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イージスの皿は砕けない! ~龍に勝つ方法? 飯を喰らって食事強化《バフ》ればいい~  作者: タック
一章 魔毒を喰らわば神皿までも

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幕間 斬殺の後は毒殺で

 蟹座のスヴラキを作ると決めた後、屋敷の自室にて。

 私──ジスは問いかけていた。


『なぁ、ヴェール。変身魔術を唱えられる使い魔……持ってるだろう?』


「……隠す必要はないか。使役してるわよ」


 機械の薄い板をいじっていたヴェールは手を止め、こちらに視線を移してきた。


「言っておくけど、元からあたしの使い魔だったってワケじゃ無いわよ。あの真っ二つにした時、1%くらいなら初級魔術で使い魔にできるかなーって試して成功しただけ」


『それはどちらでも問題は無い』


 私は冷静を装っているが、その1%という確率を引けたヴェールに驚いている。

 転移陣の時といい、こいつは運命でも味方に付けているのだろうか?


『ちょっとな、今度の会食で使えるか確かめたい』


「会食でアンタ、何かするの?」


『それはこちらのカードを精査してからだ』


 わかったわよ、という仕草で、ヴェールは棚からルーン文字の書かれた小瓶を取り出した。

 そして、コルクの蓋をポンッと開けた。


「ちなみに魂だけもぎ取った使い魔だから弱体化してるし、実体もあたしの魔力で維持させてるだけだからね」


 周囲に広がっていく煙のようなもの。

 そこに人体のシルエットが浮かび上がる。


『魂だけ……つまり生まれたままの姿という事か!? ヴェールに化けていたんだから、ヴェールの裸か、もしくは元の女悪魔の裸か!?』


 私はテンションが有頂天を突破した。

 ちなみに有頂天の使い方は本来違うが、テンションさえ高ければ意味は通じるだろう。うはッッッッッ!! はっだっかっ!!


「……呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」


 初めて聞く、私とは真逆のテンション低めの可愛い声と共に──シルエットを野暮ったく覆っていた煙が消えた。

 ガン見、私はガン見──していたのだが、そこには布があった。


 裸体を隠す邪悪なる布。


 服という人類最大の悪。


「あ、ジス。既に服は買って着せてあるから」


『返せ、全裸悪魔召喚シーンのワクワクを返せ』


「それとフォボスも、そんな古い登場台詞どこで知ったのよ」


 フォボスと呼ばれた女の子の悪魔は、首をかしげながら答えた。


「ヴェールのスマホで見た、クシャミ召喚大魔王モノから……。最近は時代劇を後ろから覗いてるから、そっちのセリフもばっちり。今度、そこの皿にも教えてあげる……」


『何かマイペースな子だな、おい』


「……あたしも、使い魔にしてから扱いに困ってたりしてなくもない。ちなみにこの着せてる服はカノの店で買ったやつ。地球の学生服、ブレザーをパッチワークしたものなんだけど、こっちでは奇抜で売れないからって格安で渡された」


 言われて見ると珍しい格好だ。

 初めて見たはずなのに……なにか特殊な性癖を目覚めさせられそうである。

 着てみたいという願望もなくはないが、今のボディでは無理だ。

 というわけで──。


『脱がせたくなる服だな!』


「ひえ……っ。この皿、変態ですか……。もしかして悪魔だからといってエッチなイメージを持たれているのでしょうか……」


『私はジス! ショタから老婆、人外まで、可愛ければきちんと愛する事ができる皿だ! ちなみにヴェールに使われる立場としては先輩なので、そう呼びなさい』


「いや……面識あるので名前自体は知っていますが。心が広すぎですね……お皿先輩」


 ふふ、褒められてしまった。


 ……と、こんな事をしている場合ではなかった。

 全裸が拝めないのなら、話を進めてしまおう。


 あ、半脱ぎというのも捨てがたい。

 ……話を進めよう。


『なぁ、フォボス。変身魔術はまだ使えるのか?』


「はい、それはもちろん……。唯一の長所という感じなので、これが使えなくなったら存在価値の無いゴミ以下のゴミオブゴミです……」


『だいじょうぶだ! それがなくても俺は、お前の事が好きだぞ!』


「……お皿先輩、あの時も思ったけどやっぱり優し──」


『身体とか!』


 フォボスは何か言おうとしていたが、途中で黙ってしまった。

 私は気にせず言葉を続けた。


『変身魔術を使った後に死んだふりはできるか?』


「可能だと思います……。元からできていたのと、実際に殺される経験も得たので迫真の演技ができるかと……。まさか、背後から真っ二つにされる貴重な体験をしてしまうとは、夢にも思っていませんでしたが……。真っ二つ……」


 ちらっとフォボスは、ヴェールの方に視線をやった。

 ヴェールの方は悪びれもせず笑いながら目をそらし、何事も無かったかのように機械の板で遊び始めた。我らが持ち主ながら、なかなかのクズである。


『よし、それじゃあ、斬殺の後は毒殺で頼む』


「ど、毒殺……?」


『ヴェール、悪魔にも効く毒を持ってないか? コイツはどうやら、体験するとリアリティある演技ができるようだ』


「え、あの……まさか……お皿先輩?」


 それから、防音の初級魔術が施された部屋で、かわいそうな悪魔娘の悲鳴は封殺されたのであった。

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