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24.帰宅

泣いてぼろぼろの顔で帰ったらおじさんが誰にやられたって

吠えるように言って

おばさんが、壁に掛けてる槍を取り出して手渡した


え、どういうこと


「相手は誰だ、同意じゃないんだろう」

・・・えっと・・・つまり

私、襲われたみたいに思われてる?

うん、とラムムンが揺れる


そっか・・・ははは

うん、ごめん、そんな色っぽい話じゃない


私が笑うと、二人は怒気を抜かれたように、きょとんとした


「心配してくれてありがとうございます」

私は、もうかまってられないぐらい

心からつらいので、二人に抱きついた


さっき、おばさん先生のところであんなに泣いたのに

涙は涸れることを知らなくて

懐かしくてなれた匂いに包まれると

使役獣使としての殻は簡単に破れて、ただの『アン』になった


「聞いてください」

私は泣きながら言う

心配してる二人、そして、周りに集まった人たちにちゃんと説明したい


「ああ、聞くよ、ちゃんと聞いてるよ」

おじさんは低いやさしい声で撫でながら言う

おばさんまで泣いてるみたいで体が熱い

小刻みに震え、たまにしゃくりをあげるように胸が上下する


「回復特化のフィルルンたちが今日初仕事だったじゃないですか」

「そうだな」


「駄目でした、私が甘かったみたいです」

説明にならない、だけど結果だけでも伝えたい


おじさんの料理のしみたエプロンからいいにおいがしてくる

おじさんの匂いだ


「全員無事か」

おじさんは、ただ一言そう聞いた

だから、私はまた涙があふれた

みんなわかってるんだって・・・私は何度も頷いた

みんな無事だよと


それがわかったのか、フィルルンたちが

ラムムンの上にのっかって、おじさんたちにぺちょんと飛び乗る


「よしよし、おまえらがんばったなぁ」

おじさんは、片手でフィルルンたちを代わる代わる撫でてるのだろう

そんな気配がする


「あとで、話ししような

 私たちも、少し楽観的すぎたな

 飯を食うか?それとも寝るか?」

「今は、寝たいです」

私がかろうじてそう言うとぐらりと世界が揺れた

私は慌てておじさんにしがみつく


「えっ、あっ自分で歩けます」

「いい、娘が泣いてりゃ親が寝かしつけんのは

 どこの世界でも当たり前だ」

私は遠慮する言葉を言おうとした口を閉じた


私も二人のことは、異世界の両親と思ってる

だけど、お互いそんなことを言ったことはなくて

今、初めて聞いて、だから、違う意味で泣けてきた


「ありがとうございます」

ぎゅぅと、抱きつく

「おう」


屋根裏部屋に入りベッドに入れられそうになって

お風呂入ってからベッドに入りますーと慌てると


いつも通りが一番だな、と笑われながら撫でられて

おじさんは降りていった

ぱさぱさと服を脱ぐ

やぶれかぶれになってる

だから、おじさんがあんな勘違いしたんだなと思うと

少し笑えた


ラムムンはフィルルンで一緒にお風呂してくれて

私はぱたりとベッドに転がり意識を手放した


だから知らない

心配したギルドのおにーさんたちが来たことも

そして、お迎えを忘れたコムムンたちをカトリーナさんが連れてきてくれたことも

コムムンは自力でお戻りしてきたことも

なんにも知らないで私は眠り続けた


お家では、まだまだ子供ですが、それでいいんです

無理は禁物なんですから

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