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慧充傳  作者: 大友うさぎ
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妻と妾

沈尚宮は皇后の側までやってくると彼女に耳打ちをした。そのとたんに皇后の顔色が変わった。長公主は皇帝の女関係で何かあったのだとすかさず思った。尚宮が皇后に耳打ちするときは必ず皇帝の女関係の話であったからだ。皇后は立ち上がると長公主らに小さな声で謝り、亭を後にする。林惠と沈尚宮も後に続いた。回廊を歩きながら、皇后は沈尚宮と話した。

董舜英(とう・しゅんえい)を妃嬪に冊封しろというのは本当なのね?」

「皇后さま、さようでございます」

「陛下は下級の身分では嫌だとも?」

「恐れながら…」

皇后はため息をついた。この後宮には皇后を頂点として、皇貴妃、貴妃、妃、嬪、昭儀、昭容、貴人、美人、答応という階級が存在している。しかも、嬪以上が皇帝の妻という身分を与えられて、それ以下は妾か愛人という扱いであった。つまりは皇帝は董舜英を妾や愛人でなく、妻としたいのである。しかし、皇后は女たちの秩序を壊したくなかった。後宮には細い糸のような秩序がある。それが切れた時に一気に不満の雪崩がおきるのだ。皇后は悩むしか方法がなかった。

「皇后さま、尚宮さま、恐れながら申し上げます。まず、董氏を正五品の尚儀になさってから、嬪にお就けになられたら如何でしょう?」

林惠の提案に皇后と尚宮は顔を見合わせた。彼女を正五品にすれば、それ以下の品位にはできない。すると必然的に妻としての位を与えることができる。まさに、名案だった。

「沈尚宮、確か尚儀の位は今は空席ね」

「さようでございます。今は私めが兼任しております」

「わかりました。職務は兼任して、尚儀の位だけを董舜英に与えましょう」

こうして、秩序と調和を保つためとして董舜英は正五品、尚儀となった。本人は上級女官の尚儀という位よりも、貴妃になりたかった。しかし、いきなり宮女が貴妃になることはできないと頭の片隅ではわかっていた。だが、皇帝の寵愛でなんとかできるものだと思いこんでいる部分もあったのである。


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