始まりの朝
初投稿です。のんびりやっていきます。
目を覚ましたとき、私、渡辺しずくは違和感を覚えた。
何かがいつもと違うと思ったのだ。だが、その正体はわからなかった。自分の部屋もいつもと変わらないし、カーテンの隙間から差し込んでくる日差しも、昨日とさほど変わらない。机の上の教科書も、昨夜自分自身が置いたままの形を保っていた。
私はベットから這い出ると、目をしょぼしょぼさせながら顔を洗おうと部屋の扉に手をかけようとした時だった。
「にゃー」
耳をくすぐるような、可愛い声。
はっと振り返ると、私の足元に黒色の猫が一匹、少し茶色がかかった目でこちらを見上げていた。
「ひゃー、かわいい!」
私はその場にひざまずき、猫を抱き上げ、首元を撫でてやると猫は気持ち良さそうに目を細めた。
だが、何かが頭の中で引っかかっている。さっき目を覚ましたときに抱いた違和感だ。なんだろう、と考えたときに、私の腕の中にいる猫が可愛らしい小さな歯をのぞかせてまた、「にゃー」と鳴いた。
「もう、かわいいなお前は!どこから来たんでちゅかー」
猫の可愛さに悶えながらよしよしと頭を撫でてやる。
…いや、待て。
「…まじでお前どこから来たの」
そういえばここ私の部屋じゃん!私猫なんて飼った覚えないぞ!?どーゆうこと!?
まさか窓から!?と思ってばっと窓をみて見るが、きっちり閉められていた。ご丁寧にちゃんと鍵までかかっている。
「なんで!?どこから入って来たの!?」
家族の誰かが家に連れ込んだのだろうか、とそんなことを考えながらとりあえず下に降りようとしたときだった。猫は何かに反応したかのようにピクッと耳を動かすと慌てて私の腕から飛び降りた。
「あれ?どうしたの?」
すると私の部屋の少し開いたクローゼットの隙間に入っていく。
「あー!ちょっとそっちクローゼット!」
慌ててばっとクローゼットの扉を開けるとそこには異様な光景が広がっていた。
クローゼットにかけてあるはずのコートも服もズボンもへそくりの箱もすべてなかった。
あるのは闇。
永遠とどこまでも続く闇。
微塵の光すらない。
「……なにこれ」
ヒュオーっと冷たい風がクローゼットから吹いてくる。
馬鹿な、有り得ない。
パタン、と扉を閉める。私はもう一度ここが自分の部屋なのかしっかりと確認し、目頭を押さえた。ついに幻覚まで見えたんですか私。やばいかもしれない。
落ち着いてもう一度、ドアを開ける。
やっぱり闇だった。
今にも吸い込まれそうな深い深い闇だ。
すると闇の中から
「にゃー」と猫の声が響いた。
目を凝らしてよく見てみるが黒猫なので闇に溶け込んでしまって見つけられない。
「ね、ねこちゃーん。あ、危ないよー。早くこっちにおいでー。…………猫様お願いしますこちらにいらしてくださいまじで」
「にゃー」
どうやら来る気配がない。
このまま扉を閉めて無かったことにしようかと一瞬頭によぎる。
だってこれ絶対関わっちゃだめだって!絶対何かが起きるって!
「……はぁ」
結局、私は猫を放ってはおけず、連れ戻そうと渾身の勇気(たぶん一生分の勇気を使った)でクローゼットに右足を一歩入れてみる。なにも起こらない。
アイホンの光を懐中電灯代わりに足元を照らしてみるが闇が深すぎてなんの意味も無かった。光でさえも闇に吸い込まれてしまってるようだ。
一歩、一歩と慎重に足を動かす。
「ね、ねこちゃーん。どこー?」
その時だった。私の背後で人生の扉がしまる音が聞こえた。
恐る恐る後ろを振り返る。
さっきまで開いていた私の部屋へ通じる扉がきっちりとしめられもはやどこらへんに扉があったのかさえ分からなくなっていた。
すると突然、フワッと浮遊間を感じた。あ、やばい。と思ったときにはもう遅く闇の中にどんどん落ちていった。
「ぎゃァァァァア!!!」