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49.役獣使会(バルトロメイ視点)

「ここにいるすべての使役獣使と使役獣に関わる事項

 王族による、使役獣使の強制出仕について各々の意見を聞きたい」

ぐるりと彼らを見渡せば、ゆるんだ気配のものはない

皆、各自の情報でこの件が議題であることは

理解していることは私は嬉しく思う


「王が使役獣使を召還するのは今回が初めてではないが

 出仕となれば話は異なる

 我らが組織を差し置いて王は、使役獣使を確保しようと画策されておる」

使役獣使は、私を長とした階級組織である


一部王に仕えるものもあるが

それは、我が組織から出向し任務に携わっているだけであり

王直属の配下ではない

出向としても、こちらを経由するのが筋である

王といえども、その枠組みを超えての出仕命令は

我ら使役獣使の組織をないがしろにしているに他なく

皆が、苦い顔をしていた


「王が求める使役獣使は、エモースト街にいる異世界人の使役獣使アン

 彼女が王都出仕しても不思議ではない実力を持ちうる使役獣使なのは

 学園や学び子から聞いていることだろう

 アンは、使役獣使としてエモーストにあると組織に示し

 学園との雇用契約を結んでいることを前提に話を進めたいと思う」


アンの立場は複数の契約を結ぶことにより

エモースト街との結びつきは強いと示せる

王都出仕がすべてではないとは分かっているが

我らが貴族故に、生じる義務と王への敬愛が含まれる

王派の使役獣使も少なからずいる故に必要な説明だといえよう


事実、今、ざわりと揺れる

王への答えの知らぬものがまさか『拒否』したとは思っていなかったようだ

その情報の遅さに、一抹の不安を感じる

年かさの使役獣使は、新しきこと、ものへの興味を失っている

王都の中で、貴族の一員として

決められた枠組みの中、変化を好まず出仕している


使役獣使となれば、戦も情報にも通ずる

それ故今の地位を確保している

ただの貴族ではない

力をもった貴族として示す


一代目の使役獣から、二代目になる時

ほとんどの貴族が、複数の使役獣を獲得する

そして、耳と目を持つ

剣と盾を持つと示す

そして、自身で周りをねじ伏せていく


その為の特別組織なのだから

王とてないがしろに出来ない存在と示して今日まで来た


しかし、王の悪癖は『異世界人』という『珍しさ』

そして街を変えるなにかをもつものに

興味を引かれた

せめて会っていたら違ったのだろうか、と思うが

それは、逆効果であろう

王は、アンの話に耳を傾け興味を抱くだろう


アンは何も特別なことはしてません

というが、それが特別であるのは、周りの語るが如くだ

王は興味を抱き寵愛するだろう

それは、アンにとって哀しい牢獄となるのは目に見えていた


彼女は自由だ

学園であっても、街にあっても

まさに、『自由民』として自身を示していた


「昨晩、アンに自身を表現させた

 すると返ってきたものは、我ら貴族には到底考え及ばぬものだった」

くすり、とつい笑いがこみ上げる

それを見て怪訝な顔をするものが複数いる


私が議会で笑うなどあり得ないと、言いたいのだろう



「市井の声を響かせた

 煩雑なものだ、しかし、それが彼女だとアンは示した」

私は、響石をとりだし、響かせた


淀みのない声、明るく聞くものの耳を心地良くさせる声

しかし、次の粗野な声に苦笑や顔をゆがめ

首をふるものがいる

貴族故の反応だ



最近、その形も変わったが

全体からすれば少数過ぎる数

たかだか使役獣使の学生たちの数だ


それでも、新しい風は確かに吹いている


市井にはない立場、考え方、立ちふるまい

それは、貴族として揺らぐことはないが

彼らは、市井と交わり、その考え方を理解した

そして、彼らをうまく使う方法を理解し

旧式の考え方を塗り替えようとしている


「これによって、彼女が王侯貴族に向かぬ市井の民なのが理解できよう

 しかし、それが市井と使役獣使、そして使役獣とつなぐ

 かけ橋となり、エモーストは、名実ともに使役獣学園の街となった

 彼女がきてから、学生は、ギルドへの登録を行い

 実地訓練を積み、功績をあげてきた

 そして、卒業と同時に任務に配属できる腕をもつものが多いのは

 否定できまい

 彼女は、学園で教師としてあるべきであり

 ギルドの一介の冒険者であることを望んだ

 長として私はそれを許可したいと考える

 皆の意見を聞こう、発言を許可する」

「長よ、バルトロメイよ

 そう堅苦しく言わずとも、使役獣使でもない貴族が無言を貫く態度を知らぬとは言わせんぞ」

そう、立ち上がっていうのは五大貴族の一員である


「シーグフリートよ、認識はしておる

 しかし、意識は統一の必要がある」

「固い、その固さをもって異世界人である彼女と対峙する必要はないと

 私は語ろう」

「まぁまぁお二方、いつものをするには邪魔が入りそうですから

 早目に決をとりましょうぞ」

くすり、と笑うのは、トビアスだ


「しかりしかり」

賛同するように回りが揺れざわめく


「貴族を理解せぬ小娘に、王都出仕はできぬ」

きっぱりと鋼の潔さをもって切り捨てるはイクセル


「市井のものを懐柔したとあっては、貴族の名折れ」


そう口さがなくいえども、皆、決は一つ

王都に出仕を阻むと示す


その能力は皆欲しいと示すだろう

しかし、ここでは欲しくはない

むしろ、彼女のやり方では流れが速すぎ

貴族たちの反感を買うだろう


いや、彼女は流れを変えようとするだろうか

貴族たちに押しつぶされるのではないだろうか

しかし、生徒である子供らはそれを擁護し

対立するのが目に浮かぶ


今回のことで、子らは、よく動いた

議会の招集を聞き、参加したいと申し出たものがあるが

彼らはまだ使役獣使ではない

それ故にこの議会への参加する権利はない

隣室に集まらせているが、一言だけと進言してきたのは

我らが決と同じだと言える


外に敵があれば、まとまるとはよく言ったものだ



老いも若きも同じ方向を見据え

足並みをそろえた


飛び交う言葉の中、いささか乱暴な手段も含まれていたが

会うてもいないものに心を砕く姿勢に頬がゆるみそうになる


お前はどこまで人を変えるのだろうな、アン


ちらりと、我が使役獣を見る

こやつも面白そうな顔をしている

テーブルの上に飛び乗り、長く吠えるとしんと静まり返る


「使役獣使アンの王都出仕を使役獣使一同は不可と宣言する」

その言葉を肯定するように拍手が巻き起こる

道は示された


議会は閉幕する


大門を開き、隣室へと入る


全員の視線が私を捉えざっと立ち上がり

不動の姿勢を取る


「王都出仕は不可だ

 お前たちはお前たちで動け

 それによって配属先を見定めさせてもらおう」

「はいっ」

とただ一言、答えた

私はそのまま去る


よかった、とかありがとうございます

とか背後で聞こえるが私は聞かなかったことにしよう


これは、使役獣使の戦いなのだよ、坊やたち

王族貴族だからといって使役獣使を『使う』ことは

できないと指し示す戦いなのだ


11月になりましたねー、いやぁばりばりと対立する感じで嵐が巻き起こってきてます

こちら系の話はまたたきでは初ですね

こんな感じも楽しんでくださいねーっ

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