25.来客
「おやっさん、ギルドのお人だぜ」
客の一人が、内に向かって叫ぶ
一階の一室半地下になったところが台所だ
場所を知っているものならばどこで声かけしたら
中に声が届くか理解している
だから、お客は、台所に近いテーブルを一つ明け渡し
ティエリとベッゼを座らせた
冒険から帰ってきて、いつもの風呂でも頼もうかと思えば
二人の様子がおかしい
ギルドに寄ったり、治療院にいたものたちから寄せられる情報で
スライムの主であり、かわいく親切な娘のアンちゃんが
傷ついて泣いて帰ってきたのがわかった
それでも、彼女のスライムたちは、風呂を頼みたがってる人を
なぜか理解し、はいらないのかよー、風呂いらないのかよー的に揺れ
ぺちょんぺちょんと跳ねる
「わかったわかった、使わせてもらうよ
ほら」
と金を払うと、どろりと纏わり付いてサービスといった感じに
マッサージを丁寧にして終わらせた
十匹もいたら早いもんで
つい頼む気のなかった人たちもその気持ちよさそうな様子に惹かれ
次こっちなーなんて、手を上げていた
宿の人間と、外部者がわかるらしく、金額を間違うと
ふよよんと揺れて、それでも払わないとぺっとお金をはき出し次にいこうとする
まったく、いい性格してる
商売人なスライムだと皆に笑われケチったやつは赤くなり
正規な値段を払って風呂に入っていた
「おう」
のっそりとおやじが出てくる
食堂の中が急に狭くなったような感じを受ける巨体
昔は、アックスピア、槍と斧が合わさった武器を剛毅に振り回し
敵をぶち倒していた冒険者だ
未だその覇気は衰えず健在なようだ
「あ、こちらです」
ティエリが手をあげる、こびと族と誰かが呟いた
こびと族には多少の恨みがある
彼にではないだろうが、夜の街のこびと族の人気はとどまるところをしらない
だから、あぶれた男どもの恨みを買う
「おう、ティエリとベッゼか久しいな」
「だな、なかなか繁盛してるな」
「おう、アンのおかげもあるな」
そう臆面もなく褒める
しかし、それは掛け値なしの事実であった
特色のある宿となれたのは、すべてアンのおかげだ
ギルド推薦宿になった時、なぜかこびと族のティエリが対応したのは
不快な気分になったが、アンが懇意にしているということで
話を聞けば、好青年だった
ベッゼとは冒険時代に世話になった
だから、もともといい仲だ
「今日のことか?」
「そうだ」
ベッゼは、珍しく暗い声を出した
荒事大好きで、もめ事大好きなこの男にしては珍しい
その対象がアンでなければ、おやじもまたいつもの喧噪として放置するか
楽しんだだろう
ここはそんな賑やかな冒険者と使役獣使学校の街なのだから
「あら、お集まり?」
からんと、食堂のベルを鳴らして入ってきたのは使役獣使学校の司書
麗しのカトリーナだ
肩にのせてるのは、アンのスライムじゃないだろうか
「アンは?」
「寝かせた」
「そうね、それがいいわ」
そう、呟くように言葉を零すと
形のいい唇から、ため息が漏れた
「泣いてた?」
三人は頷く
「そう・・・」
肩にのせたスライムを繊細な指が撫でる
撫でられたスライムはふよりと揺れる
「座ってもいいかしら?」
「もちろんだとも」
がたりと席を立ち、椅子を引くベッゼ
ありがと、というように、にこりと笑い腰かけた
「あたしも寄せてもらうよ
あんたたち、これでも食べときな」
どんと、大鍋や大皿料理を並べる
バイキング形式と、アンが言っていた方式だ
しかし、冒険者はよく食べる
赤がでちまうよ、と笑われ、そうですよねーとアンも頷いたぐらいだ
だから今までその形式で食事を提供したことはなかった
「そうさせてもらうよ、追い出されないだけ御の字ってもんさ」
冒険者の誰かがいう
宿泊者なら、部屋に押し込まれることはあっても
追い出されはしないだろう
しかし、それ以外のものたちはそうはならない
追い出され他の店で飯を食べることになる
ここの店は、安い、そしてうまいのだ
何もかもが良心的だし清潔だ
だから、駆け出しの冒険者は一番安い料理と酒で夜をしのぐことが多い
一応臨時閉店の札をかける
入り口の人たちやそろいの服を着た従業員が、事情説明をする
客がなぜ、と思うだろう、かわいいそろいの制服を着ているのは女性ばかり
だから客もいいところを見せたく、そして荒事をおこさらない
中はおとなしいが、今日は、大荒れなのは誰しもが知っているのだから
特殊形式のサービスで良識的に喰うこと
店主たちの邪魔をしないこと
それでも良いなら入店し
スライムに食事の料金や風呂の料金を払う
壁に並べた酒も料金が記され、それをスライムに支払う
飲み物に関していつものスタイルだ
水が飲みたい場合は、スライムに頼めば
そこら辺よりずっとおいしい水を注いでくれる
皿や肉の骨などのゴミは、まとめてテーブルにいるスライム行きだ
机がよごれりゃ、いつの間にかスライムが跳ねてきて
掃除していく
だから、この店はかなり清潔なのだ
おもしろがって料理をついでいたやつらも
徐々に静まり、飲食の音だけになると
注視されている人物たちは話はじめた
今日あったことのすべてを・・・
危ない、コピーがおかしくなって途中が途切れてました、日本語としておかしいよ、なところでよかったと自画自賛
とおもったら駄目だったよ、ご指摘サンクス




