Ⅰ 邂逅 ― 罪
宴の夜、酷い嵐に遭い、船が沈没した。
従者の叫ぶ声。
投げ出される肢体。
瓦礫の漂う海。
水を吸ったマント。
――感じる、死の気配。
その時、僕は見たのだ。
金糸の髪と蒼い瞳の、美しい少女を。
一目見て、彼女は僕の運命の人だと想った。
最期の瞬間に出逢うなど、何と皮肉な運命だろう。
精一杯伸ばした手に彼女の細い指が触れた瞬間――頭に感じる衝撃。
意識は、暗いの海の深い場所へ沈んだ。
考えていた程、死は、冷たくなかった。
...The another tale of
the Little Mermaid
Ⅰ 邂逅 ― 罪
目を開けると、眩しい光が僕の視界を満たした。
どこか遠くで、鐘の音が聞こえた。
とても、暖かかった。
僕はどうしたのだろうか?
ここはどこだろう?
鈍く痛む頭で記憶を辿った。
……ああ、僕は死んだのだった。
溺れ、水底に沈んだ。
ならば、ここは「天国」というところなのだろうか。
僕は新しい世界の空気を吸い込もうとした。
しかし、途端に苦しくなってむせた。
塩辛い水が器官から逆流した。
咳をする度に、肋骨に痛みを感じた。
顔を横に向けると、耳から水が滴り、はっきりと音が聞こえた。
「まあ、王子さま! 気が付かれたのですね!」
女性の声に、もう一度目を開けた。
僕を覗き込む彼女の碧い瞳が、嬉しそうに細められていた。
金色の髪が、朝陽を受けてキラキラと輝いていた。
「……ああ、貴女が僕を助けてくれたのですね」
僕はそう言い、冷えきった頬を動かして微笑んだ。
上体を起こすのに腕に力を入れると、彼女はそっと僕の背に手を添えてくれた。
あの暗い海から、僕を助けてくれた彼女。
ようやく巡り逢った、運命の人。
あおいめの しょうじょ――。
「ありがとう、優しい女。助けてくれた貴女に、僕は運命を感じずにはいられない。どうか、僕の妻となって、ずっと傍にいてくれないだろうか」
片手で彼女の柔らかい手を取り、
もう片方でズキリと痛む頭を抑え、
僕は彼女に囁いた。
彼女は驚いたような表情をしたが、すぐに太陽のように微笑み頷いた。
杏色の唇が、肯定を述べた。
・
・
・
それが、僕の過ち。
僕の罪。
何故、僕はまだここにいるのだろうか。
この世界から消えるのは僕じゃなかったの?
どうして、消えたのは彼女だったのだろう。
全ての罰は、罪を犯した僕が受けるべきなのに。
……それとも、神よ。
生きることが私に与えられた罰なのですか――?