21.緊急事態発生(ティエリ視点)
「緊急事態発生、現場へ向かえ」
連絡石で赤色で震えそう発した
やはり、と思い
そして、アンちゃんのことを思えば
心が締めつけられた
「ティリエ、こちらで処理するか?」
緊急対応担当の同僚のベッゼがそういう
「一緒に対応する
実は、アンちゃんにギルド契約してるの言ってないんだ」
そう笑うと、ベッゼは笑い
そして、俺の頭をくしゃりと撫でた
初めてあって対応した時から
かならず自分の所に来てくれることに好感を持った
表情豊かで、気が利いて
おもしろくて、そしてかわいい人
こびと族である自分に偏見も持たず
外で会ったとしても、気遣わせない程度に目線を合わせ
楽な体勢で話ましょという風にしてくれる
いい子だ
だから、いつしか彼女のことが気になった
学校を卒業して、あれだけの実績をもつ彼女のことだ
だから、王都へと向かうだろうと思ったら
彼女はびっくりするような方式を打ち出し
「かけもち」という言葉を教えてくれ
彼女的に無理のない方法で両立していった
前代未聞だった
「ティリエの場合は、女性の掛け持ちだな」
なんて言われたが、アンちゃんには黙っておくよう
釘をさしておく
こびと族は多情だ
そして、それを知っている女性たちは
こびと族を見れば、それを狙ってくる
こびと族は夜の魔法という特殊技能を持つ
小さな体のままでは、意中の相手を満足させることができないし
自分が満足できない
だから、相手の体の大きさ、もしくは望む大きさに変化させることができる
だからこそ、性を求める女性たちはこびと族を見ると
一夜の相手を望む
妊娠はしない、だからこそ、いいのだ
相手を見つけるまで、契約を結ばない
契約を結んでから相手の女性は初めて受胎できるようになる
失礼ながら、最初、アンちゃんもそうかと思った
だけど、彼女は違った
いつも変わらない笑顔を向け、楽しそうに冒険や学校生活を送る
異世界人ということで、こびと族ということを知らなかったようだが
それを疑問視し声に出すことはなかったから
今の今までアンちゃんには、もうひとつの顔を知られることなくきた
いつしか身の回りを整理しはじめた
まるで夜の恋人などいないというように
それは、こびと族が恋をしている証拠
子供のころ、といっても性に目覚めたあと
ばかばかしい、相手がいても複数と関係を持てばいいではないか
と思っていたが、変化は確実に自分にも訪れていた
夜の顔は潜めた
なんの約束もない関係
昼の顔、ギルドのティリエがそれであると知っていても
だれ一人訪れてはこない
人伝に、夜に戻ってきてほしいという声を聞いた
それぐらいはモテてたかなと自信が持てた
「ティリエ?」
「いや、悲しまないかなって思ってね・・・」
「そうだな、彼女は優しいからなぁ」
ベッゼも頷く
「契約のことはこっちが上手く言うから
治療院もしくは、外部犯行者への通達は頼むね」
「あぁ、しかし、取り越し苦労ですめばよかったのにな」
深いため息、親心を起こさせるとか
妹みたいに心配すると銘打って牽制しつつ
自分に漏らされた
だから、ベッゼもいい顔をしていない
こいつは根っから検挙が好きだ
その為だけに鍛え上げたといっても過言じゃない肉体とスキルで
人を暴力的にねじ伏せる
説得は、その後だ
まぁ、彼らもベッゼの顔を見ただけで飛びかかってくるから
おあいこだ
さーて、アンちゃんの可愛いスライムを盗もうとしたのは
どこのどいつかな?
おにーさん、本気で怒っちゃうよ
おにーさんの過去とこびと族についてー、しかしやるなおにーさんなのです




