31.お礼に行こう3
さて、お次は、久々のガラス工房
「こんにちは、アンです」
そう言って入ると、おう、と奥から声がした
ガラスの熱気がここまで漂ってきてじんわりと汗がにじむ
表にはおじさんの作品はない
ガラスはまだまだ高くて一般で使われないから
注文方式は、色や形、使用目的などを伝えるか
デザインを見せてからの作成になる
「おう、待たせたな」
汗だくのおじさんが出てきた
「飲みますか?」
私は買ってきた飲み物を渡すと、おっと言うように顔をほころばせ
ぐいっとあおった
「かーっ、生き返るな」
一気にあおり、飲み干す
豪快です、でも、夏のあっつーい時と同じだもん気持ちはよくわかる
「おう、ありがとな
んで説教されに来たか」
「はい、それとお礼に」
私が素直に頷くと、おっとというように、のけぞった
「そう言われちまうと、叱るに叱れんなぁ」
と、がははと笑う
席を勧められたので商談の席に座るとふかりと柔らかく気持ちいい
それだけで、ここが見た目以上の高級店なのがわかる
「じゃぁ簡潔にな」
「はい」
「一つ目、今も気付いとらんだろうが瓶の仕組みだ
おい、へこんでないで出てこいよ」
そう言われたフィルルンたちはわてわてと
ラムムンの中から出てきた
「ほら、教えたとおり瓶の中入れ」
そう言って、小さな瓶の中にみんなつるりと飲み込まれた
フィルルンの核の大きさより小さな口と容量なのに
みんなはつるりと飲み込まれた
そしてふわりと中で落ち着いたように漂うと
杏と書いた文字の色が変わった
「あれ・・・文字が・・・」
「おう、目はいいな」
おじさんは嬉しそうだ
「持って見ろ」
「あ、はい」
黒の文字のものを拾い上げる、別に普通に持てる
赤の文字・・・あれ・・・拾えない、机にくっついてるような感じで持ち上げられない
白の文字・・・拾えないどころかつかめない、ものは見えてるのに
手がすかっすかって宙を掻く
「ど、どういうことですか」
「マジックアイテムだからな」
「え・・・それじゃぁ、全然お金足りないですよ」
「おう」
おう、じゃありませんよーーっ
「いくらですか、追加で払います」
「いらん」
えええ、いらんって言われてもいいんだろうか
ふよりとラムムンが揺れる、いいんじゃないのって言ってる
「おまえには、前借りがある
それのお礼と、時間内に仕上げられなかったってことにしとけ」
「はぁ・・・そうおっしゃるなら
今回はそうさせていただきます」
「次は、ねえよ」
そう言ってまた笑う
「おまえに言いたいのは、品質を確認しろってことだ
フィルルン、だったか?
そいつらは、最初から、わかってたぞ」
「え?」
ううう、一人だけわからなかったってこと?
そして、フィルルンに秘密にされちゃった・・・
うう、信頼がないのかな・・・
「まぁ黙っとけといったのはワシだけどな」
あ、そういうことでしたか
ならそれはいいや
お友達同士でいろいろ秘密もったりするのはいいよって
最初から言ってるもんね
話さなきゃいけないことだけ話してねっていう
約束をしてる
だから、自主性が高いともいうし、勝手気ままともいう
「お前もそうだが、皆価値を理解してない
こんなのをころがしゃ、盗られるにきまっとろーが」
ううう、もう、あほだと言われました
「すいません、まだ、理解しきれてないですが
頭ではわかりました」
「まぁそうだろうな、もし理解しときゃぁ
お前は、態度が違ってくるだろうな
普通なら偉そうな態度になるが
お前の場合は、びくびくしてるか」
ううう、否定できないのがつらい
天狗にはなれないけど、地球でいたとき初めて一万円持たされて
お使い行った時ぐらい緊張すると思う
「ま、ワシが言えるのはこれだけだ
職人だろうが、冒険者だろうが、普通の人だろうが
いいやつはいい、だますやつはだます
そんなもんだ、良い悪いじゃねぇ
そういうもんだ」
「はい、出来心起こさせないよう注意します」
「おう、ほれ、仕事の邪魔だ、帰れ帰れ」
そう言って、追い出されちゃいました
フィルルンが後から出てきたから、たぶん撫でてもらったんだろう
薄ピンクの核がそう語ってる
ドア越しに叫ぶ
「ありがとうございますっ!!」
って、馬鹿してごめんなさい
理解が遅くてごめんなさい
だけど、だけど・・・みんなひっくるめてありがとうございますっ
どこまで訂正したかわからなくなったよ、ふふふ
まぁこれでお礼編終了です
おっちゃーーんいい仕事しまっせー・笑




