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23.秘密の依頼書

いつもわいわいがやがやしてる休憩室は

しん、と静まり返っていた


かわらない風景なのに、人の気配だけで

こんなにかわっちゃうんだなぁって半ば現実逃避してしまった


「ギルドの監視をつけるなど・・・」

ぎり、と歯が擦れる音

ギルドの監視?なんのことだろうか


たしかに、おにーさんは来てくれてて

契約書を確認された


「しかし、予防をしていて正解な事態が起こってますけどね」

にこり、と笑うおにーさん

その笑顔はいつも違って冷たい笑顔だった


「契約書に不備はありませんでした」

もう一人のギルドのおじさんが

おにーさんが掲げる契約書を示して説明した


私が迎えにいくまで、フィルルンがその場を離れていなかったから

仕事をしなかったという訴えは簡単に退けられ


かつ、逃げる仕草をしたら仕事を休憩または終了させてくださいの

文面が役にたった


フィルルンのあの様子で逃げないとは言わせない

あんなに怯えてた


「あ、アンちゃん、他の子も返すね」

「え?」

振り向くと、おにーさんは、袋から、瓶を取り出す

それは、フィルルン用に作った杏印の入った平べったい小瓶


「いい仕掛けだな」

もう一人のギルドの人が褒めてくれる

なんのことだろうか、と思いつつ頷く


「アンちゃんには残念なことに

 同様の事件が3件起こった

 残る2件はまだ大丈夫だったが、こちらの引き上げを拒否したため

 まだ獲得はできてない」

そういった途端ラムムンが不安そうに揺れる


「そう、すぐさま行く方がいい

 アンちゃんが監視の契約を結んでくれたから

 あとの処理はギルドで始末できる

 契約書をありがとう、返却するね」

「はい、ありがとうございます」

そういうことにしてくれて、動いてくれてるんだなってことがわかった

契約書を受け取りラムムンに戻す


「アンちゃん、しばらくこのお仕事停止ね」

「はい、そうさせてください

 フィルルンたちも無理だと思います」


そういうと、覗いていた人たちから悲痛な声が上がった


私は立ち上がる


あとは本当に申し訳ないけど、お任せしよう


「こんなことになって、本当に残念です」

そう言って、私は先生に頭を下げる


入口にいる人たちに

「週一度、前と変わらず私とラムムンは来ますから

 心配しないでくださいね」

そういうと、ほっとした声と

とめられんですまんかったとか

そういう声に包まれて涙があふれた


「いいです、皆さんは、治療に専念してください

 そう思って頂けただけ嬉しいです」

そういうと、道を開けてくれ、私は涙とともに

その治療院を出た

ラムムンはすぐさま羽スライムになる

ばさりと声のする方にある治療院に向かう


ラムムンに涙と声は吸い込まれる

だから思い切り泣いた


「着く」

うん、わかってる、だけど涙が止まらない

「いい、出して」

ちょっといやんをしたけど出してくれた


「アンちゃん・・・」

治療院の先生が哀しそうな顔をする


「問題を引き起こしてしまってすいません」

私は謝る



今までチビムンたちのお仕事場はいいところ過ぎた

宿は家族同然のおばさんたちがいるから絶対安心だし

使役獣の学校だから、その心配もなかった


使役獣とかかわらない普通の人たちの反応を理解してなかったのが

今回の問題だと思う


いいものがあれば欲しくなるのは当然だ

ここの治療院の助手さんだって

欲しいって言って、くれましたなんて言ってたけど

冗談じゃなかったのかもしれない


「ギルドに監視を依頼していたのはもうご存知かと思いますが

 問題が起こりすぎましたので一時仕事の停止を命令されました」

先生は、固い顔で頷く


「使役獣を引き取りますので、返却をお願いします」

「あずけっぱなしじゃ駄目かな?」

そう言われて、心が折れそうになった


この優しい先生ですらこれなのだから

他の箇所の先生や助手さん、患者さんが我が物にしようとしたのは

よくわかる


「使役獣なので、他の方が持ったままだと

 弱りますし凶暴化します

 それに、今のまま貸出をすることはできません」

私は説明を入れて、拒否した


私の堅い意志を感じ取って、ため息を吐き連れてきてと言った


「あっ」

ぴょんっとフィルルンが抱きかかえてたその人から飛び出す

頑張って飛び出しました的につぶれてたけど、どやっとして

ラムムンの中にさっと隠れてしまった


「もう一匹は?」

「さぁ、出しなさい」

先生はもう一人の助手さんにいう

朝、欲しいと言った子だ


かたくなに首を振る


「困ったねぇ」

先生はそう言うだけで、動かない

え・・・と思った


疑うのは良くないけど、もしかしてグルなんだろうかと・・・


「そう」

と、ラムムンが答えた


「捕獲石ある、怖い」

とラムムンがフィルルンの言葉を片言で伝える


だから、フィルルン最初逃げたんだ

手が怖かったんじゃなかったんだ


「捕獲石を解除してください」

「あらら、そこまでばれちゃうのか」

先生は、黒く笑った


するりとネックレスを外す

そして、それをぱりと割ると

フィルルンが飛び出して

私に超特急でくっついてきた


痛い・・・だけど、ぎゅっと抱きしめる

ちゅう、とキスをしながらぺろりと舐めると

ほっとしたように、ラムムンにくっつき吸収された


「この件もギルドに報告させてもらいます

 先生、どうしてですか?」

私は聞く


「君は君の価値を知らない

 そして君の従獣もね」

「そうかもしれません

 しかし、この子たちは、従獣ではありません

 私の使役獣です

 決して、他人が契約の上書きができる従獣ではないんです」

従獣は、山先生も持ってるスキル

調教スキル持ちができる野生の子たちを捕まえ

仲間にし一緒に冒険する子たちのことだ


だから、その調従獣使より強い強制力を持てば

契約の上塗りができる

できないようにする方法もあるらしいけどそれは従獣たちからの方法で

調従獣使たちは皆口をつぐんで秘法の一つらしい


「使役獣使はずるいねぇ・・・そんなことまでしてるんだ」


「そうせざるを得ない状態になってるじゃないですか」

私がこぼすように言うと

彼女はわぁっと泣いた


ずるい、ひどいと・・・


私は席を立つ

ラムムンが行こうと言うし、これ以上いても状況が良くなることはないだろう


「私が必要ならば、週一契約は続行します

 もし治療院全体の雰囲気が悪くなるようでしたら

 辞退しますので、ご連絡ください」


「君は、強いね」

先生は、暗い瞳で私を捉える

強くなきゃ、なれないんです

心の中の私は泣く


一学年の時、あの裁判で、みんなの使役獣を吸収した時から

私は強くなることを決めた


「はい、そうなるようにと教わりましたから」

そう言って私は治療院をあとにした


もうひとつの治療院で泣いた

おじぃさん先生の所ではないけど

最初頃からずっと行ってる治療院だったから

せめて一つだけども問題がなくてよかったと思うと


なけて泣けて、おばさん先生に抱きしめられて泣いてしまった


フィルルンたちは、元気で、薬草のおやつをもらってた


「みぃーんないい人ばっかりじゃないからねぇ

 アンちゃんは優しい子だから

 みぃーんないい人になっちゃうんだろうね

 もう少し考えてから、また再開して頂戴ね」


私は、頷く、温かなミルクティは

おばさんのように優しかった


じんわり涙を浮かべていただけたでしょうか、アンちゃん学んだことをがんばって体現しております

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