終息
皆さん、おひさ!!
はい、どうもすみませんでした!!更新が遅くなりました!!
ま、そんな話はいいじゃない!!人間だもの仕方ない!!
と、いうわけで、ここまでのアラスジ
ライトはウサギに出会った。
ライトはウサギを仲間にした。
ライトは大型ボスと戦った。
ライトは大型ボスを見事倒した。
ライトは探索をした。
ライトは大勢のモンスターを発見した。
ライトはモンスターたちを倒した、おまけに美少女がついていた。
美少女が仲間になりたそうにこちらを見ている。
ライトのスルースキル発動、無視。
美少女が自らを押し売りにかかった。
ライトは『イ・ヤ・だ』と拒否した。
ライトは探索した。
ライトは謎の集団に襲われた。←今ここ
「タッハ~、まいったよ。まさか、本当に一撃死んでしまうとは。」
復活したレニは反省の色もなくタハハと笑いながら皆に、すまんすまんと片手で謝意を示した。ライトに斬られるのは予想外だったが、あそこまで隙を突かれた状態で自分がやられたことで逆に吹っ切れる。
「自分も気づかれているとは思いませんでしたよ。」
「ふ~ん、で、どうなの?ボルト?」
ボルトがいつものニヤニヤした顔で笑う。レニはその余裕そうな面が気に食わなかったが、ボルトには策があるのだろう。
そう話しかけられてボルトも一段とニヤニヤ顔になる
「まぁ、相手を見る限り、一人かつ異常な攻撃力というのは言ってみればタイマンでしか使い切れようもないなと感じますね。英雄譚みたいにはいかないですよ。」
ボルトは、相手をボス同等の存在として見るのではなく、あくまでもプレイヤーとして見た。
何故なら、プレイヤーにできる範囲はモンスターや魔物などの人外的体の動きで攻撃をしてくるわけではない。
相手をキチンと見た結果は単純だ。
そして、明瞭。
見たところ、魔法、魔術は持ち合わせていない純粋な戦闘型。範囲攻撃は限られているはず。
「ということは大勢、集団でかかれば怖くないってことかな?」
「そんな単純に?」
ボルトの話を側で聞いていたスノウには先程からこちらはパーティー単位で動いているだけに、感覚的には既に行っていると思う。
一騎当千。
そんな状況が簡単に覆せるのか少々疑問だった為、あまり気乗りではないらしい。
それは、レニも同様で先程の相手に集団の利が効くとは想像できなかった。
あくまでも予想。
相手が一対一より多勢の方が強いのなら、逆効果だ。
「さて、自分もそれはやってみないと分かりませんがね。はっはー、まぁ、自信がなければできないでしょうが?」
ボルトは煽るような物言いで、やってみせようという気合をあらわにし、珍しく檄を入れる言葉を使う。
スノウもレニも、その意外な光景に顔合わせて笑いつつ、失った希望を取り戻す。
「ま、いざとなったらアーデル亡き今、俺が!!....あー、やっつけるぜ?」
レニたちと合流して、アクアに状態異常回復魔法を掛けてもらったジルは勇みよくそう言うが、実際のところあの侍と戦いたくないという気持ちが勝る、言ったはいいがやりたくない。
ノリで言ってしまった、どうしよう。
「誰も頼りませんよ、ジルさん。」
そして、横でつまらなさそうにピーチが毒づいた。
―ジルは痛恨の一撃を受けた―
ガックリとジルは膝を付き、手も地面に付ける。
いつもの調子に戻ってきたところで、レニが何かに咄嗟に気付いた。
「チッ、来るよ、陣形!!」
白い雪に相反して黒髪が色よく際立つ。
ゆっくりとした歩調で歩んだライトはとうとう敵の目前に来た。
「........。」
何も語らずただ無言で中段から刃を右上向き15度の位置に構えて風吹けば一緒に流れるほど自然体で待つ。
しんと静かに間が空く。
敵方も緊張した様子でじっと構えていた。
「何故、PKをする!!」
唐突に白頭、ユウがつっかかる。気に食わないと顔に出ているほど嫌悪している様子だ。
「仕返したまでだ、それ以外に何があるというのだ。」
声は淡々としていながら底冷えのするもので無表情でありながらその不機嫌さが窺えた。
殺すぞ?
ゾッとするような雰囲気、およそ殺気と言うものがライトから漏れ出し一人を除いて一同が本能的に身構える。
「ん、あれ?あの人どこかで見たような...」
そう、スノウは初めてはっきりとした形でその顔を見た時にPKの者が何処かで見たような気がするのだ。
早々あんな綺麗な顔つきをしていた人を忘れるほどスノウの記憶力は落ちぶれていないのにも関わらずにだ。
えーっと、ああ、もう......こういう時だけ物忘れってひどいわね。
ただ、物思いに耽っていたのは単にスノウだけではなかった。
「言葉を返すようで悪いが、PKされそうだったから、ということか?」
ボルトがやけに真剣な顔つきで慎重そうに声を掛ける。
ライトはボルトの方をちらりと見て静かに頷く。
真実かどうか見極めるためにボルトは相手をじっと見た。ダウト...ではなさそうだ。
「はぁ?アイツPKはしてないような感じだな。」
「ああ、オレも何だか違和感を感じる。おい、最近オレら以外にこの森で誰かに会ったか?」
ジルが言葉やニュアンスから、ライト自身はPKから身を守り防衛をしただけにすぎない、と思えてならず、ボルトもそれに近い感じを受け取っていた。
ボルトはそこでより深く真相を聞いてみる。
相手が嘘をついているかなどはお構いなしだ、ここでは情報だけが与えられればいい。取れるだけの情報を手に入れておけば、嘘でも本当でも、損と言うのはあまり起きはしない。
「この森で...か、ほう、そういえば誰にも......いや、待て。一人、赤髪の女にあったな。」
相手の方からぼろを出してきたことに驚きを示す一同。
だが、そこからの反応は分かれた。
「やっぱコイツか!!」
ユウのように相手への拒否反応を強く出す、アクアとピーチ、レニ。
「待てって、ユウ、急ぐな。お前その女をPKしたのか?」
それを宥めようとするボルトや未だ動こうとしないスノウやジル。
ボルトは話を先に進める。
ボルトの質問にライトはゆっくりと首を振り、
「必要があるのか?」
不遜な返事でそう切り返す。
いい加減、斬りたい。
ライトは表面は物静かな男だが、未だ15,6ほどの齢、感情が純粋に昂っている年頃。いうなれば自分の行動することに対する一身が強い。節操がない貪欲さだと思うが、純粋であるがゆえの感情は若き美しさがあるともいえる。
「マジか!?」
根はいい子のジルは相手の言葉をまともに受ける。相手の雰囲気が嘘を言うようなものではない。ひり付くようなプレッシャーを出す奴がそんな小物のはずがない。
だが、ユウなどはまだ完全には信じ切っていないので、疑わしい目でライトを見つめる。印象と言うのがどれだけ人にとって判断の基準になるか証明されると言うものだ。
顕著なその態度にライトも気づいてはいるが、傲慢なプライドにかけて、媚びたり、謙ったり、余計なことを口に出さなかった。
「嘘を吐く必要など私にはない。話は終わりか?」
ライトからの言葉には、信頼はなくとも、絶対ではあると言霊がある。
誰しもがそう考えるほどの強みが感じられる。
「....その女に何か言われなかったか?」
ボルトもまた相手の不遜な態度に何かしら信頼に近い、絶対性というものを感じたのだろうが、それだけでは理解し合うことはできないと踏んで推測を交えての質問を問うた。
ボルトにとっても相手とは争いたくはない、これ以上無駄な被害は避けたいが仲間に説明するには感情論だけが先走り論理がない、彼はそこが気に入らない。
ライトは先程まで憤っていた相手に馴れ合う敵に失礼ながら滑稽さを感じて鼻で笑い口元を少し吊り上げる。その様子は、透けるような色白の肌と血を啜ったかのような紅色の下唇が魅惑的で、まさに絵に描いたかのようだった。
「ふ、質問の多いことだ...そういえば、森から出られんから一緒について行ってくれと言われたな、断ったが。」
ライトは相手を倒すことを要求されている以上、相手となれあう気はない。
殺意のない制圧、享楽だけの殺戮、考えてみればPKに近いことをしているのかもしれないが今は置いておくとしよう。
「....成程な...そうか....あのヴィーナスさんならやりかねんだろうな。」
ボルトは閃きに必要なものが揃った。
パズルのピースの一つが分かれば推測は更なる推理を引き起こす。
ボルトの持ち味は曖昧な情報で脳内での客観とそこへクリエイティブな考えを交えてのプランの方向性だ。
色々な意味で彼は自由さがとりえなので時に鋭い考えを持つが、堅実性、現実性を欠いているのか間違いもするのが玉に瑕だ。
だが、今ある事実はほとんだ間違いはなかろうとボルトは自信を持った。
「ボルト、何か分かったのか?」
ジルがすぐさまボルトに聞く。
ジルがこうも焦り気味に聞くのは周りからの責められているような視線に耐えかねてのことだった。
一人で完結してないで説明ぐらいしてくれ、ボルトもジルの言わんとすることが分かり周りを見渡す。
周りからの物言わぬ威圧に堪らず笑いがこみ上げて、ハハっと最後に笑いボルトはいい笑顔で結論を述べた。気持ちのいいほど自分が最高だ。
「ああ、多分このPK騒動はヴィーナスさんの仕業だな、理由は逆恨み、いやがらせだろ。」
え!?
一同がボルトに驚きの目を向ける。
それもそのはず、ことの騒動はそのヴィーナスが襲われたことが原因なのだから。
何故、嫌がらせ?逆恨み?
話がかみ合わなすぎるし、強引過ぎてついていいけない、仲間である彼らでそうなのだからもしこの場に他のプレイヤーがいたらひと悶着もあったことだろう。
「おい、話は済んだはずだ。」
ここで唯一の部外者であるライトも相手が何か言い争っていることは窺えるが、彼にとって大事なのは相手と馴れ合うことではなくアーサーからの享楽の望みを早く終わらせる、そこに尽きる。
「ちょ、ちょい、待って、な、な!!もしかしたら戦わなくていいかもしれんのよ。OK?」
ジルの必死の言葉にも耳も貸さず無言を貫くライト、このままでは戦いが勃発してしまう。
そんな中、ようやくとしてスノウが自身の突っかかりを解いた。
「あ、昨日の一年生!!君、透原くんだよね。」
突然のこと、突然の話、何のきっかけもなく、ただ口に出すがままにスノウはライトのリアル名を口にした。
「あ、ああ、何故私を知っている。貴方は誰だ?」
本来ならばマナー破り、リアル名を晒すことはマナー違反の中でも注意すべきしてはならないことなのだが、ゲームやネットでのチャット、掲示板などをやったことがないライトにとってはそこは重要ではなくそれを発している人が誰であるかが今は大切だった。
「ここにきて、さらに新事実とか波乱万丈すぎですよ、ジル君困っちゃう♪」
別段、このパーティーは所謂身内パーティーであることから信用できないわけではないので無意識のうちにスノウも声に出したが、ジルや他の者にはまたも意味の分からない衝撃の事実が訪れて、頭がぐちゃぐちゃしている者が出てしまうほどカオスである。
「ということは高1なのか、この物凄いオーラの奴が俺らとタメなのか!?」
だが、結果だけ見るにスノウの発言はナイスだった。
ユウはパーティーには甘い為に仲間からの言葉なら安易に信じやすく、特にスノウは年上であるので信頼という意味では格段と上がる。
嫌悪の対象が興味の対象へと移った。
良い雰囲気が流れてきたボルトは、意外なスノウからの発言に衝撃を受けながらもある意味感謝を抱く。
スノウは霧がかっていた記憶が晴れて少々ハイになり周りへの説明もなしにライトへ返答する。
「私は生徒会長の学雪江だよ、昨日会ったでしょ?」
だが、この回答は鬼門だったといえるだろう。
ライトは昨日の気にしていたことを素直に、それは本当に申し訳なかったからこそ素直に、不慮の事故で接吻してしまったことを謝ろうとした。
「ああ、あの時の。あの時はすみませんでした、まさかキ」
素直すぎてドストレートすぎるくらいに....
「ああ、ウン!!それはいいからいいから!!」
ハイになったテンションも目が覚めるように覚醒し言葉を遮るようにスノウは慌てだす。
「そうですか、良かった。.....興ざめだな。アーサー!」
ライトはその焦って言葉を急いている謝意の受け取りに表情を少し和らげ、思案気な様子をした後、アーサーへ聞こえるように声を出した、特にどこにいるかは考えてはいないが聞こえるだろうとは思っている辺り、ライトのアーサーに対するイメージは凄い。
「ええ!!他にも仲間が!!何も引っかからないんだけど!!」
『貴公、こ奴らは貴公の知り合いのなのか?』
アーサーも突如として現れるので両方とも何かおかしい。それを察知しろとレニを頼るのはとてもとても可哀想だ。
「兎かよ!!」
あえてここまで指摘してこなかったがアーサーは一見すればただの角の生えたウサギ、愛くるしいその形はとてもアーサーの発する若く凛々しい声を連想できまい。
「一人だけだ。わけあって話を聞こうと思ってな。」
そう言いながらライトは刀を鞘に戻す。
『よい、面白そうではないか。その話と言うのがなんであるか聞こう。』
「あの人、ヤバくないですか?うさちゃんと話してますよ?」
「いや、テイマーか言語・意志系統のスキル持っているだけだろ。」
兎と喋る侍。
何か色々とヤバイ男だ、ピーチはこそこそとボルトに話しかける、ジルが近くにいて話しかけないのは、なんというか...まぁ...仕様だ、うん。ボルトはそのピーチの発言に苦笑しながら答えを問う。
テイマーはFLでは深く根付いている職業。
相手に餌をやり、力を示し、思いを伝え、貢物をし、契約をする。ありとあらゆる条件があり、モンスター、魔物、一体、一体に個性を生じさせるバラエティー、モンスター、魔物の知能や個性が豊富であるのはアルゴリズム方式で人の人格形成における性格の相違を徹底的にモニタリングし、誰と出会い誰と喋り、勝ち負け、競い合い、そのものの観点における基本値、理想値、実値。これらのこと細やかな些細な違いを見分けることで完成したノーベル賞に輝けるシステムがあってこそだ、モンスター、魔物にはこの簡易式が使われている。
その素晴らしさは、素人にも伝わるぐらい動物、自分の家族として愛せるもの。
最近の流行は騎乗型のものが多い。
「さて、私の方では面白い内容ならこの件を水に流すそうだ。」
「何その無茶振り!!」
「いや、許すとか、そっちも攻撃したんだしお互いだろ!!」
ボルトが珍しく驚いた様子で声をあげ、ジルが非難する。
「なら....」
異様な雰囲気を出しながら刀に手をかけるライト。
「いえ!!それで結構です!!」
ジルはピシッと姿勢を正してはきはきとした声で意見を覆す。
この人コワイ、この人コワイ。
ライトはフンっと鼻で笑って刀から手を離す。
「下らん問答だ。で、話してくれないか。」
「あ、ああ、まあ話はそんなに難しくはない。第一の条件なんだが、あんたが会ったのはヴィーナスと言う赤毛で魔法職の結構な美少女さん、これは間違いないな?」
「あの女の名など知らないがまあそれだろう、続けてくれ。」
「でだ、そのヴィーナスって奴な、結構悪女っていうか、性悪なのは結構有名な話で気に入らなかった相手はかなり汚い手で相手を貶めるんだと、あんた確かあの女の誘い、というか助け断ったろ?その時、あの女かなり忌々しい目で見られやせんかったか?」
「忘れた。一々表情など見てもないしな。」
ライトはボルトからの質問や話を腕を組んだまま首で首肯しながら会話を続ける。
「かっくいい!!」
ジルがライトをおだて、半分馬鹿にした声でパチンと指を鳴らす。
「口をつぐめ。」
「了解であります!!」
ジルは姿勢良くハキハキと答える。
「おい、侍、お前は何でこの森に入っているんだ?何か目的があるのか?」
「ない、ただ旅をしてみたいのさ。」
ユウが唐突にこの森に入った経緯を聞いてくる、声色は随分と柔らかになっているが未だ信用はしていなようだ。
「えっと、透原くん、君はどのくらいこのゲームやってるの?」
「三日、いや四日ぐらいですね。然程、やってはないです。」
スノウは一年はやっているのだと勘違いし、話をしていたが、あまりに短いライトのプレイ時間に一同驚きを深める。
「おま、4、3日!?」
「どうしてそんなに強いんだ?明らかに力が異常すぎだろ。」
核心につくボルトの疑問にライトは何を言っているのか分からず閉口する。
『おそらくは、神族と貴公にやった剣が原因だろう。』
「刀だ。まぁいい。おそらくは、この武器が原因だ。」
アーサーからの言葉を頼りに答えを言うと、納得の表情を浮かべながら好奇心の色を落とせない一同の津波が訪れた。
「ちょっとステ見して!!」
「情報プリプリ!!」
「刀触らせて!!」
「まぁ、少しぐらいなら、おい、盗るな!!」
ライトは群がってくるジル、ボルト、ピーチに無抵抗であったが、そこに付け込んでジルがライトの刀を抜き盗る。
「よし、これでオレが最強に、ノワワ、グルル、血、血、死、絶、欲シ、血ガァァァ!!グガッ!!」
変化は唐突に。
禍々しいオーラがジルを包み込む。
目の瞳孔が開き血の色へと変わり、肉体がありえない程膨張しだす。と、ライトは流れるような動きでジルの後頭部と首の付け根を躊躇いなく手刀で撃ち付け、ジルが怯んだうちに刀を回収した。
「人のモノを......触るな。」
ライトは甚く不機嫌な様子になる。
「グッ......っはっはっは、し、死ぬかと思った!!」
「お前、言うことはそれだけか?」
「す、すみません!!」
ジルは今更ながら自分の馬鹿さ加減に気が付いた。過去の自分、許すまじ!!
「死んで詫びろ。」
絶対零度の冷酷な視線で咎人を断罪するライト。
「本当にごめんね、透原くん!!この子には私からきつく言っとくから!!」
「本当空気読めない奴ね。」
「....粛清するのみ。」
スノウやレニもジルに呆れながらも助け船を出そうとするが問屋が許さないようだ。
殺すと決めたら、殺す。
「あ、じゃあ殴り潰すっていうのはどう?それなら死なない分何度もやれるよ?」
いい笑顔のピーチがサラッとえぐいことを言いだしてきた。
「おれからもそっちにしてもらえねぇか?今死なれると結構痛手なんだわそんな奴でも。」
ボルトも損得で考えるならそっちの方が良いから、できるならとその提案に乗った。
「ま、ジルが悪いんだし、ここはシャーねぇわな。とりあえず、殴られろ。」
ユウもジルのバカな言動には呆れかえって、いっそ殴られてトラウマ植えつけられろと酷いことを言いだしきた。
「ふむ、それで手を打とう。」
ライトもそれもいいと思い、手に力を籠める。
gggギュッッッ.....
「ジルくん、頑張って!!」
アクアの声だけが今のジルにとってのオアシスだった。
「あいるびーばっく....」
ゴキ!!、ズコ!!、ドコ!!、ボキ!!、ヌチャ!!、クチャ!!、ブシュッ!!、プシュー!!
「.....ジルハシンダ。」
チーン
灰になるジルは、顔こそ変形していないが心はフルボッコになる。だが、あいにくとそんな彼を心配する者はオロオロとする心優しきアクア以外居なかった、現実はいつも厳しい。
「何かいわくつきのものなんですか、その刀?」
ピーチが胡散臭げにライトの刀を見ながら聞いてきた。ライトはその視線がとても煩わしかったがこれ以上怒ると話にならないと思い、通常モードに移行した。
「ふむ、未熟な者が持てば狂気に囚われるな。」
「解放ルーツは、職業レベルか?いや、職業そのもの?何はともあれ...4、3日にしては色々と何かおかしい気がするな。」
「へぇ~、そんなものもあるんだ。」
一同は恐れ怖がりながらもその実、興味津々な様子で刀に目を向けた。
「妖刀の類だろうな、おそらくは。」
ある意味妥当、というよりそれしか無い答えをユウが言うと周りは納得の表情を見せた。
「誰もオレを労ってくれないのか....」
話がもう自分に向かうことがないと分かりつつもジルは言葉を出せざる得ないほどやるせない気持ちになり、なにくそとボルトやユウに悪態をつく。女性陣に向けないのは殺されるからだ。
そんなジルの怨念じみた視線を肩をすくめて笑いながらボルトは話をする。
「話の続きだ。ヴィーナスさんは姫プレイヤーだから高圧的な所が多々あり性格に難がある。そんな彼女が自分の些細な望みを受け入れてもらえなかったら、どう思うだろうか。」
既に答えは分かってるよなという問い、これの答えは現状的に言うと...
「まぁ、どうあれこうあれ心証は悪くなるわな。」
ユウは当然すぎて呆れた声で答える。
「それで逆恨みだ?強引すぎやしねぇか?お前ヴィーナス嬢の何がわかんの、ええコラ!!」
ジルは二人の華麗なスルーに積もり積もった憤慨を感じて勢い任せの口答えをする。
ただ一人の存在を彼は忘れていた。
「青いの、黙れと言ったぞ。」
ゴッ!!!!!!!!
ジルは脇腹にライトの回し蹴りをくらい、二メートルほど吹き飛ぶ、ユウたちはそれに何の違和感も感じずに話をしだす。
「でも、分からないわね。どうして、あの姫さまが取り巻きも付けずに西の森に入ってきたのか。いくら頭が悪くても西の森を一人で渡ろうなんてしないはずでしょ?それにいくら高圧的だからと言ってそんな暴論は彼女に失礼なんじゃない?」
「レニ....、貴女、まぁいいわ。」
レニの発言は表面的にはヴィーナスを擁護する言い方だが、意識してか、しなずにかライトを貶しているようにも聞こえてしまう、それをスノウは嗜めようとするがおおよそ無意識であるが故とどまった。
「強引かどうか後々として。彼女一人だったのについては要因ぐらいは察しがつくんじゃないですか?メビウスの遠征ですよ。」
まぁまぁ話は最後まで聞いてくださいよ、とボルトはレニに笑いかける。そのにやけ顔がレニの反論を呼んでいるのも知っているのにだ。
「なるほど!!」
スノウはボルトの話でピンと来たらしい、流石は生徒会長。
「あの遠征は失敗しているはずだろ?じゃなきゃ西の森の攻略なんぞすぐに出来るし。」
ユウの指摘通り、彼らメビウスは遠征に失敗している。そのことはブログや掲示板でよく話に出される話題出るからホットな情報で手に入る。メビウスの遠征は三日前ほどだが、掲示板の住人にしてみれば、古い情報である。
「問題はそこじゃない、遠征の失敗の原因だ。」
「そう、か。あの遠征では大多数が教会送りにされてたんだっけな。」
死に方の問題。
大同盟の負け方は二つ、ジリジリとやられるか、一発デカいので退場だ。
力の差が出やすいこのゲームで数で対抗するのは下策だと言われてはいるが数は多いほど差を埋めてくれる。しかし、だからこそ、大勢の力で簡単に倒せていた相手より少し力の強い相手が来ると瓦解してしまう。要は、数の力は思ったよりも脆いものだということだ。
戦いは数だよ!!は正しい言葉だが、数に地力はないことを気をつけるべきだ。
集の力あって個が活き、集を個で補う。これが第一である。
「それが、まず紅一点さんが生きていた理由、あの人はいつも安全な位置に置かれてるしな、危険と分かったらすぐ逃げるような人だし。」
大勢の利点その一。
切り捨てれば、誰か一人は助かる。
「運よく助かった所でこの侍に遭遇、そして見捨てられて逆上...」
ユウは自身でそう結論付けるがボルトはかぶりを振る。
「いや、オレはそうは思わない、言い方が不味かったな、それ以上の何かがあったと思っている。」
「それ以上って....」
何だ?とユウは思った。
「どういうことだ、ボルト?それ以上だとして、それが分かるのか?」
復帰したジルはボルトに早計に話を持って行く。ライトからかなり距離を取って。
「そもそも、彼女が多勢のモンスターに追われていることが異常だとは思わないか?透原くんだっけ?君は赤い髪の女の人がモンスターに追われているのを見たんだね、大体どのくらいの数だった。」
「...101だ。質はそれなり、あの女では1,2匹でも苦戦する程度だろう。」
西の森の奥にでるには相応しい厄介な敵であったのはライトも覚えていた。惨殺したんだが...
「うん。そう、彼女はそれぐらい多くのモンスターに追われていた。」
「はぁ?大多数でプレイしたら比例して多くなっていくのが常って前に検証されたじゃないか。」
ジルにしてみれば、同盟数の多い所では当たり前の話ではないのかと思えてならず、ボルトの意図が分からない。
「彼女一人が、だよ?可笑しいとは思わないか?」
「おいおい、まさか....いや、彼女が一人だけ追跡タグが付いて追われていた場合も......」
追跡タグ、モンスターが追ってきているという表示のこと。
追跡タグを他のプレイヤーに擦り付ける行為がMPKの一つである。基本的にモンスターが多数のプレイヤーの方に襲い掛かる性質を利用する。
「本気で言ってるのか?何度も言うが彼女は安全な位置にいるんだ、まさか大規模のギルドを纏めるリーダーが何の状況も考えず、もしものシュミレーションもせずに、ただ後方におくわけがないだろ。」
「彼女の親衛隊が守っているのが当然だろうね。」
カイザーは基本的にヘタレで気配り屋さんなため彼女への待遇を疎かにすることはできず、また同盟員も彼女へのアイドル崇高心が強い。そんな中でもトップクラスのエリートが親衛隊になる。ようは会員番号一ケタの称号が手に入ると言っても過言ではない。
「で、彼女は壊滅を前に戦線を離脱、親衛隊も同じく同行した。ここまでは、助かる希望はあっただろう、しかし道中何かがあった。親衛隊と一緒に逃げることもかなわない、彼らを切り捨てながら逃げるほどにせっぱ詰る状況が......」
ボルトの話は段々とデカくなる。
同盟の潰滅、敵の攻撃、大量のモンスター。
親衛隊と言ういわゆる強いものが倒される理由は孤立でしかない。それを行う程のモンスターが数多く現れたのか、それも都合よく彼らに襲い掛かって...
「モンスターに追われる、か俺らも...ああ、そうかボルトあの女、この森の数ある聖域におかれた黒真珠を持ちだそうとしたのか。」
ユウが毒づいた。聖域の黒真珠の重要さを理解しているがためだろう。ジルも懐かしそうに苦笑いした。
「黒真珠かぁ、ユウの師匠からきつく言われてなきゃアーデルの奴が持って行きそうだったもんな。」
ライトは彼らの話を聞いていて分からないことだらけ、それでも黒真珠が重要な物であるのは分かった。
「黒真珠は混乱を持って調和にする魔具の一種。然るべきところに置かれれば何も起こらず、動かせば混沌を招く、要は特定の場所ではモンスターの侵入を阻む休憩エリアにする効果を持つが、動かせばそれを中心にモンスターが続々現れる、えげつい奴だっけ?レア度も高かったよな?かぁ~まじかよ、ヴィーナス嬢~~~!!」
「俺の推測だ。だが状況を見ると、黒真珠をモンスター避けのアイテムともなりえるレア度の高いアイテム、それを見つけ動かしたが最後モンスターに追われアイテムをロス、踏んだり蹴ったりの状況だ。失礼な話、その怒りをぶつける対象にこの透原くんが選ばれたのだろう可能性が高い。」
「普通にPKされたってことはないのか?本当に?」
「彼はゲーム自体初心者だろうから、それはないと思う、だな透原くん?」
「ああ、よく分かったな。」
「リアル名を出してもゲーム内の名前を言いもしない所を見れば分かるよ。」
「で、でもモンスターだって倒してるんだから戦闘技術は...」
「それはそれ、これはこれ。初心者がゲーム内でPKをしようとする確率はほぼない、分かっているはずだろ?相手に勝手に押し付けようとするな、ま、とにかくここは争うのはよくない。」
「ユウくん、考えるのはボルト君の役目。」
「......ボルト...ゴメン。」
「いや、オレとしても納得のいく論証をしたかったけど、ユウを見てみるとできなかったみたいだな、反省だな。」
茶番劇のような話し合いにライトは興味なさげに見た。
ココだけの話、ライトがヴィーナスを助けていようと彼女が街に入った途端にそれこそ万単位でモンスターが襲い掛かってくるので未然に防げたのは僥倖だろう。
「この人の反応を見てみるにそんな悪い人でも無そうですしね。」
「何アクアちゃん、この人にホレちゃったの?」
アクアの人の良さを発言に、ついついイジメたくなったレニはニヤニヤした顔になる。
「ち、違います!!私が好きなのは、ユ......!!??」
「何々?ユ?何?you?ゆ」
アクアの打てば響くほどの反抗に、獲物を捕らえたとばかりにレニは更に囃し立てる。
「え、レニさん呼びましたか?」
本人には聞こえなかっただけアクアも救われた。
「いや、呼んでないわよ?」
「そうですか。」
「れ、レニさん~......」
目を潤ませているアクアにここにきて罪悪感が感じて、レニもしどろもどろになる。
「ご、ゴメンってば。泣かないでよ、もう。」
「許すまじ、リア充ユウ。」
「何がだよ、ジル...お前、最近ホント狩馬さんに似てきたな...」
「師匠の方がもっと凄いし!!もっと可笑しいし!!変態だぜい!!」
「いや、あの人根は真面目だから、お前よりマシかもよ...」
「ブルータスお前もか!!!」
てんやわんやと騒ぎ立てる彼らに、いつもなら雑音と思い目障りそうに目線を向けるライトも少々ながら優しい目で彼らを見た。
楽しそうだな、声には決して出ない、ライトの思いであった。
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