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34.カールさんのお家デート2


「あー、さすがにしんどい、笑い過ぎた

 アンちゃん、お茶取って」

私は手を伸ばして、コップを取ってお兄さんに渡す

ついでに私も飲もう


あ、おいしい、ふわりと、甘くて酸味のある果物の味と

紅茶の味が口に広がる

「おいしいです、果物のお茶ですか?」

「そう、ルレンティーだよ

 果汁と混ぜたお茶だね、これにミームの葉と合わせると

 さらにいいんだけどさすがにないからね」

あ、ルレンはオレンジぽい果物で

ミームはミントっぽい植物です

だけど、薬用効果が高いので、高価で一般宅にはさすがにないよね


「その内庭に植えようかと思ってるけどね」

おお、さすがです、上手に育てたら街中でも育つもんね


「必要なら言ってくださいね、採取してきます」

「うん、頼むよ

 そんなそうやって気にかけてくれるから、ね

 アンちゃんは」

ん?駄目だったのかな、袖の下有効だし

おにーさんの笑顔が見たいなぁーなんて思ってましたよ

はい・・・

不純な動機ですいません


「ま、話を続けようか

 つい、アンちゃんが可愛すぎて、告白しちゃたけど

 結果的には良かった」

にこり、といつもの笑顔で、ほっとする

いきなり、変わらないだろうけど、いつもっていうのが嬉しい


「あと、女性側は二股してもいいからね、出来ないだろうけど」

くすり、とカールさんは笑う


うう、ばれてますよね

性格的な問題と、もう一人・・・おすすめしないのは何でだろうか

ティエリさんがちっちゃいこびと族さんだから?


「まぁ、その話は、おいおいね

 今日は、昨日の件を話そうかなって呼んだんだ

 外で話すと、アンちゃん泣いちゃうだろうから

 誰もいないところなら、もう自宅に連れ込んじゃおうかなって思って

 ついでに、も狙ってたけど」

うう、そうですよね、はい、次から気をつけます


「次もちゃんと来てね、断らせる気ないから」

ううっ先手打たれた

そしてラムムン、すっごーーーく楽しそうだね

後でお仕置きしてやる


「今日、お泊まりしたくなったら言ってね

 いろんな意味で」

そう言ったお兄さんの顔は真剣だった



ああ、この人も優しくてかっこいいだけの人じゃないんだなぁって

こういうとき思う

私は、きっと、ううん、絶対、カールさんやティエリさんの

みんなの一面しか見てない

まぁ、みんな私の一部しか知らないみたいに

全部知ってるなんて、おこがましいことは言わないし、言われたくない


私も必死でがんばってきた

肩肘張らずにいられるのは、宿という居場所と

なにより一番の仲間で味方のラムムンがいるから

どうにかなった

だけど、昨日、私の認識や情報の甘さが露見した


「治療院のこと聞いたよ」

「はい」

「大変だったね」

ぎゅっとカールさんは私をラムムンごと抱きしめる

ラムムンは、いやがらない、だから、カールさんが本当にラムムンのことも

心配してるのがわかる

私は、心臓がばくばくして死にそうですが

ちょっと嬉しい


体の力が抜ける

人の体温というのはどうしてこんなに癒しの力があるんだろうか

だからこそ、人は人と、くっつきたいって思うんだろう

カールさんはだから、私を抱きしめるよって最初に言ってくれたんだろう


「これから、どうするの?」

「悩んでます」

私は素直にそう言う

「今のまま、ラムムンと週一で治療院に通ってフィルルンたちを使うのか

 宿と学校での対応にするかとか

 いろいろ考えました

 だけど、場所にしたところに迷惑がかかるし

 治療院にも迷惑がかかります」

うん、とカールさんもいう

「だから、悩んでます」


「本当はどうしたいの?」

「本当は・・・ですか?

 ・・・そうですね、はじめみたいにみんなを貸し出しできたらいいなって思います

 だけど、無理ですよね」

甘い夢は見ない、フィルルンたちに危険な目を合わせてまで

したいことじゃない

フィルルンたち、今は元気だけど、やっぱり怖いと思う


ラムムンと学校でお風呂した時にも、毒を塗布して来た人がいたもんね

あの時、烈火の如く怒って、もう二度と依頼を受けない宣言したぐらい

いやだった


考えれば、あの時と同じなのに

私は、甘い対応をしてしまったのかもしれない

二度来ません、と言ってしまってもいいぐらいのことをされたのに


ラムムンじゃないからなのか、それとも、治療してる人たちや

先生や助手さんたちがまだ好きだからだろうか


「だから、仕方ないんです」

そう言った私の声は涙で震えていた

あきらめたくない、だけど、怖い

危険な目に遭わせたくない、傷つきたくない


そんないろんな思いが交差して、私のためなのか

フィルルンのためなのか

全部ごちゃまぜで、冷静に考えられない


まだ蓋を開けたくない

このことには、蓋をして、考えたくないのに

カールさんは、ずばり聞いた

そして、私を抱きしめる、それは逃がさないようになのか

慰めるためなのか、と疑い、思ってしまうほど

私は混乱してしまう


「本当にそのままでいいの?」

私は首を横に振る、涙が散ってラムムンに落ちる

ぷよりと出てきたのはフィルルンだ

おいしーというように、涙を飲む


「アンちゃん、一端忘れて

 これは自分のことじゃないって」

え、とお兄さんを振り返る

「もし、俺のことだったらどうする?

 どんな対応を勧める?」


ラムムンはおもしろそうに揺れ

フィルルンは跳ねる

ついでにぺたりと顔にくっつき涙を吸い取って行った


「俺が使役獣使

 回復スライム持って、離れて仕事がしたい

 だけど、そのままでは危ない」


カールさんは、淡々という

その言葉は私に吸い込まれるように入って来て

頭の中のメモ帳に大きく記される

どうしたら、カールさんが離れて仕事ができるか・・・


私は頭を使う

状況を呼び起こす、フル回転で脳が動いていくのがわかる


押して引いて-、おにぃさんは相談&恋愛上手?

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