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12.新しいお店

予想通り、ルイズ先生との会合はさっくり終わって

リーナさんと街ブラデートです


「ついでにデートして帰ってもよかったのよ?」

なんて冷やかされましたが、いやさすがに心臓が持ちません

以外と奥手よねぇ、なんて笑われましたが

奥手だから苦労してるんですよーっ


「そうそう、今日紹介するのはね

 新人のお店なんだけど、アンに似合うと思うのよ」

そういって、私が入らない裏路地にするすると進んでいく


ギルドのお使いで大概の道は通ったと思ったけど

やっぱり複雑な小道は、まだまだ通ったことがなくて

民家の間やその軒先にちょこんと商品があったりとなんか不思議な通りだ


「廃墟を崩して、出来た通りなのよ」

「え、廃墟」

私はうーんと記憶を呼び覚ます

廃墟なんてあったかなぁ、ここら辺に


「アン、お化け屋敷とか言ってた家よ」

「あっ」

そうだ、あったあった、おどろおどろしい黒い壁の大屋敷

近く通ると怖かったもんね

ラムムンは、べっつにーと気にして無かったけど

冷や汗もので走り抜けてたなぁ


「そっか・・・あのお屋敷か・・・」

「王都へ出仕してね、戻ってくるつもりが、あちらに居を構えて

 もう戻れないって泣く泣くあきらめたみたいよ」

「お化け屋敷なのに・・・」

「彼がいたころなら、なおさらかもよ」

くすり、とリーナさんが笑う


「魔術師だからね、連日研究して

 夜に変な高笑いふよふよ飛び回る発光体とか

 アンの言うお化け屋敷みたいな感じでしょ?」

「うん、近いかも・・・

 いやかも、それ」

「でも、本人は研究してないとき、まぁ数日だけだけど

 その時はすごくいい人で、学校やギルドへの貢献してくれてた人なの

 だから、多少の変わり者っぷりは、目をつぶるし

 未完成の研究結果は、決して屋敷からは出さなかったからね」


真っ黒で、怨念がついていそうな外壁

公園とかにありそうなきれいな鉄格子ならいいけど

ぎさぎさにとがってさも痛そうなものが、取り付けられていたのは

そういう理由だったのか


「なんか、聞いちゃえば、納得できるね」

「そうなの、まぁ、いい人ではあったんだけどね

 アン、あなたもよ」

カトリーナさんが私に向かって真剣な表情をした


「彼もね、王都に出仕する気はなかったのよ

 だけど彼の功績はあちらにとってすばらしいものだった

 だから、彼を囲みにきたの」

「それって・・・」

「ええ、王命令よ」

やっぱり、強制的だったんだ


「リーナさん、もしかして・・・」

そう私が言って続きを言おうとしたら

悲しそうなほほえみをしたリーナさんの表情が目に入った


やっぱり、と思った

どちらからともなく手を繋ぐ

ラムムンはその二人の間をさらに埋めるようにぺっちょりとくっついてくれた


お化け屋敷とか言ってごめんなさい

恋人さんのこと・・・悪く言って


だけど、言葉には出せない

なんの言葉も正しくない気がする・・・


「いいのよ、もう過去なの

 彼はね、死んだから」

えっと私はリーナさんを振り返る


「やだ、そんな顔しないでちょうだい

 もう数年も前の話よ

 ただ、私が売れなかったの、あの屋敷

 お化け屋敷じゃないけど、私たちもモンスターハウスって言ってたの

 だから、アンから聞いたとき、にてるわってすごく思って嬉しかった」

だから、売れずに、売らずに

思い出のまま残して置いたんだろう


「でもね、アンを見てると前に進まなきゃなって思えて

 若い人たちの工房通りにしてみたわけ

 賃貸五年間五カチよ、それ以降は、その料金が年間賃貸料になるの

 それに裏通りでしょ?」

私は頷く

「知らない人はなかなか入ってこないし、立地としてはあんまり良くないからね

 売れ始めたら出て行くし、五年って結構いい年数なのよ

 いろんなこと、踏ん切りつけるのにもね」

「そうですね」

そう思う、五年、十年経つと私も地球のこと

家族のことを思い出す回数が少なくなってる


あっちでは何してるのかな、大学生なのかな

とか思ってたけど、こっちでもがんばってるよっていう呼びかけに

いつしか変わった


区切りっていつの間にかについてて、つけるとしたら五年なのかもしれない

まぁわたしの場合は学生生活の最後が区切りだった気がするけどね


「はい、ここよ」

小さな間口から入るとわっと布の匂いと甘い香りに包まれた


入り口に飾ってある服はシャツワンピース風

共布レースが女性らしさを演出してる


「わぁっかわいい」

その一つを手に取る、厚めの織り生地だけど、重さはそうない

そしてなにより、出るところ出てなくても、大丈夫な服最高です

すっぽりとかぶるタイプの膝丈ワンピースだ


「ギルドの人とデートの時は、下にこれ履きなさいよ」

幾重にも重ねたコットンスカート

下履き用スカートで、あるくとわさわさするんだよね

まぁ今回のはそこまでじゃないけど下から見てもパンツ見えませんな

ガード用スカートだよね


「え、ズボンじゃだめですか?」

「いいけど、色気ないじゃない」

色気・・・私に足りないのものの一つかも・・・

カトリーナは、出るところ出て、足もほっそーいし

きれいだけどね


私は、すべてにおいてそこそこだもんね


「まぁ着せてもらいなさいよ」

「はい、ご試着ください」

小さな女の子がにこにこ笑ってる

あれ、この子がつくってるのかな


「店主のハレアです

 こびと族なんで手先が器用なんですよ」

小さな手をぱっと広げてくれた


「こびと族・・・」

「そうよ、まさか、アン

 ただ小さいとか思ってなかったでしょうね」

「思ってました・・・」


「結構前途多難ね」

二人で顔を見合わせたのは私のせいなんだよね?


新しい女の子でーす、それもこびと族のお洋服の店長さん、ハレアです

今回は名前がさくりと出て良かった


やらかした、予約のはずが・・・うう

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