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イージスの皿は砕けない! ~龍に勝つ方法? 飯を喰らって食事強化《バフ》ればいい~  作者: タック
二章 同じ皿の飯を食う冒険者ギルド、アルゴナウタイ設立

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第34皿 丸皿覗く三角形

「ど、どどどどどうするんですぁ! ジスの旦那ぁ!?」


 こちらを警戒しながらも、ゆっくりと近付いてくるネメアの獅子の群れ。

 エニューオー1人では縄張り全域をカバー出来ないため、複数匹の切り札が存在しているとは考えていたが、この最悪のタイミングでくるとはな。


『やっぱり、オルフェウスを生贄……もとい殿にして逃げた方が正解だったな』


「い、いやいやいや! 今更言われてもですよ! これから俺1人がどう頑張ったところで、もう──」


 まぁ、保険はかけておいた。

 あいつらの脚ならもうそろそろ来るはずだ。


「ぎぃやあー! 今度こそ食われちまうー!?」


 群れに一番近かったオルフェウスは、ネメアの獅子にとって格好の獲物だ。

 脚も折れていて倒れているし、前菜として丁度良い。

 見舞金はどれくらい必要かな? と考えていると──。


「ちょーっと待ったー! でござる」


 横から巨大な肉玉が着弾した。

 いや、筋肉デブが突進してきたのだ。

 飛び掛かろうとしていたネメアの獅子は横へ吹っ飛び、見舞金(オルフェウス)は助かった。


『よう、最悪の時に現れるとは、良いタイミングだポリュペーモス。それと──』


 結界の糸をかいくぐり、私とクリュに向かってきていたネメアの獅子達。

 それが段々と、視界から遠ざかっていく。


「お待たせ、皿の姉ちゃん。急いで飛んできたぜ」


 明るい笑みを浮かべた少年が、クリュごとこちらを抱えて走っていた。


『サンダー。糸の結界を展開しながら奴らを撒くぞ。指示の通りに動いてくれ』


「へいへい、非力な俺には辛いねぇ」


『……隠している本気は出さないのか?』


「何のこと? 俺、素手じゃ本当に素早さだけの非力少年だよ」


 カマをかけてみたが、今はまだ明かす気は無いという事か。

 まぁ、助けてくれるという事は利害は一致しているのだろう。

 今はまだ確証の無い勘でしか無いのだから。


* * * * * * * *


「ぜぇ……はぁ……超疲れた……」


「はっはっは。サンダーきゅんは鍛え方が足りないでござるよ」


『ポリュペーモス、お前は体力ありすぎだろう。仕留めたネメアの獅子と、見舞金……じゃなかったオルフェウスを担いでここまで全力疾走とか』


 私達は無事、後方の戦闘食堂まで戻ってきていた。

 息を切らせて仰向けに倒れているサンダー、汗だけは無駄にかいているが平時の状態を保っているポリュペーモス。


「これくらいの力が無いと、小さなヘラクレスたんの従者は勤まらないでござるよ」


『確かに、この小さなヘラクレスは正義のために無茶ばかりするからな』


 簡易ベッドで規則正しい寝息を立てているクリュを見て、私達は笑った。


「本当にこの子はすごいよ。俺の息子の嫁にするには勿体ないな」


「だから、オルフェウス殿。気が早すぎるでござるよ」


 その話を聞いて、サンダーはむくりと起き上がった。


「ダメダメ。クリュは俺のなんだから」


「あ、サンダーてめぇ! 年が近いからって大胆な発言しやがって!」


「おっさんが危ない発言するよりは良いと思うよ?」


 冷たい水を運んできてくれたヴェールは、それを見て呆れながら呟いた。


「クリュちゃん、逆ハーレム状態ね。凄まじいヒロイン力……少し分けて欲しいくらいだわ」


『ヴェール。お前が分けてもらっても、今までのパターンだと突進してくる猪とか、武器を持ったチンピラとか、蜂の大群とかが迫ってくるだけじゃないか? ……あと金返せ』


「うぐぐ……割と事実だから、悔しいけど反論できない。……あと返す金が無い」


 コイツはもう一度くらい、死にそうな目に遭って反省した方がいいと思う。


 おっと、そうだ忘れていた。

 早めに対策を練らないと全滅してしまうところだった。


『ヴェール、ちょっとエリクを呼んできてくれ』


「うん、いいけど」


 私は冷蔵庫を召喚して、床にドンと置いた。


『ネメアの獅子の調理の相談だ。市場で仕入れてきたアレと組み合わせて、急いで作って欲しいと伝えてくれ』


「りょーかい。うひひ、役得役得」


 ……そんなにエリクと話せるのが嬉しいのなら、理由も無く普通に話せば良いと思うのだが。

 スキップで厨房に向かっていく、今だけ無駄に陽気な魔女を見送っていると、ある事に気が付いた。

 クリュティエが物陰から、こちら──クリュとサンダーの方を泣きそうな顔で見ていたのだ。


 これは少し面倒な事になったかもしれない。

 今クリュティエの機嫌が悪くなっても、立場上は私の雇い主に当たるので、ギルド全体に影響が出る可能性がある。

 それに……クリュの真実の件もある。後々の事を考えると、クリュティエの精神面は安定させておいた方が得策だろう。


 何かいい手は無いだろうか。

 そう思っていると──クリュティエは、倉庫の方へ逃げるように走って行ってしまった。


「……俺、ちょっと行ってくる。覗いちゃダメだよ~?」


 一連の思惑を知ってか知らずか、サンダーは私にだけ聞こえるように顔を寄せてそう呟いた。

 覗くな、か。

 ……そんなの、覗くに決まっているだろう!


 私は、倉庫に向かうサンダーの後を追いかける。

 ラップで脚を作りだして、よちよち歩きなペースだが!


『くそ、狭い場所で“空飛ぶ円盤(フライングソーサー)”をしたら即パリンだ。焦らず一歩一歩……』


 少し出遅れたが、薄暗い倉庫へ侵入成功。

 人の気配は……先に入っていったサンダーとクリュティエだけのようだ。

 こっそりと覗き込むと、そこには──。


「んぅ……っ!?」


 まだ年端もいかない二人のキスシーンの最中だった。

 どういう状況だ、これ。

 二人の関係性や、一連の流れからは想像も付かない。


 それはクリュティエも一緒だったのか、身体を密着させていたサンダーを両手で突き放していた。


「い、いきなり何するのよ……」


 いきなりか、いきなりのキスだったのか。

 私はゴクリと唾を……飲みたいが、ボディが皿なのでそれっぽい心境ということだけはお伝えしよう。


「クリュばっかり構われて、寂しいのかなって?」


 サンダーは、身長の低いクリュに覆い被さるか覆い被さらないかくらいの体勢で壁に手を付き、顔をほぼ密着させながら無邪気な笑顔で囁いた。


「わ、私はそんなんじゃ……」


「本当に?」


「……クリュは、賞賛される行為をしたのでしょう。それはとても私にはできない。誰かのためにすんなりと、この身を犠牲にしようだなんて、私にはできないもの……そもそも、こんなギルドの立場だってただの成り行きで私になんて──」


 続けざまに弱音を吐こうとしたクリュティエの唇を、サンダーは唇で塞いだ。

 最初は再び突き放そうとしていたクリュティエだが、サンダーは離れない。

 身体ごと密着させるようにして、お互いの唾液を絡ませ、二つが合わさったものが口の端からトロリとこぼれる。


 抵抗できなくなったクリュティエは、瞳を潤ませた後に目を閉じて、サンダーの行為を一身に受け始めるために力を抜いた。

 それから永遠に感じるような数分間、お互いにその行為を続けていた。


「ぷあっ」


 やっと離れたサンダーを、クリュティエは女性としての眼で見つめながら、乱れた衣服を直しつつ息を整えた。

 それを珍しく真剣に見詰め返すサンダー。


「誰かのためじゃなくて、俺のために……。ダメかな?」


「……うん」


 生意気だったクリュティエの面影は無く、従順な返事だった。

 サンダーはいつも通りの無邪気な笑顔に戻ると、倉庫の出入り口……私の方へとやってきた。


「あはは、やっぱり覗いちゃったか~」


『ま、まぁギルドの事だし……な』


「そうだよね~。ここでクリュティエ姫がへそを曲げちゃったら、この作戦が成功しないかもしれないからね。それくらいなら俺も協力させてもらうよ」


『お、お前、サンダー……』


 いぶかしげに喋りかけた私を持ち上げ、サンダーは顔を近づけてきた。


『お、おい。何を!?』


「お裾分け」


 皿のフチにキスをされてしまった。


『な、なななななななな!?』


「あれ? ジス姉ちゃんって、皿になる前はそういう経験が豊富だったんじゃ? 何か処女みたいな反応だね」


『そ、そんなわけないだろう!? わ、私は記憶にはないが、そりゃもう男だったとしても、女だったとしても、毎日とっかえひっかえだったに違いないんだからな!!』


「あはは。俺としては、すご~く一途な感じだったと予想するよ。あ、さっきのは他言無用でね。クリュだけには知られたくないんだ」


 サンダーは羽の首飾りを触りながらそう言った。

 私は何故か混乱してしまって、ついつい声を荒げてしまう。


『い、言えるか馬鹿!』


 キスされてしまった。

 だけど、皿のフチにだから、おでこにキスみたいな感覚だろうきっと。

 私は何を焦っているんだ馬鹿。

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