54.使者御一行様 頑張ります
「彼女が使役獣使だということをお忘れではないかね?」
と学長先生は言う
忘れてないのは、分かっての言葉だ
書面にも使役獣使としての出仕と書かれてあるが
先生がこう言うのにはわけがある
使役獣使長のバルトロメイさんにも言われたことだけど
使役獣使を出仕させようと思ったら
まず、使役獣使の組織の方に打診して本人に話が行く
だから、今回みたいに、王様が、名指しで来いというのは
本当にイレギュラーだそう
○○の仕事に従事するものをというのが本来の出仕の仕方らしい
それから試用期間を設け、お互いがどうか
使役獣との相性などを試すらしいけど
そのまま就職、出仕しちゃうのがほとんどだから
就職率100%みんな頑張ってるんだなぁって思った
先生がたと話をしてると
私が如何にイレギュラーなことをしてるのかわかる
だけど、この街や学園、ギルドの人はそれを許してくれて
好き勝手させてもらって、かつ褒めてもらってる
私はそういうことも含めここが好きで
頑張っていきたいのに、どうあってもわかってくれない
それほど溝が深いんだよね
ただ、私は、前々から聞きたかった
王様の懐刀さんで先生だから、答えてくれるかなと聞いたら
皆が笑ってきけきけーと言われて今回の流れとなった
さーて、頑張るぞー
「まずは顔合わせだけじゃぞ、それからバルトロメイに打診の予定じゃから
それは心配しなくともよい」
決まっていた答えを語った、というようなお爺さん
ほんとに、王様と話がついてるんだろうなーって感じだ
さて、やりますか
「少し質問してもいいでしょうか?」
私は、手を挙げて発言する
「どうぞ」
にこり、と笑い促された
妥協するか、という気配が見え隠れしてますが
妥協はしませんよ
「王様のところで、私はどんな仕事をするのでしょうか?」
「今まで通りの使役獣使としての仕事を
君の特異性を見せてほしい」
「私の特異性ですか?」
そんなものはないんだけどな・・・と思うけど
こちらの常識はーなので、とりあえず放置
「御存じだとは思いますが、説明させてもらっていいですか?」
私は、ラムムンをふよりと撫でながら説明してみる
使者の皆さんが頷くので私はラムムンをよく見せるように掲げる
「このスライム、何スライムに見えますか?」
「万能スライムだろう」
と吐き捨てるように言われた
うん、いいんだけど、ちょっと傷付くなぁ
ね、ラムムン
「私の使役獣、この子ですよ?」
と、ここポイント可愛く言えとのことなので
小首傾げてみました
恥ずかしぃいいっ
「え・・・」という数人の声だが
全員からそんな雰囲気が出た
うん、想定の範囲だけど、万能スライムは万能なんだからねっと言いたい
そりゃぁ強くも綺麗でもありませんよ
おいしそうではあるけど・・・っとラムムンそんなじと目でこちらをみるのは
やめなさい、今お話の最中なんだよっ
「複数もっているのだろう?」
と、若干上ずった声、うーん、想像以上のダメージだったみたいです
「持ってますが、全員、この子からの分裂ですよ?
特化はさせましたが、初期スライムです」
ぽんとラムムンを叩くと、ふふっと言うように揺れ
ぽーぉんっと全員を弾きだした
おー可愛い、新しい登場の仕方だねっ
さすがだねラムムンっ
もっふりと撫でてると、ずるーいな状態で
あっという間にスライムまみれになった
ああー、幸せ、可愛すぎる
もふもふっ
「アン・・・アンッ」
あっ、しまった
すいません、先生がた
「す・・・すいません」
だって、ラムムンたちが可愛すぎるのが悪いんだよっ
うう、先生がたのにやつき笑いがとまらないって感じだよ
絶対普段なら、からかわれてるし
大爆笑されてると思う
「と、いうことで、この通り私の使役獣は
万能スライムです
特別な子はいません」
というと、信じられないという風に目を見開いた
「治療に関して言えば他のヒール関係の使える使役獣や
魔法医師さんの方が上ですし
防衛に関しても、騎士の皆さんの方が強いです」
というと、当然であると頷かれた
むしろ、みなさんが万能スライムより弱かったら
私がびっくりですよ
「他のことにしてもそうです
なのに、召喚されて驚きました
私ができることはないと思い辞退させていただきました
なので、ご足労いただきましたが
気持ちはかわりませんので、王様に大したことなかったと伝えていただけませんか」
そういうと、先生がたからは笑いの気配
使者さんからは、は?と唖然とした気配が伝わってきた
あれ、なんか言葉の選択まちがった?
「さて、本人の意思も間違いなく聞いたな
使役獣使や貴族たちの間で彼女の話題が出るのは
彼らにとって、よき教師であるということだ
彼らは彼らの道を進むため、アンという教師が必要だ
今を狙うではなく
将来高を狙ったほうがいいのではないかな?」
そう学長先生が締めくくる
うん、私より立派な子はいっぱい出てくるよ
夢も持ってる、希望もある
それをするための力も手に入れようとしてる
だから、応援してあげてほしい
私はそのお手伝いをしたいから
唖然としたり、騒然とした気配のまま話し合いは終わった
話し合いをしたいという使者さんたちは、そのまま残り
行き場所のある私たちは、移動することになった
「宿にでもご招待してもらおうかな」
にやりと、ヒーメ・ロディが笑う
一度は行きたいと言ってたもんね
先生も忙しいし、街に降りてくることがないのでこの時がチャンスみたいな顔だ
おばけ先生も同じだったようで、ゆっくりとふかーく頷かれた
「ハネムン、伝言頼める?」
「まかせてっ」と響石でお返事して、ふわりと飛んで行った
子供たちがはねねむーーんって呼んでる
ぱたたと、羽ばたきを多くしてちかちか光ってお返事
仲良くなってるなぁー
「たぶん大丈夫だと思うので行きますか?」
「そうじゃな」
学長先生も楽しそうだ
騎獣型の使役獣に初乗りしましたが
結構怖い、だけど楽しい
はまりそうだけど、ラムムンが嫉妬中です
三つ目の答えは予想通りだったでしょうかー




