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78.そのとき(ルイズ視点)1

王都に毒源発生、至急向かえと使役獣使連絡があったのは

アンの友人であり、元使役獣の学生だったノネと隣国『ラヴァス』の第五王子の結婚式のあった

翌日だった


いやなことがあるのではないか、なぞと、寄り合い

ドラゴンに王都まで即座に飛べるように飯を食わせ良く眠らせてあったが

あたってほしくない予感ほど、よくあたるものだ


「学園閉鎖、子供たちを押し籠めろ」

「はい」

と、伝令と使役獣が走る


いざという時の、施設が地下にある

籠城の為の要塞故にお手の物だ


こちらにまで被害はないと思うが、これも、訓練だと学んでもらうか


「第一要塞展開準備」

「結界消失します」


頭の中にきんきんと、響く声が、支度が整うのを知る

ぺたりと、手に何かがくっついた


「ルイズ印?」

マジックスライムのお前は今日は無理だぞ

と、寝床に近付けるがくっついたままだ


「来るのか」

ぷよりとくっついたまま揺れる

となれば、これが案じているのは、ラムムンとアンのことだろう

あれは、ルイズ印の命をすくった恩人だ

そして、俺との絆を再度結んだ


それ故、捨ててはおけない

もしかすると、何かを感じ取っているのかもしれん


「無理なら引けよ」

扉を出ると

「ルイズ、おそい」

と叱責が飛ぶ

「すまん、生徒は」

「全員第一要塞に収まった

 アンがいれば、避難訓練ですね、とか言うんだろうな」

くすくすと笑うのは、ヒーメ・ロディだ

「あの子はどんな状況でも楽しむ

 しかし・・・」

今回はどうか、と皆が思っているようだ


王城からの連絡はない

ならば、発生源は、間違いなくあれだ

そして、その場にアンは必ずいる


あの子は、そういう現場にあいやすい

そして、運命を塗り替えていく


人ならざるものを人にさせ

善悪を理解させ

親切をさせる


善人の街など、くすぐったい呼び名で街が呼ばれるのは

アンがいたからこそだ

どこか気の抜けるような人柄が人々の心を軟化させていった


毒素系ということで、アーヴィン、グナータッドと三人で向かおうとしたら

うふふ、と美女が、近づいてきた


「お忘れものよ」

と言うのは、自分自身、そして、アンの恋仲のカールとティエリをつれていけというのだ


「必要だと思うわよ」

と、にこりと笑う顔は、青かった


「お前の言うことは聞く、だから、休め」

「いいえ、私も行くわ」

司書のカトリーナにする役目はないだろう、駄目だと言おうとしたら

彼女の手の中にいるものに目を見張った


「行くわ」

「来なさい」

そう、アーヴィンが答えた

アンの使役獣の派生のハネムンがいた


「あっ」

とリーナが驚いたのは無理がない、俺も驚いた

ルイズ印が勝手に、ハネムンを飲み込んだ


「ドラゴンの用意をしてある」

「ええ、しってるわ」

そう言われると、相変わらずうちの司書はと思う

情報収集力にかけて、司書に勝てることはないのか

そして、その化けの皮をはいだ司書には特に


「大変なことになってるみたいだね

 呼んでくれて嬉しいよ」

と、ギルドのティエリが言う

その身支度は、長旅に耐えれるものだった

単独でもいこうとしていたことを知る


「ギルドに連絡がはいったのか」

「いや、独自ルート、というよりアンちゃんの解除しわすれかな」

「ん?」

「テッラと、冒険にいくから、危険な時にって『緊急信号』渡してたんだよ」

「ああ・・・」

納得した、ギルド独自のシステムだ、かなり高価だが

もしもがあれば発行したギルドに連絡がいくようになる


「ギルドにも連絡はないし、王都の方でも、確認できてない

 むしろ、隠ぺいに掛ってると思う」

「そうだろうな」

「おまたせ」

そう言ってあらわれたのはもう一人の恋人カールだ

ヒーメ・ロディがおもしろそうな顔をする


「王都に行く気かい?」

「行くよ、覚悟は決まった」

カールは、男の顔をして答える

何があったはしらない、ただ、ヒーメ・ロディは知っていて

彼なりに心配しているようだ


「乗り込め」

そう言われ、全員がさっと竜の籠に乗り込む


そうして、王都に来た

上空からみた、庭園は酷い惨状だった

爆撃魔法が使われた後のような瓦解した建物

折れた木々

レンガで整えられていた道は、すべて、波打ちめくれあがっていた


「これは・・・ひどい」

ごふと息を吐き、解毒剤を服用し、それを回す

空中に毒が発生していた

中心だろう場所は避けて飛んでも、これだ


下はもっとだろうと思ったが、毒の気配はない


「あれは?」

固い外皮に包まれた、球体

あれがすべての元凶かと皆が思った


「だめですっ!」

アンのスライムが叫ぶ

そして、ぴゅっと、落ちるようにその球体に張り付いた


ぱりぱりと、外皮がはがれおちる

そして、中は、巨大なスライム、そして核が浮遊するように

ぷかりぷかりと他のスライムたちが浮いていた

そしてその下には、大量の人間


護ったとあり、しかし、皆動くことない

眠らせたか、アンもその中にいるはずと、中をじ、と見つめる


「アンっ!!」

とカトリーナが悲鳴を上げる彼女の見ている方向を取られると

倒れた人影が見える

ぴくりとも動かぬ

誰もが青い顔をしている

手を取り合うようにラムムンと絡み

近づけば近付くほど生気のない顔


「あ・・・アン?」

ふらふらとカトリーナが近付く

倒れそうな足取りだ

事実を知りたくない、だけど、という心が透けてみえる


「これは・・・」

とにまりと笑うヒーメ・ロディ


「この子はほんと規格外だ」とかかと笑った


結果から言えば、アンは死んでいなかった

むしろ、その一歩手前であったが

それは、幸運でもなんでもない

涸れ果てた大地、そして、緑、淀んだ空気

精霊たちが、アンの代わりにに散っていった


精霊術師でもないアンの為に

契約もせず、無償の愛を命を賭して


リーナが静かに泣く、心が砕け散ったように

子供のように、だけど、大人のように泣く

それは、司書しか知らない事実に行き当たったということだ

そして、ヒーメ・ロディが笑い、グナータッドが青い顔をする

規格外だということはただ一つしかない


「禁呪か・・・」

そう、誰もが理解した

「生命を移し繋いだか」

今、全員の命は一つであると、示す

アンと使役獣たちの命で、中にいる彼らの命はつながっている


「解毒の必要はなさそうだね」

クロムンが、いるからだろうアーヴィンはさっと、ラムムンに手を突っ込み

治療薬の入った水珠を割る

魔法をかけ、治療をし、意識を戻るのを待つ

ほぼ白くなったラムムンの核に、ルイズ印が近付く


今こそ受けた恩を返すと

ぴたりとくっつき、最大のヒールを使ってるのがここからでもわかる

小範囲の最大ヒールでも覚えさせておくべきだったかなんて思うが

ここまで伝わる波動で、中の者たちが回復していくのが分かる

無駄ではない


「ありがとう」

ラムムンがぷよりと揺れ

体が小さくなっていく


魔物の回復は早い

それも、ラムムンはいくらレベルがあがろうとも

万能スライムだ、ルイズ印が、最大火力のヒールを連発すれば

たちまち全快するだろう


人はそうはいかぬが・・・


う、と呻きながら、人々は目を覚ます

アンらしい、とこんな所でも思う

貴族も、平民も関係ない

全員を平等に助ける


「先生っ」

とかけつけてきたのは、ノネか

相変わらずな風貌をしてあるが行くのは相変わらずアーヴィンの所なのは

ぶれがなくてよい


ノネの説明は分かりやすい

そして、自身のドレスを保管してあった故に毒の種類も判別できた


「お役に立てて幸いですわ

 ですが、申し訳ございません」

「ノネ、お前が謝ることではない

 愛を貫くがいい」

そう、にこりと笑われ、感極まりノネは泣く

隣国の王子は、俺たちに近づく

お付きもつけずに


「ありがとうございます

 貴方の生徒に、最大の感謝を」

そう言われ、皆が笑う

「それは、もう生徒ではないが

 感謝は受けよう」

「改めて御礼をしに参りますが、使役獣使というものはここまでできるものなのですね」

「いや、これは規格外だからな」

くくと、皆が笑う


「これを基準に考えると後で困惑するぞ」

そう、坊主にいうように言うと、王子は、固い表情を解き笑った


「先生がたも十分ともいえますよ?」と言って

なかなか、ひどい惨状になってました

11月の終わり、明日から12月、あともう少しおつきあいくださいね

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