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イージスの皿は砕けない! ~龍に勝つ方法? 飯を喰らって食事強化《バフ》ればいい~  作者: タック
二章 同じ皿の飯を食う冒険者ギルド、アルゴナウタイ設立

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第4皿 人と獣の分岐点

 あれから数日が経った。

 看板を冒険者ギルドのものにしたり、国に正式なギルドとして認めてもらうための手続きと賄賂をゴニョゴニョしたり、周辺に何でも屋組織として宣伝したりだ。


 そして今日、ヴェールとフィロタスが退院して合流した。


「防犯魔術はこれでオーケーっと。簡単なものだから鳴子代わりにしかならないわよ」


『本格的な防犯は手が空いてきたらだな。今はこれでいい』


 私は皿としてヴェールに持たれ、冒険者ギルドのドアや窓などを見てまわっていた。

 その一つ一つに、“時間外に住人以外が侵入した場合に大きな音が鳴る”という初級魔術をかけてもらった。

 ただし、それなりの腕の魔術によって解呪されてしまうらしい。あくまで間に合わせだな。


『それにしてもヴェール、折れた歯まですっかり治っているな』


「ふふ、そりゃ王子様──じゃなかった、エリク様に会うんだから格好悪い姿は見せられないでしょう!」


 それなりの治療費によって、重傷だったヴェールの身体は急速に快復した。

 折れた歯まで元通りというのは、神話の医者であるアスクレピオスもびっくりである。


『どうせなら、その死んだ魚の目と、クズの性根、似合わない乙女心も治して欲しかったものだな』


「ばっか、それを治したらあたしの9割くらいは無くなっちゃうわよ」


『占める割合が大きいな……。ああ、そうだ。そろそろフィロタスが始めてると思うから、ギルドの中に戻ろう』


「始めてるって何を?」


『ウジ虫を冒険者に孵化させるお遊戯だ』


* * * * * * * *


「今のお前達は既に人間では無い! マケドニア、スパルタ基準なら赤子以下の能力しか無いウジ虫だ! 人ですら無いお前らの返事は“はい”以外答えるなッ!!」


「は、はい。訓練教官殿……」


「声が小さぁい!! まだ蚊の羽音の方が覇気があるぞッ!!」


「はいぃぃ!!」


 冒険者ギルドの中にフィロタスと、十人の元ゴロツキ達がいた。

 フィロタスはまだギプスや額の包帯が取れていないが、軍人の如く仁王立ちする巨体は、それが治療道具ではなく、やはり武器や防具に錯覚させてしまう。

 元ゴロツキ達は、ぺっぴり腰ながらも必死に気圧されないように立っているが、ビビりまくっているのが顔面蒼白、汗ダラダラで丸わかりだ。


「よぉーし、それじゃあ腕立て伏せ始め! 死ぬ気でやりきるか、死ね! お前らにはそれしか選択肢は無いッ!!」


「は、はいッ!!」


 一階の酒場の中がトレーニング会場と化した。

 食事処としては致命的に不味くなりそうだし、いつか外に運動場でも確保しようか……。


「──ねぇ、ジス。あのむさ苦しい地獄のような光景はなに?」


 その様子を扉から覗きつつ、ヴェールが問い掛けてきた。


『冒険者ギルドの事を相談したら、新兵を育てるのなら任せろと言われてな……』


「えー……。あたしの知ってる冒険者ギルドからイメージが離れていく」


『こ、こんな感じじゃないのか?』


 恐喝と暴力によって何でも解決する組織だとイメージしていたが、若干の方向性の違いがあったようだ。


 ──と、そこへ冒険者ギルドへの来訪者がやってきた。


「あ、あの……この新しくできたギルドは何でも解決してくれると噂ですが、本当ですか……?」


 依頼者の第一号である。

 入り口付近に居た、分かりやすい魔女の格好をしたヴェールに話しかけてきたのだろう。

 それに対して、代わりに皿である私が返答した。


『ああ、大抵の事は何でも解決してやろう』


「おぉ!? 皿が喋った……魔道具というやつですね」


 依頼者の男性──着ている服は貴族ほどではないが裕福そうな身なりだ。

 言葉遣いや仕草からも、それなりの素養が感じられるため、資産を割と持っていそうなニオイもする。


『今、中は訓練中で少し騒がしいが、外よりはマシだ。座って話そう、依頼の機密性が保たれる』


* * * * * * * *


 依頼内容は、数日前から行方不明になっている自分の娘を探して欲しいとのこと。


 既に兵士達に捜索願は出したらしいが、一行に見つかる気配がないのもあり、この都市国家アテナイを騒がせている犯罪組織グライアイのことで心配なのだ。

 そこでワラにもすがる思いでここに来たという。


 成功報酬はかなりの額を提示され、前金すらも破格だ。

 やはりこの国の住人の大半は金銭感覚がおかしい。


『──ということだが、フィロタス。奴らは使い物になりそうか?』


「スパルタでは子供の時からライオンと戦わせられるので、これくらいの試練はぬるいですな。相手が残虐で凶悪なサイコパスのシリアルキラーであることを祈るばかりです」


 一緒に話を聞いていたフィロタスの想定が最悪をぶっちぎっていて、依頼者の顔が青ざめ始めた。

 私は慌てて金づる……もとい善良な依頼者にフォローを入れる。


『はっはっは、それくらいの相手でも安心してくださいということ!』


 やべー、これで何の変哲も無く友達の家に泊まってるとか、川で普通におぼれ死んでいたとかだったら反感を買いそうだ。

 今回ばかりはグライアイに暗躍してもらっていることを祈ろう。


『それじゃあ、ここはフィロタス、サンダー、ブリリアントに任せた』


「ジス殿はどうするのですかな?」


『ちょっと野暮用で別行動だ』


「とすると──あのカリュドーンをどうにかするのですな」


『ああ。私、エリク、ヴェールで森に向かう』


 さてと、これから二手に分かれての行動だ。

 冒険者ギルドの第一歩と、カリュドーンの猪退治の始まりといこうか!

執筆中小説から投稿すると、プレビューも見られて便利だと知ったのであった!

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