西の森を抜けよう2
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ドスッ、ドスッ、ドスッ
威圧的な重厚な足音がライトたちの目線の方向から聞こえてくる。
一つ足音するごとに並の者なら逃げようにも逃げられないほど物凄いプレッシャー、緊張感がある。
いくらライト、アーサーであってもこのプレッシャーには、若干ながらも緊張をにじませる。
はっきりと分かる存在感、それは傲慢に自分の力が絶対と過剰に思い込んでいる愚か者の隠し切れない未熟な敵対心とは違う。
強きものが持つことができるオーラ、見えなき力、敢えて威圧的に構えているに他ならない。
先程まで、ちょっと危ないピクニック気分だったライトは、ムラマサに手をかけてまだ見ぬ敵へと構える。
メキキキッ、ズドン
木々が踏み倒され、かのモンスターの全貌が現れた。
ブオオオオオオオ...
?????と表示されているモンスター。
これが、名前か?、変わったやつだな。とライトは天然的考えをした。
顔全体は、竜に近い牛や鹿、馬といった類のものだ。
ちょうど馬の耳に当たる場所には、深緑色の結晶のようなものが二つあり、頬に当たる部分には肉をすり潰すサメのアギトに似たものが付いている、体躯は二階建ての家ぐらいの大きさで筋肉剛隆、大きな蹄の足には雲のようなものが纏まりついている。例えるなら麒麟と西洋竜のハーフだろう。
まさしく、獣の頂点に立つ化け物の姿である。
けれども、ライトたちを見ても一向に襲うことをしていない。
その獰猛そうな目からは、知性が感じられる。
ライトが、油断なくかの敵とまみえているとアーサーから声がかけられた。
「これが、ジェネラル・ドロウスだ。かなりの強者だろう。
かの奴は、このエリアにしか行動しないために、予とは
一度しか戦ったことがない、その時は予がギリギリ辛勝
したが、それこそ相性の良さが勝因だった、しかも、予も
力尽き果てた為にこうして奴は生きながらえている。
舐めてはかかるなよ。」
そうは言いながらもアーサーは、面白がるような表情をしている、そこにはライトに対する信頼があるのだろう。
しかしながら、ライトにしても、アーサーにしても、二人でかかれば余念なく倒せるというのに一対一とは、なかなかに騎士道精神というのが感じられる。
ライトに言わせれば侍の精神というのであろうが。
ジェネラル・ドロウス、ドロウスもただ静かに待っていたわけではない。
ジェネラル系の特徴である強力な攻守の強化を発動していた。
さすがのドロウスであろうと即座に発動できるものではないので地道に着実にその強化の共有率というべきものを上げていた。
このドロウスの強さは、この森の主たるアーサーより強いというのが実際だ。
魔法を主体とし、かなりのスピードを持つアーサーとは、違い肉弾戦を主に戦うモンスターで若干動きが遅いながらも高い攻撃力と防御力と持久力を備え、魔法においてもあまり使わないながら風、雷、土、木などの魔法を操る、そして人語は喋れないながらも高い知性を持っているハッキリ言う、強さ的には後半に出てくるようなレイドボス並である。この森恐るべし。
ライトは、目の前のドロウスを見て少し目を見張った。
ドロウスの体から湯気が立ち黄色の毛と深緑色の鱗が薄く光を帯びている。
「何だ.......。」
そうつぶやくと同時にドロウスが本格的に臨戦態勢に移った。
ヴォオオオオオオオオオオ!!!!
ドロウスの咆哮により戦いが開始された。
アーサーは、それを聞きすぐさま、その場を立ち退く。
ドロウスは、いまだ自らの眼前で呑気に武器を向けてくるライトに向かって突進する。
遅いとはいえ、それはアーサー基準において普通に考えればあの巨体にしては動きが速すぎるほどの速度を出しながらライトへと襲う。
ドロウスは、その自慢の蹄でライトを押し潰そうとする。
ライトは、その時少しだけ刃筋を変えた。
ドオオオオン!!
土煙をたて、爆音を立てながらの攻撃でドロウスの真下の地面はおろした蹄から蹄の形を綺麗にかたどり、そこからひび割れのようになっている。
ドロウスの表情はあまりわからないが、いまいちという表情をしている。
晴れた土煙に人影が見える、蹄の真横にライトがいた。
ライトは、少々苦しそうな表情だったが、表情をすぐに直した。
(どうやら、右手首を痛めてしまったらしいな、これは。)
アーサーは遠巻きに見ながら思案した。
「私と対極に近いな。」
淡々とした口調でライトは呟く。
何故あの攻撃を避けなかったのか。
先程の力のすべてを注ぎ込む攻撃は、一剣術の剛に通ずるものが感じられたライトは、敢えて受けることでその真意というものを直接感じようとした。
だからといって、本当に直撃しにいくほどの勇者ではないが、
流止。
柔における過程で初段階にぶつかる壁の一つ。
落石が上から落ちようとも、軽く受け流し、最終段階で羽が落ちるぐらいの衝撃に抑え静止させる技。
その技を使ったにも関わらずこのありようとはとライトは悲嘆した。
同時に、あの攻撃の凄まじさが如実に表されていた。
「剛の者よ力というものを示してくれ。」
ドロウスは、ライトに構わず追撃を始めた。
再度振り下ろされる踏み潰しにライトはまた〔流止〕を使う。
ズン
次は、先程のインパクトよりも小規模になった。
「これでも、まだまだ流しきれてないのか。」
呆れと称賛が入り混じった台詞をライトは言った。
現状、ライトは初撃で甘く見すぎて、右手首を痛めてしまった為、思うように刀が振るえない。
しかし、短期戦では分が悪いのは目に見えるほどかの敵、ドロウスはタフそうだ。
ならば、この状況に慣れるほかあるまい、とライトは一念した。
ヴォオオオオオオオオオオ!!!
自分の技が悉く逸らされていることに気付いたドロウスは、咆哮をすることによって、相手を萎縮、一時的行動不能に陥れようとした。
そのことを、歯牙にもかけず、冷静に冷徹に徹底的にを体現するライトを人間と呼んでいいのか分からいが。
木々は、その咆哮によりあらぬ方向に曲がったり、根元から吹き飛んだりした。
獣たちは初めからいない、確かにドロウスの地域にはモンスターや獣はいるが、どれもこれも危険を察知する能力が高いからこそこの森に住めるのだ、戦う前に姿を消すのは必然だといえよう。
ドロウスが攻撃の手段を変えた。
ドロウスの周りに光の粒子が渦を巻き天へと向かった。
すると突然、天空から数多の落雷がライトへ落ちてきた。
「............」
ライトは、落ち着きながら、雷が落ちるギリギリを見極めようとじっとしている。
自然の落雷というのは、突然に軌道を変えてしまうことが間々あるからだ。
今!!
ライトは横に跳び避け、近くにある木々を足場にドロウスに攻撃しようとする。
「っつ!?.........」
雷がライトへと軌道を変えた、地面から数センチの所で斜め上に。
ライトは、いきなりの急襲に見舞われながらも、即座にドロウスへの攻撃を中断し、雷の対処をする。
「(雷の獣は斬ったが)雷は斬ったことがないから丁度いい」
少し熱のこもった声でライトは、ムラマサで雷を斬った。
ビッビ、ビリリ.........
「...フン。」
分断された雷はライトをすり抜けるように通ると、そのまま地へ還った。
ムラマサが帯電しまったせいで、体全体ではないが、特に強く握っていた左手が麻痺った。
雷のエフェクトのようなものが左手辺りに付いた。
それを、さして気にせず、ドロウスに目を向けた。
左手が痺れて、右手は痛めて、刀を振るのがままならない状態でありながらも、この者の目は、戦うという意思を感じさせた。
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