錬の成果であるぶっとい腕のチョークスリーパーを頸動脈にキメながら、店内へと引きずり込んでいく。

 さながら布一枚着た原始人の狩りである。


『……ダメじゃないか、これ?』


 私は定位置のテーブルでため息を吐いて、一皿を速攻で平らげて逃げ出していく客を見ていた。

 ちなみに今の私は蜘蛛の巣状の紙模様を貼り付けられていて、擬似的に割れているように見えるヒビ皿ハロウィンバージョンだ。


「え? あ、ああ、うん」


 仕掛け人であるヴェールはというと、普段の野暮ったい紫ローブではなかった。

 ハロウィン仕様の魔女風ドレスを着て、厨房をチラチラ覗き見ていた。

 たぶん、裸エプロン装備のエリクをご堪能しているのだろう。


 本当はエリクに王子様っぽい服を着せたかったらしいが、『皆さんが着るなら僕も』とお揃いの格好を選んだのだ。

 私としては、油はねなどが心配である。


「いや~。あの冒険者達と同じ服、同じ生き物に見えないわよね~。エリクさん。鼻血出そう」


『イケメンとそれ以外の裸エプロンでは人権が──って、違う。どうするんだこの惨状。明日から常連が全滅して、大事な収入源が潰れるぞ』


「あー? そっちね、そっち。うん」


 どうやら本当に上の空だったようだ。

 自分だけがドレスを着ているから余裕綽々らしい。

 コイツにも裸エプロンを着せれば、少しは男性客が戻ってくるだろうか?

 外見的には美少女と呼べるし。まぁ……中身がクズだが。


「そもそも、アレなのよ、アレ」


『アレ?』


「狙っている客層が違うのよ。誰がむさ苦しい男の裸を、男が好き好んで見に行くっていうのよ?」


『た、確かに……』


 いや、そもそも最初に言えよ。


「というわけで、狙う客層を変えるわよ!」




* * * * * * * *




 そのヴェールの言葉から数十分後。


 店内からは黄色い歓声が飛び交っていた。

 どこから持ってきたのかわからない、謎のミラーボール。

 光に照らされる客──女性達。


 町娘……とはいえないお年を召している方々も……。

 うん、どう見ても天に召されてしまう直前のお婆様方もいらっしゃる。

 とにかく老いも若きも大ハッスルである。


「またドンペル入りましたぁーッッッッ!!!」


「女の子はみんなお姫様ウェーイ!!」


 年齢三桁に届きそうなソレを女の子だと呼ぶのなら、お前ら青年冒険者は胎児とすら呼べないぞ。


「ふふ、どうジス? 世の中には筋肉フェチ女というのは多いのよ?」


『いや、なんというか……まさかここまで需要があったとはな……』


 私もわからないわけではないが……何か見慣れている気がして、バッキバキに鍛え上げられたギリシャ彫刻か、執事長のフィロタスくらいじゃないと満足ができない。

 ……そのフィロタスはというと。


「ご、ご婦人方、落ち着いてくだされ!」


「いいじゃないの、触っても減るもんじゃないしぃ!!」


「じ、ジス殿助け──」


 筋肉を求めて集まった女性達。

 最高の筋肉を持つロマンスグレーの紳士、裸エプロンバージョン。

 つまり大人気である。


 フィロタスのいるテーブルが、女性達に踏み付けられてぶっ壊れる勢いだ。


『成仏してくれ……。死後、星座にしてやるから』


 そんなギリシャ神話ジョークで、女体に埋まっていくフィロタスを見送る。敬礼。


 執事と言えば、“いつも胡散臭いイケメン”がキャッチコピーのブリリアントも裸エプロンなのだが。


「あ、あの! お付き合いしている女性とかっているんですか!?」


「いえいえ、わたくしなど……。世の女性の方々は誰しも眩しすぎて、その美しい宝石の瞳と視線を交わすのすら気が引けてしまいます」


 そう言いながら、ブリリアントは涼しげな流し目を見せていた。

 ミステリアスな黒髪長身イケメンが着れば、裸エプロンでも燕尾服と変わらないようだ。

 こちらも人気だが、女性の誰もが指一本触れるのすらためらっていた。


 一歩下がって観察しながら頬を染めて、その一言一句に卒倒しそうになる。

 そういう楽しみ方なのだろう。


「料理より、お酒の方が出て行くので見に来たのですが……大繁盛ですね」


『お、エリクお疲れ~』


 厨房から様子を見に来たエリクだ。

 さすがに、いつもの酒場と違いすぎて苦笑している。


『まさかこんな状況になるとはな……ヴェール。お前はこうなるとわかってやったのか──って、あれ?』


 いつの間にか、近くにいたヴェールがいなくなっていた。

 ヴェールを探せ! と周囲を見回すと、アイツだけ魔女風ドレスを着ているので一瞬でわかった。

 柱の陰からこちらの様子をうかがっている。


 ……もしかして、コイツも一歩下がって観察しているのだろうか。エリクの裸エプロンを。

 乙女心というのは、私にはあまり理解できないものだな。

 突然ショタからキスでもされたらドキドキとしてしまうかもしれないが。


 ──と、そこへイケメン王子様フェイスのエリクを発見した、客らしき女性三人組が近寄ってきた。

 肉のスライム……もとい、ふくよかなご婦人方だ。


「あんらぁ~、良い男じゃな~い? こんなところで働いてないで、私の家にこない? ペットにして可愛がってあげるわよ~」


「ぐふふ、お姉様ずるい。私達三つ子なんだから、3人で分け合いましょうよぅ」


「そうよ、そうよ!」


 如何にも成金といった貴金属まみれの格好だ。

 エリクはこういうことは慣れていないのか、困り顔で笑っていた。

 たぶんブリリアント辺りだと上手くあしらいそうなのだが。


「ねぇ、私達は王家の末席でもあるのよ? ほら、庶民にとっては、私達に誘われるなんて光栄なことじゃない?」


「ブフゥ、食べちゃいたいくらい可愛い顔。……あら、でも、どこかで見た事あるような……。思い出せないけど面影が……?」


「えーい、たーっち!」


 このご婦人方、フリーダムすぎる。

 エリクを自分勝手に値踏みした後、ベタベタと触り始めた。

 うぅむ、どうするか。迷惑な客は殺すか。

 だが、店内でというのも掃除が大変だ。

 ラップを出口と繋いで、パチンコの原理で撃ち出してトマト投げ祭りにするか?


「あの~、お客様。ちょっとこちらへ」


 いつの間にか近付いてきたヴェール。

 ご婦人方の肩に手を乗せていた。

 その表情は、三角帽子を深く被っていて見えない。


「あら、何かしら?」


「こちらへ、こちらへ。ええ、こちらへ、こちらへ、こちらへ……」


 抑揚のない言葉が繰り返され、遠ざかっていく。

 そのままトイレに入っていった4人。


 ──五分後。


 血まみれの肉団子三体を引きずりながら、我らが魔女が凱旋した。

 こちらに向かって良い笑顔で、


「ついやっちゃった!」


 顔面に飛び散っていた血をグイッと拭う。


 同じようなことは考えていたが、さすがにどん引きである。

 ──他の客に見られて逃げられたらどうするんだと、足りなすぎる配慮にどん引きである。


 だが、幸いなことに他の客は酔っているのか、荒事に慣れているのか気にしていないようだ。セーフ。


『一応、中で何があったか聴こう』


「えーっとね──」


 そこからヴェールはスッキリした顔で話し始めた。

 まず、トイレに入った後『迷惑だから止めろ』と警告したらしい。

 そうすると『客は神なんだから何したっていいでしょ』と、パンパンに太った女。


 ヴェールは『あたしの方が神に決まってるじゃない、詰め物料理(イェミスタ)オンナさん』と挑発。

 そこでゴングが鳴り響いた。


 まずは肩をぶつけ合う。

 繰り返し。何度も。

 さながら大型野生動物の縄張り争い。

 相手が勢いよく体当たりしようとしたところで、ヴェールが回避。ついでに足を引っかける。


 相手は顔面から床舐め。

 ジャバザハットは立ち上がり攻撃! 奴は鼻血を出しながらの右ストレート!


『……ジャバザハットって何だ?』


「──そこであたしは華麗に回避!」


『こいつスルーしやがった。それで、回避して終わったのなら瀕死が3人も出ずに済みそうだが』


「……回避ついでにカウンター!」


『それ右ストレート?』


「……に、ニー」


『ニー?』


「ニーキックを相手の鳩尾にちょーっと……」


『ちょーっと?』


「い、いや~……。骨をバッキボキに砕きながら奥深くにかな? キミに届け脊髄までッ! ありがとう師匠直伝の強化魔術!」


 コイツ殺意丸出しじゃねーか……。

 強化魔術は初級でも、素手でメリケンサックくらいの威力が出る。元から筋力のある脚だともっとやばい。


「その後にジェットストリームアタックの残りが来たから、同じように強化魔術をかけながら──やっちゃった!」


 相手はそれなりの地位らしいし、これどうするか……。

 このまま素直に矛を収めてくれるわけないだろうし。


『意識が戻ったら面倒なことになりそうだから、どうにかしないとな……。やっぱり口封じに殺──』


「あ、大丈夫。全裸に剥いてダブルピースで写真を撮っておいて、相手のポケットの中に入れておいたから」


 写真とは、機械の板で作る魔術的な絵画だったか。


「次に何か起こしたら、複製してある写真が拡散されることになるってメッセージを添えて! あとついでに太りやすくなる呪いとか!」


『えぇ……』


 さすがにこのクズさは私でも普通にどん引きである。

 人間の女性というものは闇深い。


「ダイジョーブ、ダイジョーブ。このアテナイに細かい法律とかまだ──あんまり無いから!」


 そういう問題なのだろうか。

 ある意味、肉まん三姉妹は死んでいた方が、これからビクビクしながら生きるよりマシだったのかもしれない。

 まぁ、あの話しっぷりから同じかそれ以上の事を普段からしてそうな三姉妹だったし、因果応報というところだろうか。


 ……私としては可愛い女の子の、その類の写真を見てみたい。

 一瞬で美少女転生しろこのヤロー!


 とかエロい妄想をしていると、優しく包み込まれるようなベルベットボイスが響いた。


「あの、ヴェールさん。少し夜風に当たりませんか?」


 突然の事で驚いた。

 エリクから、ヴェールへのお誘いである。




* * * * * * * *




 さすがの私も気になる。超気になる。

 エリクが裸エプロンから“吸血鬼風王子服”とやらに着替えた後、2人して外へ出て行ってしまった。


 男女でこんな時間に外……つまり、エロいことだろうか? エロいことだろう。私の勘に間違いは無い。今までエロい予感が一度も当たったことはない気もするが。


 でも、さすがに私が付いて行くと、ヴェールに器物破損キックを食らうことになる。

 そして気になって、気になって──ラップで窓に張り付いて外を見てたら、丁度ナイスポジション!


「え、えと……急にどうしたんですか。エリクさん……」


 窓の外に置いてあった空の酒樽に、二人して腰掛けていたのだ。

 ここから見えるし、声も聞こえる。

 きっと急な呼び出しにも対応できるように、エリクは近場を選んだのだろう。


「ヴェールさんに感謝と謝罪を言いたくて……。すみません、皆さんに聴かれては少し恥ずかしかったので」


 おうおうおう、ワイが聴いとるでぇ! ……おっと、何か出歯亀みたいな言葉遣いになってしまった。


「い、いえ。あたしはそんな……。当然のことをしたまで……です」


「でも、僕のせいで貴女に危険なことをさせてしまった。本当は僕自身が決断しなければいけないときに、いつも色々と考えてしまって……」


「ふふ、それが普通ですよ。──あ~、少し安心した」


 エリクとヴェールの距離感が、肩が触れるか触れないかギリギリである。

 座っている空の酒樽よ、なぜお前らは! もうちょっと近付いて配置されておかなかったのだ!

 私はもっと過激なシーンが見たいぞ! 押せ! 押し倒せヴェール!


「……安心とは?」


「エリクさんって、なんだか何をやっても完璧にこなせちゃう王子様みたいに見えていましたから。人助けもあたしみたいに不器用じゃなくて、完璧にこなしちゃう」


「そんなことは……」


 もう、あたしのことも救っていたんですよ。──と声にならない秘密(ヴェール)に包まれた呟きが見えた。


 それからしばらく、2人は無言だった。


 何も言えない、ではなく──。

 何か満足げに微笑みを浮かべているヴェールと、それを見てその場の一時を堪能するかのように夜空を見上げるエリク。


 月に叢雲──今宵の空を取り巻く黒のカーテンは、まるで芸術品のようだ。


「ヴェールさん」


「はい」


「月が綺麗ですね」


 うん、確かに月が綺麗だ。

 何も無いまっさらな月より、雲がかかっていた方がより一層月の女神(アルテミス)の光が際立つ。


「え、あ、あの……!?」


 ただそれだけの言葉なのに、なぜかヴェールは大慌てだ。

 なんだ? 何か深読みでもしているのか?

 まるで告白をされたかのようなリアクション。


 視線を宙に泳がせたり、うつむいたり、唇をギュッとしたり。

 ひとしきり可愛い反応を見せた後、意を決したように。

 ヴェールは言った。


「あたしも……愛しています(月が綺麗)──だと想います。想っています」


 2人は見つめ合っている。

 なにこの雰囲気。

 ギリシャな皿の私にも説明してくれるかな?


「な、なんちゃってー! あはは! さぁ、エリクさん。もう戻りましょうか!」


 照れくさそうな魔女──いや、今だけは王子様に手を引かれるお姫様のようだった。


挿絵(By みてみん)

ローファンタジーの新連載を開始しました。

こちらもよろしくお願いいたします。



【魔都東京の嫌われ最強魔術師 ~少女たちの死亡フラグを未来視で一発逆転させてみた~】


あらすじ

政府の機密研究員として働いていた、“ブレイカー”というハンドルネームの落ちこぼれ青年。

彼は東京にダンジョンが出現する事故にまきこまれる。

そして、幼なじみを失いながらも【世界初の魔術師】となってしまう。

あたえられた力は、死の未来のみを視られる【魔眼】だった。


それからたった数年で東京ダンジョン踏破の大英雄となったブレイカー。

時価数千億はくだらないアーティファクトをいくつも地上に持ち帰り、日本政府最強の切り札と呼ばれるようになった。


……そんな信じられないような肩書きと能力だったのだが数年後に謎のドロップアウト。

引退してニートのような生活を送っていた。


今日もテキトーに引きこもってる探偵事務所の客を追いはらい、気にいった相手だけを助ける。


「そこの少女、気に入ったぞ。特に死に様がとても美しかった、パーフェクトだ。

 条件次第ではバッドエンドが視えた、お前のクラスメイト達を助けてやろう。

 そうだな条件は……、今から俺のモノになれ」


「……はい?」


本当は好感度カンスト状態なのに、クソみたいなド外道バッドエンド趣味のために少女たちに嫌われまくりなザンネン生活。

だが、やると決めたら死亡フラグを予知して、やり直しのきかない一発勝負で撃ち砕く。

まぎれもなくヤツが──バッドエンド・ブレイカーが──爽快にフラグブレイクすることをお約束いたしましょう。

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