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序章
泰定帝の元肅皇后が天然痘を煩い、亡くなった。雷の日であった。周太后は皇后の喪を待たずに新たな皇后を冊立するように懿旨を出した。これは泰定帝の意志を介さずに行われた。それと同時に康元林が皇后に処方した薬湯が誤っていたとして死罪を言い渡されていた。娘の慧充は父親の死罪を聞いて頭が真っ白になった。どうして良いのかわからずにいた。
そこに従姉妹の孫家から執事が駆け込んできた。
「お嬢さま、急いで都をお離れになってください」
「お父さまを残して都を離れることはできないわ」
「いいから!」
執事に手を引かれて屋敷を出た慧充は用意されていた馬車に乗り、都を離れることになった。この時、慧充は10歳であった。