39.教わること教えること
治療院事件のことも、みんな知ってて
アン先生大丈夫ですか?とか、先生は甘いですとか
生徒たちにも窘められた
うう、貴族階級の生徒さんが多いから
そういうところはしっかりしている
先生の言ってることは理想ですとか、最初にきつい言葉を投げかけられた
だけど、その時、人との関係ではなく
あなたが生み出した使役獣との関係ですよ、と説明して
そこから関係性を築いてもらった
放課後の特別授業を絶対にお願いしますと
私は生徒さんたちに取り囲まれ言われ
何か聞きたいことがあるのかなーなんてのほほんとして行ったら逆だった
帝王学というか、人をうまく使う方法とか
人を見抜く方法とか、いろいろ話してくれた
本当は、お家独自のものなのかもしれないけど
このままでは私が、傷つく
そして、先生を辞めてしまうという危機感を持ち
他言無用をみんなが約束し、全員で学んだ
一番の生徒は、私
だから、それらすべてをしっかり心にとどめる
今はまだわからないことも多い
それはかわいそうじゃないかなって思うこともある
だけど、それだけでは貴族や王族はだめなんだろう
上に立つ立場というのをまざまざと教えてもらった
頷きながらしっかり聞いてたら、一部の生徒さんが笑った
説明してる人がちょっと怒ってたけど、理由を聞くと
全員が笑う
アン先生はやっぱり素直でまじめだって言われちゃいました
わからないものはわからないものね
それはいくつになっても、ちゃんと教わる心と姿勢をし
受け止めないと駄目だよと、今度は私が窘める
それがたとえ下の位の人や、取るに足らないと思うものでも
聞き入れ、受け入れ、理解することは大事
もし、それで駄目ならそこからはじくほうがいい
とくに、経験が浅い内はね、というと
周りにはーっ、て関心とため息を両方いただいた
「でも、ありがとうね」
私は、みんなを見渡す
今いる生徒さんたちは、私派の生徒さんだろうから
だから、ここまで本気で向き合ってくれる
一学年の時、私はばたばたしてて、どの先生にも師事しなかった
自分の望む未来に一番近い先生に教えを請い
食らいついてくる、ここ連日の顔ぶれをしっかり見ると
ほとんどが同じ生徒で、アン派の生徒さんがいつの間にか
しっかりと出来ていた
先生たちからアン派の生徒ができりゃぁ
先生として一人前だなって言われたことがある
だから、嬉しかったし
みんなが真剣に心配してくれ、教えてくれるのが嬉しい
「今回は、本当に私の認識の甘さだけどね」
というと、全員が頷く
「みんなが教えてくれたし
できるようになったやりたい、で、急ぎすぎちゃった結果
だけど、あきらめることだけはしたくないから
ちゃんと見極めて、下準備して、学んでやっていくね」
そう言うとほっとしたように、みんなが頷き
自分たちもがんばります、って締めくくってくれた
この世界で、複数の仕事を掛け持ちする人は少ない
類似系のお仕事を同率で行う人は少数だけどいるけど
変わり者扱いらしい
アン派の生徒さんも、私の一部の仕事のやり方を望んでたり
仕事以前の使役獣とのつきあい方を深めたいということで集まってるみたい
みんなの話を聞くと、医者や治療に携わる人
王立、とつくのがほとんどだから、私なんかよりもっと大変な世界になるだろう
だけど、施行することは同じだし、人を治したい、救いたいという気持ちは同じ
冒険者を望む人はなぜか、使役獣騎士の人が多い
私は戦い方は知らないんだけどなぁ
と思うけど、学ぶことはまだまだありますとのことなので
私にはわからない何かが大事だと思ってるのだろう
私は自分らしくしていよう、と思う
万能スライムが、こんなにすごいとは思わなかった
その魅力を引き出せたのは、アン先生がいたからこそですね
って言われたのが一番嬉しい言葉だったりします
甘えついでに、みんなに響石に入れる言葉も選んでもらった
私的にはきつめの言葉が多く選ばれてびっくりしたけど
警告なんですから、きつくて当然ですと言われて
私の言い方では、警告にならないと、演技指導まで受けちゃいました
帝王学を学んだ生徒さんたちは、言葉の発し方や間の取り方、行動で
一回りも二回りも大きく立派に見えた
かっこいいし、怖いねって言うと
照れていつもの顔に戻ってたけど、本当にすごい世界なんだろうなって思う
絶対私は関わり合いにならないようにしよう
っていうと、みんながどっと笑う
アン先生は欲がない、才能的には埋もれさせるのは残念なんですが
本人がこれですからねー
なんて、喜んでいいのか、悲しんでいいのかな言葉もいただいた
リーナさんやカールさんはそんな様子をどこかで知ってて
お昼や帰りの時に、よかったね、ってにこにこと我が事のように喜んでくれた
よしっ、支度は調った
明日から、舞台である治療院に突撃
今度は、ギルドに依頼をしてからちゃんと行こう
もう大丈夫だと思うけど、予防は必須だし
ちゃんと様子も知りたいしね
再出発だよ、フィルルン
そういうと、うんっと言うように跳ねる
負けないと、楽しみと核の色が変わる
まだまだ一年生のちびっ子ちゃんだけど
やる気はラムムンにだって負けない
スライムで街興しじゃないけど
有名になったらちょっとおもしろい
生徒さんの使役獣も使って、学校と地域を結ぶ活動も始めたりしちゃうのです
だから、この街は、使役獣とともにある街になる夢を私はみてます
その第一歩がんばりますっ
ある種の完結ですね、これで、今回の第一部おしまいです
スライム窃盗事件は生徒さん側で締めくくりでした




