22.アンちゃん到着 (ティエリ視点)
巨大な羽の生えたスライムことラムムンが
落下するように落ち
どろりと中にいた主人を吐き出す
「何かありましたかっ」
「アンちゃん・・・」
慌てた様子のアンちゃん
彼女になんと伝えたらいいのだろうか
「問題発生かな、契約書はある?」
彼女の契約に不備があるなら
ギルドとして対応することが出来なくなる可能性がある
だから、先に確認してしまわないといけない
ラムムンはぽんっとアンちゃんから飛び降り
必死という様子で跳ね辺りを探す
自分の分身である子に何かがあることを勘づいていた
「はい」
とラムムンを追いかけ、契約書を取り出すと
本来なら問題ある行動
他人に契約書を渡してしまった
信用してくれている、ということならば嬉しい
しかし、これは、危ないので後で注意しておこうと
記憶にとどめる
契約書に目を走らす
上に影ができベッゼも覗きこむ
「問題ない、な
指定の場所、時間、金額、契約名」
ぶわりと、指定したものがすべて光りだす
場所と契約者のみだが
それで今は十分だ
「ギルド監視条例
契約書違反により罰則を宣言する」
アンちゃんにはまだ知らせてない
アンちゃんがギルドにきて今日から
ここで使役獣を働かせる
それが問題なく行われているか
ギルドに「監視」するよう「依頼」したのだから
その契約により、ギルドは人を派遣した
そして、その結果、3箇所で早くも問題が発生した
1つは、受態者、治療院に受けに来たものが攫って帰ろうとした
その為、治療院側が、業務を停止
部屋に確保したままでギルドにも渡さずにいる
1つは、内部犯行、治療院側の人が使役獣を捕獲し
仕事以上の使役を行使命令
業務違反で、今回は1件目と真逆で、受態者が確保し
監視者の手に渡した
そして、もっとも問題のある場所
ここでは使役獣自体が未だ見つかっていない
治療院側は逃げられたと証言している
「フィルルン」
とたぶん、小さなスライムのことだろう
彼女のつける独特な名前で彼らを呼ぶ
ラムムンも飛び跳ねあたりを探すが見当たらない
どこかに封じられたか、と心配した時
アンちゃんが、座り込み壁をつついた
「フィルルン、私だよ、アンだよ」
壁に指先で触れる
使役獣は規定の場所から離れていないことが確認できた
彼らはかなり知的だと理解した
ヒールスライムだからといって攻撃手段を持たないわけではない
スライム全種が使える窒息や取り付きは可能だ
しかし、彼らは、決して人を傷つけなかった
そして、ちゃんとその場でとどまった
それはアンちゃんとラムムンが必ず助けてくれると命以上の信頼を置いて
アンちゃんの指先にピンクの膜が取りつく
そして、すがるようにその手を包んでいった
「もう一人は?」
というと、片方のスライムがぺっと吐き出した
片方のスライムは微動だにしない
アンちゃんの顔色は真っ青だ
だけど、歯を食いしばり
むりやり笑顔を作った
「頑張ったね、ありがとうね」
二体のスライムを片手にのせ、撫で褒める
「じゃぁラムムンの中でおやすみししてようね」
ゆっくりと、問題ないからね、というように
囁く、優しく撫で、そして、ラムムンがその二体を包み込み
その姿を飲み込んで隠した
彼女はラムムンをのせ
立ち上がる、頬に涙がつたる
それを、ぐい、と袖で涙をぬぐった
「お話を聞かせてください」
初めて聞く、アンちゃんの硬い声
だけど、それはお互い様だろう
ギルド職員と依頼者の関係
アンちゃん、頼むから依頼なんてしてないなんて言わないでね
いつもみたいに空気よんでね
アンちゃんがんばりました
矛盾が生じてました、数
一件目が返却されていないという形にしました
これでつじつまがあったかな




