兄妹、飛ぶ
本当に初心者なので、書き方に関してオブラートに御指摘ください…
この世界には二つの人種が存在する。
一つは社会に適合し、自分の生きる環境を得る者。
一つは、社会に適合せず、頂点か破滅かに向かう者。
そして彼は言うなれば後者、その破滅側だろう。
家から出る事も無く、自身を腐らせながら
ゲームに興じる男。
名を、蒼河。
職業、言うなれば引きこもり。
顔は悪くないのだが、口から飛び出すのは
毒ばかりなのである。
…と、社会不適合もいい所だが、彼には唯一誇る物があった。それはPvP系のゲームに限定された、一種の
未来予知のような物。
彼のPNは噂が付き続けており、彼が動けば
そのチームは勝利すると言われる程。
そんな彼が異世界に飛び、噂が現実として具現化した理由。それは、とある広告だった。
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日本時間【8/18 11:24】
平日の朝からオンラインゲームを開く蒼河。
そのゲームで使うキャラは鍛冶ビルドと呼ばれる物で、彼は珍しく戦場という場所から離れた世界を
楽しんでいた。
【あ、これで大丈夫です!あざーす!】
以前注文された属性付き片手剣を作り上げ、依頼主に送信。感謝のチャットを聞いて 【お疲れ様、前に
突っ込みすぎるなよ】とだけ打ち、自分もログアウト。
だがそのログアウトが、転機を引き込んだ。
軽い電子音が鳴る…メールだ。
URLが貼り付いていて、そのタイトルは
《異世界に生きてみませんか?》。
言葉に飛びついた蒼河。…いや、飛びついてしまった彼は注意書きもすっ飛ばし、そのメールのリンクへ飛んだ。
そのサイトの名は「異世界製造所」。
中二なネーミングだったが、面白そうだからやって
みるらしい。…大胆にも程があるだろうに。
情報の入力欄を開くと、たくさんの情報が並ぶ。
どんな世界観がいいか。能力、歳、身長関係。
果てには血縁関係…どこまで聞くつもりだろうか。
そこまで入れ終えた時、メールがまたも届く。
【件名:転送準備完了のお知らせ】
件名を見て彼が咄嗟に思い出したのは、2個前のゲームをこんな感じでアカウントを作った記憶だった。
「お、これ新しいゲームだったか。」
メールを開くと、麻酔をされたような感覚に陥る。
麻酔というのは少量なら人は意識を落とさないらしいが、その脱力感は全身麻酔を彷彿とさせる程の感覚があった。
何、え、意識が遠───────
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…この世界には二つの人種が存在する。
一つは社会に適合し、自分の生きる環境を得る者。
一つは、社会に適合せず、頂点か破滅かに向かう者。
彼女は言うなれば後者、その頂点側だろう。
中学生で、アメリカ某大学の研究に興じる女性。
名を、朱奈。
職業、誰が見ても間違う事の無い研究者。
IQ237の天才であり、美麗、しかもスポーツ万能。
…と全てを兼ね備えていたのだが、彼女は唯一の欠点があった。それはほぼ会話が出来ない事。正確な事を言えば兄以外と。
幼少期からその頭脳は成長を続け、小学生にして東京大学を主席で卒業してしまう。
面接では試験官から出された研究に対して参加を表明し、研究をほぼ単独で完成させたという記録がある。
そんな彼女が異世界に飛び、現実が噂として具現化
した理由。それはとある実験だった。
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日本時間【前記同刻】
大学の研究室に籠って連日ほぼ無休で実験を続ける
朱奈。右手に試験管、左手に研究記録用のノート。
ちなみに、彼女が行う日常のやりとりは
「朱奈さーん、ごは」
「今忙しいので結構です。」
程度である。
さて、彼女が行っていた実験は重力回廊…いわゆる
ワームホールに近い物の研究。完成間際だが、彼女はここで悩んだ。
(今までの研究からして、これは完成させるべきじゃない。歪んだ空間から何が出るか分からない。いや、でも…)
そこまで考え、左手の関節に痛みが走った。指が麻痺してノートを取り落とす。床に落ちたノートは、あるページを開く。
…朱奈の境は、このページに興味を示した事だった。
【次元反転回廊論】
いわゆる三次元世界と二次元世界をひっくり返し、
アニメや空想と現実を入れ替えるという実に嘘くさい論文…
しかしその論文に惹かれた朱奈は、自身が手にしていた試験管がノートの一文をそのまま表してしまった物である事に気づく。
これが兄貴なら即座に食いついて行くだろうし、自分だって止めようとは微塵も思わない。
やり方を知らない故、書かれた方法を使う。すると
回廊が本当に開いた。しかし、行先不明の回廊に
吸われるのは誰が予想しただろう。
朱奈は両手にノートと試験管を持ち、財布をポケットに入れたまま、兄と同じく異世界へと渡った。