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イージスの皿は砕けない! ~龍に勝つ方法? 飯を喰らって食事強化《バフ》ればいい~  作者: タック
二章 同じ皿の飯を食う冒険者ギルド、アルゴナウタイ設立

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第7皿 想い出は朧気、現(うつつ)の蜃気楼

『エリクの水浴び覗きに夢中になっていて、猪に跳ね飛ばされて池ぽちゃとはな。私の夜なべして作った防具に感謝しろよ?』


「あ、あんたがエリクさんの身体を使って、あんなポーズをするから!」


 あの後、急に雨が降ってきたので、偶然見つけた洞窟に避難して服を乾かしている。

 替えの服は持ってきていない全裸のヴェールは、エリクのマントを借りて、それを羽織りながら小さく体育座りしていた。

 私は憑依を解いて地面に置かれ、ヴェールの胸とか太股とかをガン見している。


『んん~? エリクがどんなポーズで、ナニを見せつけていたってぇ~?』


「それはッ!? ……それは……その……よく見えなかったというか、見てなかったからわからないわよ……」


 あのヴェールを赤面させていじれるネタができた。

 これは大収穫である。ニヤニヤが止まらない。ほくそ笑むとは正にこの事だ。


「あ、そういえば思い出したけど──!」


『話題を変えようとするヴェールであった』


「くっ……! ええと、あんたの持つ“討伐肉化包丁”って、何か“ほうちょう”って感じよね!」


『ほうちょう? 包丁は元から包丁だが……』


「ノンノン、ニュアンスが違う。ほうちょう! フードかぶって、ランタン片手に一歩一歩迫ってきて襲ってくる雰囲気?」


『まぁ、名前が長いから、別に呼びやすければ“ほうちょう”でも何でもいいが……』


「で、でしょ……」


 ──そこで会話が終わった。

 普段なら別に会話が続かなくても、ヴェールは機械の板をいじって一人遊びしたりするのだが、エリクがいると妙にソワソワして落ち着かない様子だ。

 それに今は布一枚の格好。


 間違いでも起きると期待してるのだろうか、こいつは!

 是非、起こって欲しいものである! 見物したい!


 狭苦しい洞窟の中、乾かしている衣類から落ちる水滴の音だけが響く。


「あの、ヴェールさん」


 突然、口を開くエリク。


「ひゃい!? な、なんでしょうか……」


 ヴェールはそれに反応してビクッとしてしまう。

 その拍子に、見えっ……なかった。チッ。


「昔、僕とヴェールさんが会っていたとの話ですが、そのことを聞かせていただけないでしょうか? もしかして、僕の知る──」


「え……と。数年前、アテナイに師匠と一緒に行ったとき、街で子供をかばっているエリクさんを見かけて……」


 エリクはいっつも子供を助けてるな。

 もしかして、そういう趣味なのか!?


「身を挺して、何の特にもならなさそうな行動をしてるなぁって……失礼ながら呆れてしまって……。でも、それと同時に何か……大切なことを思い出せた気がして……。どう、しようもなく……、印象に、残って……、しまって……」


 ヴェールは、途中から涙声になってしまっていた。


『お、おい。どこか身体が痛むのか?』


「違う、違うの。当時の情けないあたしのことを、少しだけ思い出しちゃって……」


 想定外すぎるリアクションに、私は若干の混乱をしてしまう。


『い、今はヴェールも子供を助けたりしてたし、もう情けなくもないぞ。たぶん、きっと。な? エリク!』


 私ではどうしようもない気がして、エリクに話題を振った。


「ええ、素晴らしい女性だと思います」


 エリクはイケメンスマイルと共に、爽やかな風のように囁いた。

 ヴェールは顔を赤くして、そのままうずくまってしまう。


「でも、今の話からすると、僕が幼い頃に“伝説の魔女”様の元に滞在した時に、出会ってはいなかったようですね」


『ん? エリクはその伝説の魔女とやらに会ったことがあるのか?』


「はい、教えを請いに」


『どんな老人で、筋肉むきむきで、グルグル眼鏡の偏屈なんだ? ヴェールの話で想像が膨らみすぎてしまって気になっていたんだ』


 確か天使を殴り殺したとか、魔術より上のランクである魔法を扱えるとかトンデモだったはずだ。


「今のヴェールさんに似た方でしたね。現在の年齢では、たぶん二十歳前後でしょうか?」


『は? 伝説のっていうくらいだから、お婆ちゃんじゃないのか?』


「かなり若かりし頃に創った伝説らしいです。天使と戦った時も、冥界から借り受けた武具を使っていたのでしょう。異界の神と直接契約をしていたそうですから」


 スーパー魔女っ娘だったってことかよ……。ヴェールをお世話したってことで、お近づきになれないものか。


『それで、その元ロリ伝説魔女に──何の教えを請いに行ったんだ?』


「それは……ええと、今はまだ秘密にさせておいてください。そんなに重要なことでもないのですが、僕にとってはかなり恥ずかしいので」


 恥ずかしいということは、たぶん股間の悩みなのだろう。

 確かにイケメンがそんなことで悩んでいたら、恥ずかしくて恥ずかしくて仕方が無いだろう。

 私は理解ある皿だ、察してやろう。追求はすまい。


「その時に、とても綺麗で澄んだ眼をした、不思議な雰囲気の女の子と出会っていて……。もしかしたら、それが幼少期のヴェールさんだったのかと考えていたのですが」


 うん、死んだ魚の目のヴェールとは違うな。確実に、絶対に違う。五百人が五百人そう判断するレベルだ。


「あ~……。師匠にはもう一人弟子がいたから、たぶんそっちかな……。あたしの姉弟子、良いとこの出で、まぁそれなりに外見はいいから……外見だけは」


「そうですか。では、その姉弟子さんに、いつか出会って御礼を言いたいですね。僕の人生を変えてくれた人ですから」


 ……これは、三角関係というやつに発展するのか!? ワクワクドキドキだぞ!


『お嬢様系の姉弟子によるNTR! 有りだと思います!』


 無言のヴェールに引っ掴まれ、洞窟内の壁に向かって投げつけられてパリンしたのであった。

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