ん、身体能力が落ちた、よしこれで......
某アニメの自転車シーンを見て、自転車乗ってスピード出してたらチェーンが外れて盛大にこけちまったぜい!!みんな、気をつけてね。
西の森の砂漠エリアは通常の砂漠よりも温度差が少ない点においてはいい所なのだが、やはり魔の森?ということか温度による実害はないが、魔物や砂漠の自然トラップがそこらじゅうに点在している。
『貴公そこは......』
「分かっているが、然程の障害でもなさそうだ。直接受けずに通ればこちらの方が、近い!!」
ライトの歩いている何も変哲もないただの砂の野を突然として指摘をするアーサーだが、伊達にリアルチートなライトさんではない、空間把握は近い範囲ならば殆ど完璧に出来るほどには慣れており、指摘されるまでもなく目に見えない罠には気づいてはいたが先程からこの手の罠のせいで遠回り遠回りと煩わしかった。
いい加減うっとおしい!!
その心情を行動で体現するかのように自ずから罠の中に飛び込んだ。
ライトが踏み込むと同時に砂場が崩れ始める、そして崩れた地面がゆっくりと次第に早く渦を巻きながらある一点に落ちていくその砂の渦の真ん中にはアリジゴクを巨大化させたようなモンスターが現れた。
ライトはそのモンスターに冷淡な目を向けるとそのモンスターに向かって跳ぶ。
そして、そのモンスターを足場にし容赦なく躊躇いなく蹴って罠の範囲から逃れていった。
その光景を目の当たりにしたアーサーは呆れ交じりの溜息をしながら風の魔法を使いまるで風に乗ってライトの場所へとたどり着いた。
『まったく、少し乱暴すぎはせんか?』
アーサーは冒険の風流が分かっていないと嘆くかのようにライトに文句を言う。
砂蟹という魔物がその間にもアーサーに襲い掛かっては遠く彼方に吹き飛ばされている。
「すまなかったな、少々...面倒でな。」
砂鮫の群れが統制の取れた動きでライトへと襲い掛かるが、それを紙一重で悠々と躱しながらサメの開いた口から骨の関節の中の広い節目を沿うようにしてスッパリと切り裂いていき、ライトの息も乱せぬまま倒されていく。ライトはすべての砂鮫を討つと道着の襟を正しながら、先程の件について謝った、あまり謝意はこもってないが。
『分からんでもないのだがもう少し冷静に悠然と行動せい。』
さてっと一区切りついたことでアーサーは先程とは別の気になったことをライトに尋ねることにした。
『貴公、先程いや朝からにかけて動きに鋭さが増したが如何にしてか?』
確かにライトの種族神族と言うのは強力な存在であり、またライトにおいても見ただけでもある程度の技量は持っているのも分かる。だが、ジェネラル・ドロウスと戦った時、ライトの動きは本気であったのは確かであるはずなのに今は、それ以上にキレがあるというか、動きが倍速に見える。
そのことに、アーサーは不気味さを感じて思わず聞いてしまったのだ。
「動きが?...ああ、それは先程この世界の管理人?、まぁそんな輩から力が前より抑えられてるからじゃないか?自分でもなんか力が前より落ちたな程度にしか分からないんだがな......まぁ知らん。」
ツッコみどころが多すぎるライトの発言に考えが纏まらな過ぎてかえって無表情になったアーサーは、もはや思考停止間近にあるのかもしれない。
数秒の沈黙が過ぎた後、考えが纏まったのか、飛びかけた意識が戻ってきたのかアーサーはハッとした。
『色々と突っ込みたいのが、まずは、力が落ちているにも関わらず動きが良くなった原因からだ。』
「簡単な話だ。段階もなく飛躍的に伸びた力と言うのはとても扱いにくい、そういうことだ。」
人が極めた技である剣術、剣の為の技というよりも人の為の技、人の力は限りがあり、技は要するにそれをどう使いこなすかの動き方の方法に過ぎない。
根本にあるのは常に有限な人力。
確かに力が強くなるというのはいいことで人単体としての強さとしてはそれは良いことだろう。
しかしながら、武術、剣術の達人たちからすれば、ある程度の力、自分にとってのボーダーに達すると一切の余剰な力は求めないのだ。
考えるのは如何にして自身の制御をし、それを技の昇華、言い方を変えればキレの良さ、はたまたゲーム感覚でいうところの威力増大に変えるかだ、それを体を調整しながら模索する。
ライトにとって始めにあった体は全能感を感じるような素晴らしい力の素体ではあるが、自分の技量、思想、性格を考えると今の少しグレードが落ちた感じの力の方が丁度良く、とても扱いやすい。
もう少し先へと進んだらともかく今の段階ではただの棒ふりロボットに過ぎない。
それでも素人目からすれば十分なのだが。
『つまりは、運営と呼ばれる神の如き存在が少々異常な貴公の体を弄ったということだな?』
ライトからある程度の情報を聞きいれたアーサーは、冷静に収集した上で単純にまとめた。
「端的に言うと、だがな。」
『ふむ、そやつらも大概にいい加減な奴らだの。自分で作った世界の調整すら覚束ないとは。』
さして、運営と言う言われる組織に大した興味もないライトは素っ気ない感じで話している。対してアーサーにしては知識というモノが好きなだけに偉く興味を示し、意見を次々と言ってくる。
アーサーはここにはいない世界の管理者に物申すと言わんばかりだが、次第にその声もフェードアウトしていき本筋に戻る。
『して、身体の能力を抑えられている以外で何かいじくられた形跡はあるか?』
体の身体能力だけでも戦闘に支障をきたす...いや、ライトの場合は違うが他のプレイヤーからすればそうなのだ。ましてや、それ以外の箇所で欠損や害を及ぼすようなことをされていたら目も当てられない。
ライトはそのことについては歩きながら考えていたのだが、如何せんこの体のことを知らなさすぎる。
ドロウス戦の時のような意味の分からない事象が起こって意味の分からないままに終わっているのだ。
自身を知らない上で自身に何かされてないかと聞かれても始めからか後からなのか判断に困る。
「......この体になったのはつい数日なのだ...あまり聞かれても分からない。」
ライトは素直に自身についてのことを話すことにした。戦闘で混乱させたくない、何か分からないとなれば幾ばくかは心の準備もできるだろうライトはそう考えた。
「そうであったな。不思議だな貴公らたちは、成熟した体でありながらそれまでの過程はなく、なのにその体に定着していることがまさに、不思議だ。」
違う意味で話題が転換されたが、これもそれも未知なものに対する新たな好奇心、刺激がアーサーには何とも香ばしいからだ。
自身が魔法や魔術を知っているのだって初めは単なる好奇心、彼は思っている以上に好奇心の強い性である。
そんな彼の目の前に未知なものがいる。
なんと楽しい。
砂風が吹いた中でアーサーはウサギの顔で嬉しそうな表情をしながらキュキュと鳴いた。
ライトは点検するかのように体をチェックしていくが特に気になるような違和感と言うものない。
その様なことをしていく中でも砂漠はまだまだ距離がある。
疲れるということはないのだが、どこまで歩けばいいのだろうとさしものライトもそう思えてならなかった。
はじめての砂漠は実際相当にきつい。
温度差との戦いがないだけ彼らはまだいい方なのであるがそれでもだ。
「アーサー、あとどのくらいだ?」
『ふむ、流石に疲れたか?』
しびれを切らしたようにライトはさっそくアーサーに聞いてみたが、アーサーはそれを疲れからくるものだと思いちがいをしているようだ。
「この程度で疲れはしないが、目標があれば気分が幾分か楽になるから聞いたまでだ。」
ライトは祖父や一流の皆からのしごきや数年に一度ある門下一同集まっての総合修練会Summer Versionのことがあり、疲れと言う言葉は言葉よりも一皮むけている。
一度、想像を絶するほどの体験をしているとその時以下の緊張と言うものは大抵は平気になるのが人の神経の図太さであろう。
しかし、この砂漠では着実にHPというデータは砂漠のバッド効果として削られている。
ライト自身はそのことに気づいてはいないが、一応はこの森の長であったアーサーはキチンと状況を把握しており逐一自身とライトに範囲持続系回復魔法を展開しながらそのダメージを相殺している。
恐るべしタッグなり
その頃、西の森の門の前には........
「みんな、準備はできたか!!」
「「「「「「「「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」」」」」」」
「進軍開始!!」
メビウス総勢1479名(入団希望者で増加)西の森へ進軍。
「ギルマス、この布陣で大丈夫でしょうか?」
副ギル兼みんなのスケジュール調整係の女医ステーション(プレイヤー名)は我らがギルマスのカイザーに少しばかり不安げな様子で聞いてきた。カイザーは、この日の為に陣形についての勉強を少しばかりしてきた、それなりの自負は当然ある。しかし、それはほとんど人との戦い、未知なる要素のモンスターとの戦闘、いくらカイザーがこれまで色々と大規模戦をしてきたとはいえそれはあくまでも個人同士の連携に、少しばかりの状況把握を取り入れただけだ。
だが、今回は違う。キチンとした計画で目標に到達することが求められている。
陣形は人と人とが戦って得たモノ、モンスターや魔物が相手ではどうなるか分からない。
副ギルマスの奴の心配も仕方ないことだと思う。
だからこそ、俺はこの戦いで強くなってみせる!!
と顔をきりっとした表情でいると横からジトッとした何か咎めるような目線で副ギルマスが見てきたので咳払いをして調子を戻した。
「な、なんだ?」
調子は戻せていなかった。少しキョドった声のギルマスに副ギルマスはため息を吐いた。
「絶対つまらんこと思っていたでしょうが。今度はどんな中二病ですか?」
「ぐぐぐぐぐうぐ。中二病ではない、ただこの戦いで強くなりたいと思っただけだ。」
「ブフッ!!」
今年で20歳になるギルマスにもう手におえないけれども、毎度おなじみの応酬を繰り返す副ギルマス32歳はさすがのイタイ発言に吹いてしまったが、一旦ここは真面目に話そうと手で一拍叩いて気を引き締めると陣形について話す。
「本当にファランクスでいいのです?」
メビウスの最大の強みは同盟員の規模。
技術や連携は疎らだが物量で押す戦い方が性に合っている、というよりもそれ以外にこの人員を使う術を自分たちは持っていない。今回は生産寄りのプレイヤーまで参加しているのだ、量で押さなければこちらがすぐに参ってしまう。
「一番実践的な戦い方だと書いていたからなネットで。」
ただのゲーマーに過ぎないカイザーは、いくら俯瞰して戦況を見れようともかの名軍師よろしく各々に適切な指示を与えられること敵わず、さればこそ客観的に見て一番安定する戦術方法が良いと考えたのだ。
「まぁ、ボクらは専門家じゃないし、戦術を学びたいわけじゃないしね。」
ファランクスといっても森の中、木々が多いところでは有効ではないので陣形を変えて、索敵班を周りにおいて、出来る限り敵と遭遇しないように最短ルートで広い高原にでて西の森の最奥を目指すようにする。
しかし、これほどまでしても先の戦いが尾を引いて、不安が心を締め付けてくるのは当然であった。
だからといってこの面白いイベント事を楽しまずにはいられない。
「あくまで、ゲームを。基本だろ?」
したり顔のカイザーはゲーマーだ、だからゲームが好きだ。この同盟に入っている人全員ゲームが好きだ。こういう自分たちで行うイベント祭りもゲームが好きだから、やっている部分も多いといえよう。
「確かにそうですね。」
その言葉を聞いてキョトンとした顔になったが女医ステーションは快活に笑った。
「人を狩るっていうとオレらが悪者かもしれんがなw」
こう最後のところで茶化してくるのはカイザーの照れ隠しだ。
「だねw」
そこは分かっていても突っ込まないのはマナー、女医ステーションも乗るような形で受け答えた。
「仕方ない、これは我らが聖戦なのだから!!」
カイザーはそう言いながら手を前いふりかざしながらポーズを決めた。
「はいはい。」
節度はあるので、過剰に乗りはしない女医ステーションは軽くあしらった。
「ぐぐぐぐぐうぐ。」
一人滑るボケ芸人はたった一人の観客にこうして無下に扱われるのであった。
「そういえば。」
『何か質問か?』
「朝に見せたステータス。」
『ふむ、そういえば。そんなことをしたな。』
「ステータスの数値が見えていたのだが、どうしてなんだ?」
『何を言っているのだ貴公。数値が見れなくて何がステータスだ。』
「それもそうだな。しかし、私が見ようとすれば私のステータスの数値は見えないんだよ。」
『確か渡り人の秘儀の一つのことか?、当然だろう、あれは。そもそも数値なんぞの基準を創ってもないんだからな。ストラテジーやアジリティーなどは大勢の人の基準を取ってからようやく見れるもの。』
「?」
『私は【統計】を持っているため基準を取れる、しかしそれに近い系統のスキルを持っていなければステータス上で能力数値は見えないということなのだよ。これは、少し昔に確立された確認方法なのだがな。』
「知らないことばかりだな。勉強になる。」
『ふむ、意外に貴公は素直なのだな。』
「?」
『いや、まあよい。今度からは少しづつ冒険で必要な知識を叩きこむようにしよう。』
「気遣い、感謝する。」
TO BE CONTINUED
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