19.治療院にこんにちは
「今日からなんだ」
ギルドで、クエストの受付をすませながら
ティエリさんに治療院デビューなんですよ~とご報告をしてみた
「どこの治療院?」
かさこそと、カウンターに地図を出してくれたので
こことこことと指をさしていく
「うーん、8か所かぁ・・・」
ん、何かあるんだろうか?8か所は駄目なのかな?
それとも、行ってるところに実は問題があったとか??
「最初だから、2体一緒のほうがいいんじゃないかなぁって思ったんだよ
疲れたりしたら交代できるでしょ?」
あ、そうかも、フィルルンは昨日心配そうにしてたし
どちらかといえば慎重派
二人一緒ならいいかもしれない
さすが、おにぃさん気遣いできるいい人だ
「たしかに、そうですね」
私は頷き、ラムムンを通してフィルルンに聞いてみる
「どうかな?」
一人でできるもんって言われちゃうかもなので
一応確認、使役獣だって意見があるのです
二人がいいとの返事なので二人体制でいっちゃいましょう
「じゃぁ、この5か所にします」
私は地図を再び指差す
なぜ名前で言わないか不思議に思ってると思いますが
お分かりの通り、舌をかみそうな名前だったり
似た名前すぎて、間違うんですよ
もう、これ以上記憶地獄はいりませんっということだし
人に口頭で話すときは、通りの名前と、建物外観とか中にいる人物でお話してます
まぁ、みなさんも気持ちは同じなのか
名前ってあんまり聞かないんですよね
私的にも助かるのでいいんですけど
受付を終えて、がんばってねっと見送られて
無事治療院に到着です
「おはようございますー、アンです」
「あら、おはようさん、今日は早いのね」
にこり、と治療院助手さんたちが集まってきてくれる
ラムムンは人気だ
ぷっとラムムンはフィルルン二匹を吐き出した
「きゃっ」
「まぁっ!」
目をまんまるにして、おっかなびっくりだったり
嬉しそうに笑い受け取るおねーさんたち
いや、ラムムン今の吐き出し方はどうかと
そして、なぜどやぁ?
まぁいいけどね
さて、とりあえず説明しちゃいますか
ね、フィルルン
「今日からこの子たちがラムムンと私の代わりに
治療者とお風呂屋さんします
一応これが料金表です」
巻物をしゅるりと広げて示してみた
巻物には、ギルドと学校で培った形式
絵と文字で分かりやすく書いてみた
文字のわからない方もいたり、地球と同じでいろんな言葉があるらしく
他国から来てる人にもわかるようにということで
絵と文字形式でがんばっちゃいました
「そうなの、すごいわねぇ」
片方のおねーさんは、フィルルンを転がすようなに撫でてる
フィルルンも嬉しそうだ
「先生に報告してきます
それで構わなかったら、今日から働かせてもらいますね」
「駄目って言わないわよ
もう、猫の手も借りたいんだから」
くすくすと二人声をそろえて笑う
彼女たちが余裕ない仕草をすることはないけど
実際は本当にいそがしい
だけど、治療しているたちの不安をあおらないように
治療者や助手さんたちは、余裕のある態度で接している
治療者心得の一つである
おじいさん先生は、きつい言葉や態度だけど
余裕がないってことはないもんね
仕事は早いし腕も確か
だから、どちらかといえば、冒険者の人や男の人が多い
ここは、年配の方や女性が多い
「そうですね」
私も笑いが伝播してくすくす笑う
ラムムンは万能スライムで来てるから
ほんと私の中でなんでもできる子
だけど、フィルルンたちは回復特化の為
能力値を下げないため、食事制限が必須なんだよね
だから、ゴミご飯は禁止
お水が必要そうなら新しい井戸水汲んであげてくださいねー
なんて説明中
一応、フィルルンの中に
保水石でおいしい水も各自持ってもらってる
足りない時とか、ポーションつくる時にはそちらを使えるようにしてる
だけど、最初だからポーション作りはなしね
とフィルルンには伝えてる
フィルルンは保守派だけど、がんばりやさんだから
無理しちゃうだろうから
先に今日のお仕事はここまでねっていうと
安心してお仕事に掛れる
お風呂と回復専用ということで
他は秘密なのです
「おはよう、にぎやかだと思えばアンちゃんじゃないか」
柔和な笑顔を浮かべた先生が二階から降りてきた
朝の巡回が終わったのだろう
「せんせー、アンちゃんがスライムくれたんですよ」
「貸出ですよーっ」
「えー、くださいよー」
「まぁまぁー、使役獣だからねぇーおいそれと融通はできないんだよ」
にこにこと先生は、フィルルンを撫でながら言ってる
きゅっと小さくなるのは、大きな手がこわいからかな?
「それで、一応作ってきました料金表です」
「あぁ、これはいいね」
治療院は教会と病院の合いの子だから、有料施設
ただ、御部屋代やご飯代はない
だから部屋が汚いとか衛生管理がなってないということもある
事実そこまで手がまわらないからしかたない
私も慈善事業で、ただで治療やお風呂をしてあげるわけにはいかない
そうするとそういう仕事をしてる人に対して迷惑がかかるし
私もお金が必要だしね
「この子たちに、料金渡してもらいましたら
治療やお風呂開始しますから
その手続をするため、助手さんお1人借りてもいいですか?」
「もちろんだよ、それはアンちゃんがいた時と同じだね
そうか、別々にっていうわけにはいかないのか?」
「初仕事ですし、その内、1匹体制になりますので
今のままの体制でいたほうがいいと思いますよ?」
あんまり楽を覚えてしまうと、あとが厳しい
っていうのは、自分にいえることなんだよね
プロロンが部屋掃除をしてくれるようになってから
かなり楽になったからねー
ちょ・・・っとだけだよっ
ちょっとだけなんだけど、太りました・・・
うう、おばさんと、駄目ねぇ
と笑ってますが今日は走りまくりますっ
「あ、そうなのかぃ、それは残念だねぇ」
うん、ほんとその気持ちは分かります
「本人たちが物陰に隠れたりしたら疲れてますといってますので
休憩させてあげてください
学校が終わる時刻に迎えに来ます」
学校はないけど、鐘の音は聞こえるからね
今日は、街を出るけど、それを目安にしてくれると嬉しい
「はい、わかった
じゃあ、ここにサインだね」
「はい、お願いします」
しゅるりと魔法文字で、先生はサインを記してくれる
これで雇用が決まった
魔法文字は自分の力を使って書く文字だから
偽ることができない
だから大事な書類を作る時は、魔法文字を使う
私も学校で習った
「私の週1の雇用はどうしましょうか?」
「きてくれないと困るよ?」
あ、そうなんだ
「じゃぁしばらくは続行しますね
じゃあ、二人ともがんばるんだよ」
私はふにょりと二人を撫でる
不安と、やる気が混ざったような色
手には吸いつかず、離れたから
離れたくないってことはないみたい
ラムムンなら離れたくない時は逆さに振ってもくっついたままだもんね
そんな感じであと4か所廻って
フィルルンたちの初仕事開始
「じゃ、私たちもガンバロっかー」
羽スライムになったラムムンがふわふわと飛びながら
きらりんと光った
やる気満々です
ぺっと吐き出して、驚かすのが最近のラムムンのはやりです




