PK討伐隊という名のただのおバカな男たち
いや、いや遅くなってすみません。何かと忙しいもので
最近では、運動していないので歩いている中で筋肉を意識しながら歩いてます。
そんなことをしているとあら不思議、友人と歩いていると無意識のうちにさっさささと先に行ってしまい、怒られました。むかつくな、アイツ。
日は一日遡る。
創造神アトゥムの眷属である生命を司る慈愛の神ルータシアナの像が鎮座するはじまりの町唯一の教会。そこでは、この世界の人ならざる者が息絶えた時、ここに蘇る場所と言われている。
つまりは、教会は死に戻りした時の復活地点である。
その教会の中央、神が描いたとされる大古の魔法陣が光りだす。
その光は人の目を害すものではなくとても柔らかい光、その光に包まれる大きな繭、その繭も気づいた瞬間には霧散した。
霧散した光の繭、その中から出てきたのは気が強そうな美少女だった。
そして、その美少女が姿をちょうど現した時、それまで姿が見当たらなかった神父が徐に姿を見せる。
「勇敢なる戦士よ、貴女に神のご加護があらんことを...」
神父はその言葉だけ言い終えてすぐさま去って行った。
美少女、ヴィーナスは、神父が去った後、張りつめていた緊張が一気に解れたのかへたり込んでしまう
「ああ、もう......最悪。デスペナに、装備があらかたなくなってる。しかも、アレも・・」
美少女にふさわしくない低い声で不満をブツブツ言いながらヴィーナスはステータス画面を出し、自分の同盟員に【コール】した。
ポーン、プレイヤー“カイザー”に取り次ぎます。少々お待ちください......
【コール】とは電話するという意味の英語からきた通り、同盟員やフレンド登録をしたプレイヤーと連絡ができるお手軽システムで、例外を除く限りにおいて世界中どこにいても連絡を取ることができる。
予想外にも取り次ぎが遅いことに段々といらだちを見せるヴィーナス、そしてようやく一分経って相手に繋がった。
『こちらカイザーだ。ヴィーナスか、西の森のことを言いに掛けたのか?あれは仕方がないこ・・・』
出た男は、いきなり渋い声を装った取り繕いの作り声でヴィーナスの話も聞かずにひとりでに喋る。
それを聞くヴィーナスはピシッと苛立ちをあらわにして鬼気を纏う、周辺にいたNPCは萎縮してしまい彼女の周りから遠ざかる、それを見て彼女は一旦冷静になるとまだグチグチと文句を言っている《メビウス》のギルドマスターに言葉を投げかけようとして、ヴィーナスは何か思いついた。
そういえば、あのプレイヤーに恩返ししてなかった・・・・
心の中でニヤリと笑いながら、表面は落ち込んだ表情を装ってか細い声でカイザーに話した。
「......アタシ、プレイヤーにMPKされたの......」
女優に勝るとも劣らない演技でまさに可哀想な美少女を演じるヴィーナス、その表情は普段のような高慢な表情は陰に隠れてしまっている。
『・・・・でだな、ん、何!?MPKされただと!?』
カイザーは、西の森でPKプレイヤーがいるという驚きと同盟員がPKされたという怒りを感じながら、まんまとヴィーナスの演技に騙されてしまった。
重度のゲーマーで非リア充、隠れオタのカイザーは、リアルでは女性との会話もしたこともない。だから女性の一面性しか見ておらず、相手が演技をしているなど思いもしていないのだから仕方ないことなのかもしれない。
そんなカイザーの分かりやすい態度に吹き出しそうになるのを堪えながらヴィーナスは、あの憎き黒髪への復讐のための提案へともっていかせるように話を続ける。
「そのプレイヤーを倒そうとして、でも、とても強くて、私、何にもできなくて......」
いきなり泣き崩れるヴィーナスに意外な一面を見たという驚きで対応に焦りながらカイザーは、努めて渋い声を作りながらヴィーナスを慰めるが、内心ではここで慰めて好感度アップ!!とヴィーナスと彼女になれるかもという妄想も抱いていたりする。男だから仕方ないんだ!!
『大丈夫だ、安心しろ。ヴィーナス、オレがソイツぶっ倒してきてやんよ。』
今、会話中のカイザーの顔はカッコいいぐらい(笑)決め顔になっていることだろう。
聞いていたヴィーナスも単純だわと苦笑しながらも、自分の団長がとても素直な性格であることに今は感謝をした。
これで、アイツも倒せる、いやもっと確実に......
いい考えが思いついたので暗にそれを示そうとして、ヴィーナスは心配な顔を張り付けながらふるえた声でカイザーに訴えた。
「ま、待って。本当に強いの、それも圧倒的に。だから、あなた一人で行くのは心配なの......」
『そ、そうか。じゃあギルド全体でやるとしよう。』
チッ、頭の働かない男ね、と心の中で毒づきながらヴィーナスは先程考えていた一番の倒せるだろう可能性の一つを少しながら強引に突きつけた。
「それと、他のギルドにも依頼して、確かあのプレイヤー相当レアの武器を持っていたから。上位の連中もやってくれるはずだわ。」
「う、うん?分かった。何かもう大丈夫そうだが、しばらくは安静にな。」
何故か既にケロッとしているヴィーナスに疑問を抱きながらも捜索範囲を広げるためにはそれも必要だなと確認し、やはりそれでも彼女のことが気にかかるらしく心配をしているようだ。
「ありがとう。あなたのそういうところ好きだわ♪」
ヴィーナスは、顔を少し赤らませながらにっこりとした表情で彼へ本音2割嘘8割の言葉を言う。
まあ、友達として......というありきたりな好きの類だがその言葉を聞きやる気に満ちているカイザーは完全に勘違いをしてしまっている。もちろん、ヴィーナスも意図的にやっているのでそのことを指摘もせずただニコニコと笑顔でいる。
「おう、PK野郎はオレが倒してやるよ!!」
「その時は、何かあなたの言うこと聞いてあげるわね♪」
「ほ、本当か!?全力を尽くす!!」
今こそ俺のモテ期。年季の入った廃様の実力を見せてやる!!と人生で一番の熱烈さを見せるカイザーは、そうと決まればと、計画を実行するために通信を切った。
通信をいきなり切れ若干ムカッとしたヴィーナスではあったがそれも一瞬だけであり、それよりも思いのほか効果が出たことでニヤニヤとした意地の悪そうな顔でスキップしながら教会を出た。
カイザーは、早速、紅一点のヴィーナスを除くむさ苦しい団員全員に緊急招集をかけた。
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送信者 カイザー
宛先 ALL&NOTヴィーナス
本文
本日、INしている者、○○時までにギルドホームに集合してくれ。極めて重要で緊急な話がある。なお、後日この本文を読んだ者は、一度ギルドホームへ顔を見せるように。以上
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ギルドホームの施設の一つ。
舞台付きの大広間。
その広間にゾロゾロとワイワイと騒ぎ立てながら男どもが群がって...集まってくる。
「お前、今日集まった理由知ってる?」
「ん~や、知らね~わ。西の森関係じゃね」
「なんだろな~」
集まってきたほとんどの男たちは、今日のことを詳しく知るものなどいないので皆一様に疑問を浮かべていた。
そして、集合時間になり、舞台から真剣なカイザーと副団長が現れた。
そして、その舞台の中央まで歩いてきてカイザーはビシッと足を揃え、背中の後ろで腕を組んだ。
「私は、このギルドの団長、カイザー・スミスだ。」
いや、知ってるよ!?という団員全員の心の総ツッコみがありながらも、なお話し続ける。
「緊急招集をかけた本日、私が話すのは率直に言えばPK討伐隊への勧誘だ。今回の西の森への遠征の報告で諸君らは既に西の森の魔物の恐怖、己の力の限界を知ってしまったことだろう。」
そこで皆、団長から目を逸らして少しばかり歯がゆい気持ちになってしまう。それは、そうだろう。
何せ、満を持して団員全員、つまりは千数人で西の森へ挑んだにも関わらず命からがら生き帰ってきた者はほんの数十人だけだったのだから。あれもこれも全部、普段はテリトリーから出ることのないレイド級ボスの出現のせいであるし、それに勝てると思ってしまった自分たちの慢心した気持ちのせいだ。
そのことを皆が改めて思い出し、沈痛とした空気が流れる......
「しかしだ。この遠征でメビウスはこれまでにない程、あの例の計画達成へと前進した。」
ゴクリと皆が喉をならしながらカイザーの言葉に聞き入る。
「西の森に現れたPKプレイヤーの存在だ。」
皆何故ここでPKプレイヤーという単語が出てくるか疑問に感じたがカイザーが先んじる
「彼が間違いなくレアものの武器を持っていることは、ヴィーナスの死の働きで証明された。」
ヴィーナスの死という単語を聞いて、大勢が殺気立っていた。
ヴィーナスたんに何してくれる!!!!
レアな武器に関心がいくのではなく、ヴィーナスのことに関心がいく皆の顔を見ながら、カイザーは、それらを見回し頻りに頷く。
「更に、我々は今回の討伐が成功した暁にはヴィーナスに喜んでもらえることのみならず、願いを一つ聞いてもらえる権利を獲得した。」
先程まで殺気に満ちていた会場の皆はエッと唖然とした表情になった。
・・・・オイオイマジかよ・・・・・・スゲェ・・・・・マサカ・・・・・
「彼女を殺したPKは、西の森の最奥近くにいると言われている。彼に辿り着き、倒せさえすれば、我々は長年の悲願であったヴィーナス写真集を作ることができるだろう!!」
・・・・西の森の最奥・・・・もうそんな段階まで来ているのか・・・・PKさえ倒せばあのヴィーナスさんの写真集が・・・・
その中で一人、背の低い金髪の男の子はカイザーを見ながら、思案する。
いくら隊員を集めたいからって、団長は何を考えているんだ...そんなことをすれば、ヴィーナスちゃんに殺されるぞ........それとも団長はMなのか.......団長は一体何の扉を開けたんだろうか....
「我々は、西の森最奥を目指す。ただその為には、幾つかの手段を変えることが必須となる。つまり、目標は先程の通りだが、攻略サイト並びに情報屋ケイネスの【西の導】の示す道が使えなくなった今、レイドボスの出現地帯を想定して大きく迂回、つまりは遠回りしなければならない。」
淡々と語るカイザーだが、この集会の前に西の森の調査を調査系のプレイヤーに依頼しているので、それほど大きく遠回りをする必要はない。しかし、いまだ何故あのレイド級ボスが出てきたのかは分からずじまいだ。
「今回の遠征で使った道、あのレイドボスが出てきた。その戦闘でおよそ九割半以上やられた。一戦闘で勝てもせず、九割半だ。正気の沙汰でない数字だ。今回の討伐隊員にはそことは違う道を通ってもらうが、死んでしまう確率は5割と言ったところか....森の奥に着くころには殆どが死んでしまうことだろう。」
ギルドメンバーの九割半。並のギルドでは数十人単位だが、この最大規模のギルド“メビウス”は総員千数百人も誇る大規模ギルド、損失はデカかった。確かに多いだけの烏合の衆が如く、ギルドのメンバーの質は疎らで最前線で活躍しているメンバーもいれば、戦いの動きに慣れていない初心者もいる。しかしながら質より量という言葉があるように圧倒的な数で攻め立てれば、ペナルティーは付くものの一定の強さの魔物なら倒せるのだ。今回の遠征の目的、西の森の探索、つまりは地図作成に尽力を尽そうと入ったものの敢え無く倒されてしまった。
大量のプレイヤーでの戦闘(1キロの区域に9人以上のプレイヤーがいる場合)の際のペナルティー
1.魔物大量発生
2.経験値半減
3.パーティー全体に作用するアイテム・魔法・スキル無効
4.レアアイテム入手確率低下
そして、最後。5.死に戻りした際、通常よりも多く持ち物をロストする。
このゲームは、キチンとした依頼でない限りチーム編成最大7人をコンセプトとしている、しかしそれはチームとしての人数であり、チーム編成せずに多人数で遊ぶことも可能。モンスター・魔物の経験値はダメージ数の多い人物が比例して多く入る、チームでは均等に手に入る。
このような余談はともかくとして、ペナルティーの最後の項目ロストに今回皆が頭を悩ませている。
何故なら、彼らの大多数が自分の装備を失ってしまい、万全を期する状態ではないからだ。
その状態でまたあの森に....、そのような戸惑いが彼らの中で生ずる。
彼らが、再び意気消沈していやな空気が流れる中カイザーはコホンと咳払いする。
「しかし、その戦いを生き残った者が信仰の高い誉れ高き戦士になっていくのだ!!」
カイザーの熱のこもった力強い声に僅かな人の心のわだかまりと言うものが今晴れた。
そのものたちの顔はもう戦士というべき武士の顔だった
「この惨状を知り、自分の命を賭してもやるという者はここに残ってくれ、自分に聞いてみてくれ、本当に自分のヴィーナス愛というものはその程度だったのかを......、他用のあるものは解散してくれ。」
カイザーはそれを言うと会場を去った。
殆どの者が誰の顔も見ずただひたすらに、損得勘定と自分の感情を秤にかけた。
大規模戦闘はあまりうまみのあるモノではない、逆に損の方が割かし多めだ。
前回は、地図作成と言うある意味で益あることの為に遠征したが、この討伐にはそれが...
悩む、考える、決断する。
そして、皆が各々一つの答えを出す。
ギルドマスター室に籠ったカイザーはしたり顔になりながらも内心ではちょいこれ不味くね?、人あつまるかな~?、まさか、全員とんずらだけは止めてくれよとか非常に焦っていた。
いくら、彼がギルドで一番強いとしても西の森で自分の力が通用するとは思ってない、絶対死に戻りする。
決死の覚悟でいっても、神経とがらせていっても、絶対に。
というよりも、なんでPKの野郎はそんなあぶねえ所にいるんだよ!!とか今更ながら思い、それを思うと逆切れしたくなる。PKは初心者狙いが主なことが多いから、普通は初心者向けの森・ダンジョンにいるはずなのだが。
そんなことを考えていると少しにやけた副ギルドマスターが現れた。
「エ○ヴィン団長、間違えました、ギルマス。時間です。」
やっぱりネタばれてーら、と少し恥ずかし後悔しながらカイザーは会場に戻った。
「諸君らは、死ねと言われたら死ぬのか?」
周りを見ると嫌ににやけた奴らが多いが、ここまで来たら最後までネタをやるとカイザーはキリッと真面目な顔で皆を睨視しながら威圧感をハリボテで取ってつける。
「死にたくありませんw!!」
狙ってたのか如くギルドで一番ノリのいいやつが調子よく大声で答える。
他の者は何故か、そう何故か下に俯いている。
いや、皆この過酷さに絶望感を抱いているんだ、きっとそうだ。まさか、自分のネタがばれてもう滑ってますよと笑いを堪えてるわけがない!!と必死に言い聞かせながらカイザーは最後まで演じる。
「そうか、皆いい表情だ。では今ここにいる者新たな討伐隊員として迎え入れる!!」
ブフッ!!とか破裂音が聞こえたのをカイザーは無視して大声で言い切る。
「これが本当の戦士の本気だ!!心臓を捧げよ!!」
と言うと皆あの例ポーズをする。ここに、ギルドメンバー全員つまりは1468人の討伐隊入りが決まった。
そして、その後......
冒険者掲示板にてPK討伐隊のクエストが張り出された。
その掲示板になんだなんだと大勢が集まっていた。
その中の一人、紅の目を光らせながらそれをじっと見た。
「高位のレアな刀を持つPKプレイヤー......なるほど。面白そうだ。」
そんなことを呟きながら群がりから抜けると向うの方から快活そうな女性プレイヤーがきた。
「ユウ姉ちゃん、はやく次の町行こうよ、そろそろココ飽きたよ~。」
プリプリと文句をたれる自分の妹に苦笑いしながらも彼はちょっと無理をしてもらうことを頼む。
「すまないけど、ピーチちょっとこのクエ一緒にやってくれない?」
サラっとした真っ白な綺麗な髪をなびかせながら、彼は申し訳なさそうな顔をする。
周りのプレイヤー、男性プレイヤーたちはチラチラっとその様子を盗み見ては、少し頬を緩ませている
「ええ~、でもいいよ。ユウ姉ちゃんの珍しい頼みだし!!」
頼まれた方は、やる気を出してくれてはいるが、その表情にはありありと貸一だよというノンバーバルが見えていて、頼んだ方は次は何されるのだ、というより何故自分が手伝っても貸にならないのに自分が手伝わせるとこれ幸いにそこに付け込むのだ、とこのような理不尽に悩まされていた。
しかし、彼はそれを承諾しながらも、一つ反論があった。
「オレはお前の姉じゃなく兄なのだが......」
「いやいや、その顔やスタイルでお兄ちゃんはないよ、やっぱりお姉ちゃんだよ。」
バサリと両断された。
「反論できない......!?」
評価・感想よろしくお願いします。
訂正・批判大募集。キツイのは止めてね、心が折れる




