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Melt of Border~蒼の戯れ、朱の叡智~  作者: Sigeno@GSX
Lv.1:異世界入門
4/10

兄、整える

兄側の第三話。

ブルームさんの出番ほぼ無しっ!(


あとこれ、一回データ飛びました(白目)

ルーゲンシュタット。


周辺大都市一帯の中心に位置し、貿易の中継地点を担う市場都市。歴史は長くないが、その位置の利点を活かして貿易によって栄え続けている。


その規模と人や物の出入りからか、検問の類は魔法で自動化されている模様…


「へー、検問は魔法でやってるのか。」


どういうシステムかは分からないが、蒼河が通れる事を考えるとID等では無いらしい。…犯罪者を炙り出す為の物だろうか。


中へ入ってまず目に飛び込むのは人の量。どこもかしこも商売の為にあるような店構えであり、外のカフェテラスでも何か商談が行われているようだ。


近くを覗き込むと銃を売る商人がいた。身長は高くないが、こちらから見て椅子の奥側に置かれた箱らしき物はとても重々しい…一応この人の事は覚えておこう。


「よう、この街は初めてかい?」


突然後ろから声がかかる…

てか肩にいきなり何か置かれたぞ!?


「あ、あぁ…田舎者なんでね。」


肩に置かれた何かを軽く払い、その巨体を見る。

オーガ…だろうか、明らかに違う身長に少し下がる。さっき置かれたのは手か…デカい。


粗暴そうな見た目ではあるが、眼鏡を掛けている姿を見るに何かの鑑定職だろうか。


「あんた…名前は?」

「俺か?俺は【ガルム】って言うねん!」


ガルム…現代訳は狼だったか。それにしても、会話が出来ると言う事は日本語か日本語に似通った言語なのか。どちらにせよ好都合だ。


「そうか、俺は雷藤蒼河と言う。…早速聞きたいんだが、金を増やしたい。何か良い場所はないか?」

「ふむ…」


ガルムは目線を少し上げ、目を細くする。


「本当はそのダズルライガーを売るのがいいんだが…他の方法なら確か酒場でやってたな…でも、骨の髄まで搾られてしまうかも知れんぞ?」

「何故だ?」

「実は最近妙に強いギャンブラーがこの街に来てなぁ…何人か破産しちまったのさ。」


つまり金を増やすのに手っ取り早いのは賭博か…貿易都市でそれはど…いや、逆に好都合だ。


「構わん、案内してくれ。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

案内されたのは少し裏に入った所にある大衆酒場のような所。どのテーブルも何かしらの賭けに使われているが、奥のテーブルには一人を除き座っていない。


「一番奥にいる赤いコート、あいつさ。」


赤いハットを深くかぶるそいつの表情は、伺う事が出来ない。しかしゲーマーの血が騒ぐ…こいつ、異能力者なんじゃないか。


「オーケー。早速という訳にはいかなそうだし、他のやつから相手だ。」


酒場中に聞こえる音で言うと、それに釣られた賭博者達がこちらに向き直る。


「待て待て、初心者で相手できるプレイヤーなんてここにはいないぞ…」

「俺が賭けるのはこの命、金、ペットのダズルライガーだ。あんたらが差し出すのは同じような財。勝負したいやつは出てこい!」


ダズルライガーという言葉が最も旨みがあるらしく、まずは数人が名乗り出る。


「悪いが俺は賭博でルールを知ってるのがポーカー

しかなくてな、それだけに絞らせてもらうぞ。」


テーブルを一つ空け、店員にディーラーを任せる。


「ルールは同じ。イカサマ発覚は即敗北…さてと、

やってみようか。」


5枚の手札が配られ、手元に揃ったのは♠︎の

ロイヤルストレートフラッシュ。

偶然とはいえ幸先がいいとはまさにこの事。一戦目は手札を変える事もなく、思い描いた最強を見せつける。


絶望に歪む者、イカサマだと言って言いがかりを付ける者、その他諸々。一人が敗れるとそこからは入れ食いもいい所。一人、また一人と蒼河に挑み、それが負ける度に音をたててテーブルに膨大とも言える財が積まれていく…中には女を賭ける奴まで出る始末。


20人程度倒した所で、奥の赤ハットが立った。


「ん?」

「…」


指を動かしながら、来いと誘う赤ハット。誘いに乗らない理由なんて無い。テーブルを退けつつ、奥の

テーブルへと向かう。


「…」

「さっき見てたと思うけど、俺はそこらとは別格だと思うぜ?」


カードを持って店員がこちらへと足を運ぶ。

未だ俺は能力を使わないまま戦っているが、コイツははっきり言って未知数…果たして何が飛び出すやら。


現時点での所持金が548141セディナ、一発勝負は

何かともったいない。


「今回は三回勝負というのは、どうだ?」

「…」


無言で頷く赤ハット。言葉を発さないあたり、

声に何かありそうな気がする。

店員によって配られる5枚のカード、♣️A,♡3,♦️4,♣️5,♦️8と…ノーペアもいい所である。

3,4,5,8を変えてドロー…柄が変わるだけとは、

酷いヒキだ。

三回勝負にして良かったと心から思う。今ので賭け金が少し吐き出されるが…


「ファイブカード…だと?」

「…」


ハットの下の口が吊り上がるのを感じ、目線をハットのそれとおぼしき気配に重ねる。目がピリピリと痺れる感覚に襲われるが、同時に一つの決断を後押しした。


(能力の試験運用…絶好の機会だな。)


イカサマ師…それは統治者から渡された、神託のような位置に置かれたスキル。説明の記述や詳細も無く、一見してみれば詐欺師と同じ。だが蒼河は考えた。

記述が無いなら、作ってしまえばいいと。


「悪いな赤ハット、ここからは全力で相手を

させてもらうぞ。」

「…?」


スキルの効果を実感出来るのは俺のみ。2ターン目に入り、その手札は最強に変わる。ロイヤルストレート

フラッシュ…これに勝てる役は、ファイブカード以外存在しない。


テーブルに置かれる5枚のカードを見て赤ハットが

初めて口を開く。


「…ない」

「ん?」

「有り得ない…こっちの手札にはAが4枚ある、お前どうやってこれを揃えた?」


ほう、どうやらイカサマがいきなりバレてしまった

ようだ…が、詰めが甘い。


「もう一度確認してくれ、そのカードは…

本当にAなのか?」

「なのかって…当たり前だ、ここにあるのは…!?」


その手札にあったのはAのフォーカードでは無く、4のフォーカードだけだった。


「…。…!?」


すり替えて勝つなんて甘い事はしない。賭博における暗示を含め、潰せる時に潰すだけだ。


「4のフォーカード…これがどうやったらAになるか、教えてくれるか?」

「…っ」


初めて感情を顕にするのを見たが、ハットは能力を

フルパワーで使っていたと伺える。結果から言うに、こいつの能力は運操作…もしくはそれに関わる何か。


一戦目も二戦目も初手の引きがあまりにも悪い…が、恐ろしいのはこれがイカサマであってイカサマじゃ

ない点。相手からすれば死神に等しいが、

観客からすれば引きが悪いだけとなる。


一方蒼河が行ったのは完全なイカサマに分類されてしまう。バレてしまったら…いや、バラすことがもしも出来ればだが。


「他人から見てどうだよ、今のはイカサマだろ!?」

「何か証拠は、あるか?」

「っぐ…」

「もうチェックメイトなんだよ赤いの。運なんて

チンケなもんに頼った時点で、俺に負けてる。」


最早底も知れたが、こいつは雑魚の部類ではない。

だが次のゲームも俺の負けは揺らがないだろうし、

意識もどこか落ち着きを失っている。


「…降参だ。」

「ふむ、賢明だな。」


静かな決着。いきなりスキルを使う人間と戦う事に

なるとは思わなかったが、この能力…賭博なら負け

無しになる。今まで選んだ転移者もこれは出来たことだろう。


安堵のため息をつきながら、蒼河は一つの提案を

持ちかけた。


「なぁ、俺と聖域を作ってみないか?」

「聖域?」

「お前が思うような重いもんじゃないぜ?そうそう…お前が女なの笑った時点で知ってたから。」

「っ!?」


提案というか、脅迫か。要約するなら…

中身分かったし、バレたくなきゃ付いてこい。


彼女がそれを聞かないはずもなく、二つ返事で蒼河に加わった。…場所を移す。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

大通りのカフェへ足を運び、メニューの写真で適当に旨そうな物をいくつか頼む蒼河。


その前には先ほどのハットが座っている。


「…お前とのポーカーをどうこう言うつもりはもう

無い。けど、最後のあれはどうやったんだ?」

「あぁ、勿論イカサマだよ。とっくべつ上物のな。」

「やっぱりか…手札をすり替えるなんて人間技

じゃないぞ。」


質問はやはりポーカーの事…まぁ連れてきたのは蒼河だが。彼女曰くこのようなイカサマを使う人間に

出くわした事がないそうだ。てか、使った本人

も見たことない。


「でも出たとこ勝負な感じは否めないけどな…悪い

けど試験運用って所だな。」

「お前…自分の命も賭けてたのに、試験運用だ

ったってのか」

「そうだが?ここで負けたら俺はその程度って

思ったしな。」


自然に出たとは思えないこの言葉に、その女は

笑い出した。


「…っくく、あはははは!」

「!?」

「アンタみたいな面白いの初めてだぜ、自分の命賭けて試験運用とか、ばっかみてぇ…ひーひひひ…」


そこまで笑わなくても…と蒼河が傷ついて凹んだ所で、女の方から口を開いてくれたようだ。


「あぁ、悪い悪い。俺はアレサって言うんだ、よろしくな?」


ハットを取り、その顔が顕になる…美人なのだ。

蒼河が正面見てていいのか自己嫌悪に陥る位に。


「と、とりあえずあれさんいいぶきやはしりませんか」

「誰があれだ…武器屋って言っても、銃くらいしか勧める物がないぞ?」

「銃…」


その言葉に心踊ったのか、蒼河は頼んだ物が来ても話を続けてしまう。そして食事を済ませた後…彼はその店へブルームを走らせた。


店に入るなり呼び鈴を三連で鳴らす。


「そんなに連打すんじゃねえよ…んで、用件は?」

「ここにある特注のマグナムを売って欲しい!」

「とく…まさか、あれか?」

「あぁ、是非!」


身長の低い店主に食ってかかる勢いで一気に話す蒼河…それを見たアレサの表情はドン引きの具現であった。

奥からワゴンに乗せられ、少しだけサイズの大きな

銃が現れる。


「ついに…こいつが旅立ちを迎えるか…」


名残惜しさと嬉しさに泣く主人を見て、アレサの心に少しだけ申し訳なさがこみ上げる。だがしかし

彼女は別に何もしていない。何かしたのはいきなり

畳み掛けた蒼河だ。


「え、えーっと、おいくらで…」

「値段は178,200なんじゃが…見るに銃をちゃんと

触った事がないと見える。」

「まぁ、確かに…」

「…よし分かった、この弾とケースも付けてやる!」

「うおぉ、マジか!」


差し出された腰ポーチのようなケースを見て、蒼河は感激しているような様子に見えた。先ほどのポーカーで巻き上げた金

を惜しむ様子も無く差し出す。


「ち、ちょっと待った!アンタ貯めたりとかは

しないの!?」

「え、なんで?」

「なんでって…」

「…金は天下の回り物なんだ、知ってるかお前?」


そう言うと蒼河はその銃と弾…そしてケースと手入れセットを買い取る。外の試射場で試し撃ちをし、蒼河はこの銃の威力を存分に堪能してから店を後にした。その横に、腰に、新たな相棒を引っ提げて。

蒼河ステータス変動


【武器追加】

ライオットマグナム(銃/パッシブ:無/装填数:5,5/5,5)

「二発同時発射機構を備えたダブルバレル式スイッチトリガーマグナム。同時に放つ際、反動を互いに殺しあう事で低反動高威力の両立に成功したルーゲンシュタットのガンスミス至高の品。フルオート機能もあるが、連射速度が速すぎる上に弾が散る故、セミオート推奨との事。」


【持ち物追加】

バレットケース(容量:1000/2000)

改良型RM弾×1000(銃弾/パッシブ:斬属性)

「ガンスミスが開発した新型マグナム弾。1発1発が

魔法で鍛えられており、標的を易々と貫く。」


【所持金変化】

2217セディナ→427141セディナ

─────────────────────

ステータス


【名前】

アレサ・ヴィクトリア・アストゥール


【種族】

ハーフキャット(半猫人)


【スキル】

祝福

└デビルズブレッシング…至近対象の運を操作する

属性対抗力

└アンチダーク…対魔族戦闘力を向上(中)


【武器】

仕込みデリンジャー(銃/パッシブ:無/装填数:2)

「髪等に仕込める極小の銃。装填数こそ少ないものの、近距離であれば魔物の腕や足を吹き飛ばすほどの威力を発揮する。」


【防具(服)】

長つばの赤ハット

赤光のロングコート(パッシブ:存在詐称)


【持ち物】

デリンジャー銀弾×50(銃弾/パッシブ:聖属性)

「デリンジャーに合わせて作られた銀の銃弾。アンデッドに対して少し大きいダメージを与えられる。」


【所持金】

574000セディナ

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