ウサギはウサギでも誇り高いウサギです。※モンスターです。
やっと終わった。
西の森の奥にて。
途中、犬?オオカミ?どちらかは分からない頭と体をした人間の子供ぐらいの背丈のモンスターがやってきた。
トコトコ歩く姿は、愛くるしかったがこちらを発見すると俊敏な動きで私に刀を定まらせないように、ギザギザに、アクロバティックに走りながら迫ってくる。
私は、微動だにせず、動かずにじっと来るのを待つ。
そのモンスターは、私に向かって迫るが途中、ニタァとした表情になる。
気付いてるのだがな、
私は、頭上からナイフのようなものを持って襲い掛かってくるそこのモンスターと同種のモンスターを降りてくる前に、十数回ほどの突きをくらわせる。
さながら、針山に堕ちてくる咎人だな。
フェ、ハフっ!?
気づかれたとは思っていなかったようで、驚愕と焦燥の声を、私の頭上にいたモンスターはあげた。
モンスターは、重力に従って落ちてゆきながら、私の突きによる連撃を急所に当てられなされるまま蹂躙され、絶命した。
私は、モンスターが絶命したのを確認した後、もう一匹のモンスター、初めに襲ってきた方に向きかえり、すぐさま一閃した。
かのモンスターは、先程の人の?悪い笑みは消え去り、唖然としていたが、野生で培った経験から無意識にも手に持つナイフもどきで私の刀を逸らそうとした。
そのまま、モンスターはナイフごと横真っ二つに斬られた。
斬鉄。
鉄を斬る。
それぐらいのことは、朝飯前に私は出来る、そんなナイフもどきで私の刀を逸らすましてや防ぐことなどできるなどと思われるのは心外だな。
真っ二つにされたモンスターは、『えっ!?、マジで!?』的な表情でライトを見ながら逝った。
ライトは、血を拭い去るために、ピュッと刀を振って取り去った。
そして、ライトはある茂みに視線をやった。
その時、その茂みの中から、ゆっくりとした足取り?足跳びで透明度の高い琥珀色の大きな角の生えた、黄金色の毛と白金色の毛が七対三で入り混じった大きなウサギが現れた。
大きさが中型犬並もあるこのウサギ、ライトを見ながら悠然とした態度である。
まさしく王者。
普通のウサギじゃないぞオーラをプンプン出している。
完璧に、ユニークモンスターかもしくは中級以上のボスである。
このゲームでは、ボスは徘徊型と常駐型があるのでこのようなことは珍しくはない。
徘徊型の場合、モンスターの乱入が多々入るので厄介なのだが。
ライトは、このウサギを見て、目を見開いた。
このウサギ、ゆっくりとした動きで隙だらけに見えるが全く隙が無い。
そして、何より先程からのモンスターとは違う。
実は、森に入り視線を受けていたライト、気づいてはいたものの位置が特定できなかったため対処できずいた。
間違いなくこのウサギだ。
ライトは確信をもってそう思った。
このウサギは、その私の戦闘を見ていて、なおに私に挑んできている。
私の実力を知ったうえでの決闘か。
奇襲してこなかったのが良い証拠だ。
普通なら、とっくの昔に私が気を抜いた時点で襲い掛かるだろう。
そいうことだ。
真剣な一対一を望んでいるとみて間違いなかろう。
なんという誇り高さか、なんという蛮勇か。
面白い、そして強い。
分かりやすい比較で言うとレンヤが、例え10人いたとしても軽くあしらわれるぐらい。
ウサギと聞いてふざけた茶番に見えるかもしれないが、ライトにしても、ウサギにしても本気である。
「......いいだろう、受けて立つ。」
ライトもこの誇り高きウサギに礼儀と誠意をもってそう答える。
次の瞬間、ウサギとライトは、互いに消えて見えるほどの速さで迫り、両者に激突した、ウサギは角で、ライトは刀で。
次々とウサギが、無数の火の蛇、氷の槍、光のレーザー砲、風の刃、水の銃弾、雷獣などを繰り出している。
一流魔術師・魔法使い真っ青の構築速度、錬度、規模である。
対するライトは、刀でもってそれ打ち払ったり、紙一重でそれを避け何度もウサギへその刃をとどかせ、攻撃している。
ウサギも避けはするものの、次第に傷ついている、それでもライトの刀の攻撃を角で受け流し防ぐ。
互いの攻撃速度、反応速度、速さが尋常じゃない。
しかしながら、長時間戦りあううちに、ウサギの体は着実にきずつけられている。
ライトも、自身は体に傷一つ負ってないが刀がボロボロに刃毀れしてしまっている。
元々、錆びた刀なので当然の成り行きであり、いままでよくこれなかったものだと思うが。
なので、刀の耐久値がそう多くない。
おそらくは、一撃でもいれれば簡単に砕けてしまうだろう。
ライトもそれは何となく理解していた。
ウサギも思った以上に弱っているようだ。
次の攻防で全てが決まる。
両者は、同時にとんだ。
しかし、明らかにライトの方が動きが良い。
ここにきて力を出せなくなったウサギ。
それが、分かりながらもウサギは全力でかかる、王者の誇り、強者のつよさそれ故か。
両者がぶつかり合う時、ライトが信じられない行動にでる。
ウサギ目がけて刀を投げた。
ウサギは、それを見ながらも防ぐことも避けることもできずにいた。
ウサギは、くるべき死に備えて目を閉じた。
一向に来ない。
不審に思ったウサギは目を開けるとそこには凛と立つ無手のライトがいた。
外したか。そう思ったが即座にその考えを切り捨てた。
この者が、外すわけがない。
今見ても分かるほど気力に満ち溢れている。
ならば、何故?
後ろをウサギは見て固まった。
後ろには、あの者の刀が刃だけだが突き刺さり脳天に貫かれてウサギに爪牙を向ける、こと絶えた地竜がいた。
なっ.........!?
自分はこの者に完全に負けてしまった。
ウサギは心から敗北を味わった。
そして、この者に負けてよかったと思った。
私は、今ウサギの棲み処たる大きな大樹の前にいる。
ウサギは、その大樹の根の隙間に入りないか探している。
それにしても、この大樹は私に一つの思いを抱かせる。
壮大。
まさしく、そう感じさせる。
私は、この大樹に敬意をもって一礼した。
ウサギが私の方に来た。
何かをくわえている。
そしてそれを私に渡してきた。
刀!?
それも名刀だ。
素晴らしい。
見つめていると画面が出てきた。
呪・妖刀 ムラマサ
Str+4000
Int+200
耐久値12
血療の耐久 効果 強者の血を吸えば吸う程に耐久度が上がる。固体の強さにより変動。とり殺される可能性がある。
狂鬼 効果 心清い僧をも狂わせる。個人差がある。
呪の刻 効果 呪の打ち払い、呪の付与、呪そのものの御業を使える。個人差がある。
これは、いいものだ。
問題なく使える、錆びた刀はStr+4だったがこれはその1000倍だな。
素晴らしい。
ウサギを見るとやるといっている。
伝わる、嘘じゃない、一応頷いてもらったんだぞ、嘘じゃないぞ。
渡し終えたウサギは、大の字に倒れ、首を見せながら、殺せと私を見つめて伝えてくる。
クリクリしたつぶらな目で。
これは、先の戦いで自分は負けていたといいたいんだろう。
「私は、先の戦闘でどういった経緯でも自分の獲物を無くしてしまったんだ。
あの勝負に勝ち負けは存在していない。だから、意味なく死ぬな。」
私は、スラスラとそういった。
すると、ウサギは驚いたような表情で(よく分からないが)、立ち上がりうむと頷いた。
そして、何かひらめいた雰囲気で私に目を向けてきた。
「私についてくるのか?」
「ピュッ」
そうだという風に答えた。
悪くない。
戦友か、いい出会いをした。
「よろしく。」
「ピッピ」
こうして一人私は相棒を得た。
評価・感想よろしくお願いします。