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イージスの皿は砕けない! ~龍に勝つ方法? 飯を喰らって食事強化《バフ》ればいい~  作者: タック
一章 魔毒を喰らわば神皿までも

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第25皿 軍神アレスの加護を!

 私──ジスは、ついに生身の身体を手に入れた!

 フィロタスの身体を乗っ取って……ではなく、同意の上で使わせてもらっている。

 本当はオトナのお店に直行したいが、本人に否定されたら憑依状態が解けてしまうのでガマンしよう。


 今は、目の前のクズ以下の奴らを処理しよう。


「ええい、お前達! アイツはただの執事のジジイだ! かかれい!」


「は、ははぁ!」


 ゴロツキ共が、こちらに目掛けて殺到してくる。

 私は燕尾服を脱ぎ去り、上半身裸になったフィロタスボディに力を入れる。

 パルテノン神殿の柱のようにどっしりとした大腿四頭筋(ももにく)、鉄板のように分厚く硬そうな大胸筋(むねにく)、丸太のような上腕二頭筋(うでにく)。全身の古傷が歴戦の老兵を感じさせる。


「ぬん!」


 ただ──正拳突き。

 ゴロツキの頭部が弾けた。地面に散らばった。


「は? え?」


「ひ、ひぃ!?」


 現実離れした光景に、ごろつき達はざわめいた。

 まるで時間が凍り付いたかのように、こちらに恐怖の目を向けたまま動かない。


「ビビるんじゃ無いよ! さっきみたいに囲んでやっちまいな!」


「わ、わかってやすって!」


 マンバの声で、ゴロツキ共は一斉に動き出した。

 どうやらこちらを前後左右から襲うらしい。

 最初の油断も無く、各々が武器を握りしめていた。


 私はゆっくりと、落ちていた長めの鉄パイプを拾う。

 妙に手にしっくりとくる。


「死ねやぁぁぁあああ!!」


 突っ込んでくるゴロツキ共。

 剣が、槌が、槍が、斧が──四方から振り下ろされる。


「何という拙い武器の取り扱い。児戯にも等しい──」


 鉄パイプで棒術を披露してやった。

 武器を絡め取るように動かし、同時に相手の喉を貫通させる。

 一瞬にして、四人のごろつきは血しぶきを上げながら倒れていた。


「ゲェーッ!? 鉄パイプでなんて芸当を」


「せ、背中に眼でもついてやがんのか!?」


「パワーだけではなく、技までも……コイツは化け物かぁッ!?」


 いちいちリアクションが大きい奴らだ。


「いいや、ただの格好良い皿を身につけた執事長だ」


「お、俺達、金で雇われただけなんだ……。だから、許してくれよ? な?」


 束になっても勝てないと判断したか、ゴロツキ共は命乞いを始めた。

 だが──


「知らんなぁ……。誰かを殺す気でいたのなら、まな板の上で全殺しにされる覚悟くらいあんだろう?」


 上腕二頭筋に力を込めて、メコリとパンプアップさせる。


「ひっ」


 何も持っていない方の腕を猛スピードで一振り。

 その手にはボール大のモノを握っていた。

 ドサリと倒れる、頭無しのゴロツキ。


「さぁ、お前達を料理する……ではないな。生ゴミにする時間だ」


 私の中にいるフィロタスの意識がどん引きしているような感じだが、きっと気のせいだろう。

 ゴロツキに向かって、瞬時に球体を投げつけて生ゴミ処理。

 生ゴミが弾けると同時に、鉄パイプを突き刺していく。


 相手が必死に振り下ろした武器も、真芯を突いて破壊。

 技に劣る一閃の動作より、点の突き方が強いのは道理である。


「ふはは! やはり身体というのは楽しいな!」


 血しぶきに身体を晒すと興奮してしまう。

 ──だが、頭の中はいたって冷静だ。

 ちらりと、倉庫の奥の方に居たヴェールへ視線を向ける。


 まだこちらからは、距離がかなりある。


「そ、そうだ! 人質として小娘とガキを──」


 やっと気が付いたゴロツキ、だが遅い。


「残念、邪魔はさせませんよ」


 目立った行動を取っていた私の影で、密かに動いていた青年がいたのだ。

 そう、屋台でばったりと出会ったイケメン料理人──エリク。

 こちらに全員の目が向いている隙に、ヴェールのところへ移動していたのだ。


「あ、あなた様は……」


 エリクに抱き抱えられ、少し頬を赤らめている傷だらけのヴェール。


「ん? ボクと以前、どこかで会いましたか?」


「あ、いえ!? その……一方的に知っているだけで……。こんな血で汚れ、腫れちゃった顔で申し訳ないです……」


「例え殴られていようと、あなたの美しく気高い心は尊敬に値しますよ」


 ……ラブコメの波動を感じる。

 こっちが人間精肉機をやっている最中に、向こうは何をしているんだ。


「おい、ヴェール。このジス様も白馬の王子としてやってきたんだ。もうちょっと黄色い歓声でもあげろよ?」


「はっ!? 今思い出したけど、それ“皿憑依”ってやつでしょ! 身体はフィロタスさんのだから、言うなれば白髪のお爺様じゃない?」


「似たようなもんだろ、っと!」


 会話中、振り下ろされた大型ハンマーを鉄パイプで受け止め、岩のように大きいゴロツキの胸部分を拳で迎撃。

 胸骨と共に心臓を潰す感触が伝わってくる。


「……あれ、というか何で白馬の王子様とか知って──」


「フォボスが生実況してくれていたぞ」


「あいつ……また真っ二つにしてやろうかしら」


 これだけの事を言えるのなら、ヴェールは大丈夫だろう。

 思ってたとおり、心身ともにタフらしい。


「な、なに笑ってるのよ?」


「何でもねーよ」


 何故か笑みがこぼれてしまっていたらしい。

 まぁ──利があるのなら、まだしばらくはコイツの神器になっていてやろう。

 これだけの力を得たのなら、いつでも自由になれそうだしな。


「だ、ダメだ! このジスって奴は止まらねぇ! 早く人質を! 人質を連れて逃げる優男をぶっ殺してくれ!」


 ごろつき達はターゲットを変更。

 ヴェールをお姫様抱っこ、子供をおぶって逃げているエリクを狙い始めた。


「ひーえー、お助けをー」


 台詞の割に深刻そうでは無く、軽いエリク。


「おい、エリク。前も思ったんだが、その腰にぶら下げている剣は使わないのか?」


「これは料理用の包丁ですから人には使えません。一緒に食べたカリュドーンのステーキの時にも包丁として使っていたのを見たでしょう? 誰が何と言おうと包丁なんです」


「じゃあ、適当に落ちてる武器でも……」


 死体が手放したモノが散乱している。


「あ~はは……すみません。実は正直な所、武器を人に向けるのが恐ろしくて、恐ろしくて……」


「エリク、お前戦闘では使えないな……。まぁ、作ってくれたステーキの効果が“攻撃力上昇大”だったから、料理人としては最高だが」


「ええ。自画自賛になってしまいますが、アレは美味しかったですね」


 この状況で……と、私は呆れながら、エリクを追っている集団に向かって鉄パイプを投擲。

 食事効果──それも初の“大”によって、人体どころか石壁も貫通。

 面白いので、落ちている武器を次々と投げていく。


『まるで、私の全盛期のようですな。戦場を思い出しますぞ』


 胸当てとして付けている皿から、フィロタス本人の声が響く。


「お前の全盛期、素で化け物かよ」




 ──しばらくした後、倉庫内は静かになった。

 簡単に言えば、ゴロツキが全員生ゴミになったという事だ。


「さぁ、マンバ。後はお前と、三人歯(オドン)とかいう奴だけだぜ?」


「ふふ……まさか、ここまで追い詰められるとは。認めましょう。私個人としては負けです」


 マンバは後ずさるも、その背後は壁だった。

 一歩一歩、近付く私。


「でも、グライアイとしては勝たなければならない! 何故なら! 命より大切な金を沢山(たぁっくさん)かけたからねぇ!」


 マンバは懐から薄い硬質な板──ヴェールが以前使っていたような機械と似たものを取り出し、何かを操作した。


「さぁ! 三人歯(オドン)! ここはいいから、証拠を消しに行きなさい!」


「分かった、マンバ……いや、意地悪な魔女(パムプレード)


 異質なフードの男、三人歯(オドン)は高さ4メートルはあろうかという天窓へ跳んだ。

 そして、ガラスが割れる音と共に消え去った。


「あいつ……やっと最後に魔女として認めてくれたっていうのかしら? くくく……」


 私は、ただそれを見送った。


『ジス殿、早く追わないと……!』


「いや、フィロタス。私は残る」


 判断としては、追わない、だ。

 まだ、マンバから嫌な気配を感じる。

 それに──本来、それをすべき予定だった者がいるだろう。


「ったく、こんな怪我だらけのあたしの方を見るんじゃ無いわよ……」


 視線を感じたヴェールは、嫌々ながらもエリクから離れ、自らの足で立ち上がった。


「“あたしは役立たずのクソア魔女です”──と、弱音を吐いて倒れててもいいんだぞ?」


「はっ、あんたの持ち主であるあたしが、先にダウンなんてしてられないっての。もう魔術で回復したっての」


 そう吐き捨てながらも、まだ止まらない出血を手で押さえていた。


「その代わり、ここはキッチリと料理しなさいよ」


 ヴェールは自らに強化魔法をかけて、跳躍の体勢に入った。


「ああ、神皿は魔毒まで──ってな」


「なにそれ、ヘ~ンなの!」


 若い魔女は、皮肉めいた笑みを浮かべながら、暗い月が見える空へと跳躍していった。

 私は、まだ荒々しい邪気が見えるマンバに振り向いた。


「さぁて、人質救出という美味しい役をヴェールに譲っちまったんだ。これでお前が何も無かったら──」


「くくくく……ははははッ!!」


 毒々しい、触れるものを狂気に染めるような笑い声。


「イージス、あんたはこんなヨボヨボで丸腰のババアを殴ろうってのかい? 常識的に考えて、それは老人虐待だろう~?」


「ふむ、言われてみればそうだな」


 私は、その正論に頷いた。


『じ、ジス殿!? 何を!? このマンバは、卑劣な手段を用いた毒蛇で──』


「んな事言ってもなぁ。ヨボヨボのお年寄りなんて、私は殴れないからな~。もう、このままヴェールでも追いかけようか」


 マンバに背を向け、立ち去ろうとする。


『ジス殿……見損ないましたぞ……。かくなる上は、私一人でも……』


 と、フィロタスが私との憑依を解除しようとした瞬間──。


「隙ありぃぃいイイイイイイイ!!」


 背後のマンバが、毒々しい色が入った小瓶をこちらに投げてきていた。

 私はそれを──見ていた(・・・・)

 皿部分のTPS視点によって、皿のフチ部分から背後をずっと覗き込んで観察していたのだ。


「ああ、忘れていた」


 背後、ラップをマントのように広げてガードに使用。

 毒の小瓶はラップに弾かれ、壁にぶち当たって割れた。

 中身が飛び散って、周辺を溶かしながら煙を上げている。


「マンバァ? お前は料理を食ったよなぁ……」


 もし、私が──三人歯(オドン)を追跡していた場合、残ったヴェール達にこれを使われていただろう。


「ふ、防いだだと!?」


「だからよぉ~……私は、お前を殴る権利があるんだぜぇ~……」


 私はマンバにゆっくりと近付いた。


「や、やめ……あの威力で私、ヨボヨボの老婆を殴ったら間違いなく死んでしまう……!?」


「ディーッシュ!」


 とりあえず出してみたかけ声と共に、マンバの腹に一撃。


「うぎゃあああああああ──……あれ?」


 マンバは無事、その場に立っていた。


「い、痛いけど……死んでいない……」


「あの料理はよぉ~……特殊効果が“守備力上昇・中”だったんだわぁ~……」


 二発目を繰り出す。

 次は胸部に激しく衝撃を与える。


「ぐ、ぐほっ……い、痛い……けど大丈夫……」


「だからもう、鉄のように硬い身体を持つお前は、ヨボヨボのババアじゃあ~無ぇーよなぁ? つまり──」


「つ、つまり……まさか……まさかああああああ」


 執事長は顔の前で拳を握り、指の関節をポキポキと鳴らした。


『フィロタスからの、拳の給仕を喰らえ』


 私は、身体の主導権をフィロタス本人に戻していた。


「感謝致します、ジス殿ぉぉおおおおおおッッッ!!!!」


 目にもとまらぬ早さで打撃が繰り出される。


「アラララーイッッッッ!!!!」


 この言葉の意味は“軍神アレスの加護を”だ。


 放たれた超速連打は、まるで鉄拳によって創られた軍勢の槍壁。

 マンバは本物の背後の壁と挟まれ、断末魔の悲鳴を上げた。




「さてと、こちらは片付きましたな」


 壁ごと吹き飛び、痙攣しているマンバを見下ろしていた。


「ですが、ヴェール様が心配なので、今すぐ──」


 その時、地面が揺れた。

 地震……ではない。

 地の底から何かがメリメリと、せり上がってきたのだ。


『やっぱりまだ隠し球があったか。フィロタス、追うのはこのデザートを平らげてからだ』


「こ、これは……」


 マンホールサイズの地割れが、どんどん広がって盛り上がる。


「……グフッ、ごふっ。──は、ははは!! ハッハー! 金の力で死ね! 世の中、金だ! 金さえあれば、私は力を、地位を、そして国さえ手に入れられる!」


 かなり規模の地割れによって、倉庫が崩れ始めた。


「金! 金! 金! あの“赤眼”の情報が確かなら! つい先日蘇られたメデューサ様! きっと、きっとこの私の金の力によって本当の──」


 マンバの上に瓦礫が落下。

 広がる血溜まり。消える声。……どうやら呆気なく死んでしまったようだ。

 何かを言おうとしていたが、今はそれを考えている時間は無い。


「金に魅入られた者の末路、か……」


『──フィロタス。今はいったん避難だ』


「仰せのままに、ジス殿」


 子供を守っていたエリクも引き連れて、倉庫の外へ移動した。

 そして、距離を引いたからこそ見えた巨大な存在。

 頭上に向けて、口から広域熱線のようなモノを発射、地面を溶かしながら登ってきた。


 ──それは全長15メートルはあろうかという、蛇の下半身を持つ機械巨人だった。

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