11.要相談いたしましょうっ
午後の授業を終えると、ルイズ先生が待っててくれてて
相談室はお流れとなった
ごめんね五学年
また今度しましょう
特に急ぐ人はいないって言ってくれたからよかったけど
明日午後から空きだから、相談にのりますよ、と言うと
絶対ですからねーと民族大移動していった
うん、みんなせわしないなぁ
そう呟くと、アンの方がせわしなかったぞと
言われちゃいました
「あれ、おにーさん」
「こんにちは、アンちゃん」
「はい、こんにちは」
ギルドのちっちゃいおにーさんが、カフェにいた
びっくりしたこんな所で会えると思ってないから
心構えができてないよ
ラムムンがおちついてーって言ってくれなきゃ
私変なこと言うところだった
危ないっ
ありがとうラムムン
「ギルドに少し関わる件もあり、君が懇意にしているギルド職員の
ティエリに来てもらった
間違いないね」
「はい、いつもお世話になっております」
「いやいや、お互いさまだよ
こっちもアンちゃんが来てからすっごく助かってるしね
だから、今回は少しばかり恩返しかな」
そう言っておにーさんは笑う
そういえば、お名前きくの初めてかも、ティエリさんね
山先生はぐるりと部屋を見渡し
隙間がないことを確認している
まぁ隙間があっても大丈夫だけどね
もうちゃんと集合ができるいい子ですからっ
「早速だが、分離してもらっていいか」
「はい、ラムムンお願い」
うんっという元気な声とともに
ぽぽぽぽーんっという風に
淡い色のついた小さなスライムたちが飛び出していく
「うわぁぁぁっ」
おにーさんを見ると、びっくりではない歓喜の表情
「すごいよ、アンちゃん
これ、全部君のスライムの子だよね」
「はい」
「ラムムンは無事なんだよね」
と本人に話しかけてる
どやぁっとぷよりん動いてるけど
なんか、むかつくー
殺気を感じたラムムンが、うん平気よー
問題ないよーなんてかわいく揺れてる
もう、調子いいんだから
「そして、これを見てほしい」
「複核スライムっ!!!
これを何処でっ」
もうおにーさんのテンションはマックス
椅子の上に立ちあがっちゃってます
「これも、すべてアンとその使役獣のおかげだ
ラムムンは、他者の仲の良いもの、すなわち共和者限定せねばならないだろうが
その使役獣に影響を及ぼすことが可能だと推測する
これは、もともと私の老スライムで、あと数カ月で寿命を迎えるところだった」
「ああ、ルイズ印ですか」
「そうだ、あの子だ」
なんだろうそのルイズ印って
「スライムはもともと数が少ないのは、知っているな
今ではお前のおかげで人気があり
育てやすくはなってきたが、俺の時代はそうではなかった
このスライムは、マジックスライム、魔法特化のスライムだ」
おお、スライムの中でも上位種ですね
個体数も少なく
核は、魔法を使う魔石や強化アイテムとして便利だから
乱獲されやすい子ですね
うちのラムムンですか?、うん、そこらにいっぱいいる種類ですよ
だから、混じらないようにっていう気分になるわけですよ
「戦闘時にかなり使役したから、それからは引退してたんだがなぁ
また共に狩りにいけるな」
そういうと、先生のスライムは、おうっというように揺れ
四つの核をぴかりと光らせた
「こいつが、ラムムンに身を預け、その核の表面を割ってもらい
新しい核が出てきた、その破片で作ったのが三つの核だ
分裂というより剥離だな
たしかに蓄積された経験がある故弱体化もしておらん
そして、新しく生まれた三体のスライムを飲み込み
こいつは、複核スライムとなった」
「たしかに、死亡したあと、核の表面を削り取って
中のつるつるの部分だけにして魔石にしますから
理にかなってますね
それが複核スライムの作り方なんですか
じゃあ、アンちゃんのもできるんですか?」
「理論上は可能だ」
と私に二人の視線が集まる
「たぶん、無理だと思いますよ
個性が出て来ちゃってますから」
うん、本気で皆個性豊かです
「くっつきたい人いますかー?」
全員がふるふるふる
「とのことです」
「駄目かぁ・・・・」
「駄目ですねー」
「まぁ、生まれた瞬間だけの限定かもしれないしな
それは、今後の研究と実験が必要だな
さて、これを見てどう思う」
「言葉にならないぐらい、画期的です
そして、危ないです」
と私とラムムンを見る
「そう、そこだ
今日ギルドに持ち帰ってほしいのはその件だ
そして、今からアンと相談だが、悪いがルイズ発の情報としてほしいのだ」
「おっしゃりたいことは理解しました
これ以上目立つことをしてはアンちゃんは
この街にいられなくなるでしょうから」
「理解が早くて助かる」
「規格外なのはいまさらですしね」
あれ、なんか和気藹々ほのぼのしてるけど
けなされてるような、変わり者扱いされてるような気がします
「で、どうする?」
「目立つのはいやなのでお願いしたいです
そんなに珍しいことなんですか?」
「ああ、王から褒章がでるぐらいだな」
それはかなりお断りしたい
「それが欲しいなら話は別だ
王都出仕が可能だろうし、名を売るチャンスだぞ」
「いやいいです」
私はもう少しましに、オブラートに包んで答えるつもりが
つるりと口から出たのは、あっさりとした拒絶だった
ラムムンが面白そうに核の色を変える
うう、やらかした
二人は、二拍ほど置いて大爆笑だ
「ううう、やらかしました・・・大失敗です」
「まぁ、いいと思うけどね」
そうギルドのおにーさんは笑う
「こちらとしてはこの町にずっといてもらいたいしね」
「前も言った通り骨をうずめる覚悟ですからっ」
そう言うと二人はまた楽しそうに笑った
「それで、色が少しずつ違うのは個体識別の為か?」
おっ山先生さすがです
ほとんどわからないぐらいのかわりっぷりですが色付いてるんですよ
「えーと、能力差なんですよ
ラムムン曰く、小さいころから成長させると
特化スライムに勝るとも劣らない状態になると
だから、頑張りたいとのことです
五匹以外は、十匹分かれで
回復特化、戦闘特化、お風呂掃除などの所謂宿特化
先の話ですけど、羽付きになって伝言配達特化
ラムムンと同じ万能のまま特化なし
そして、残る五匹は毒特化のつもりです」
「へぇ、面白いね
伝号配達は、ギルドに融通ありかな」
「はい、そのつもりです
五匹の予定で、あとはフリーの予定です
宿屋とか、他の所で使う予定です」
「うん、それぐらいでいいと思うよ
さすがに、マジックスライムは無理か」
「無理だろうな、上位種のまねごとをしても
所詮は、付け焼刃
レベル5の魔法がすべて取れたらましなぐらいだ
だから、ヒールスライムに近いものになるのはいいだろう」
「はい、ラムムンも、無理はしないとのことです」
「それがよいだろう
さて、片づけしてティータイムと洒落こもうか」
「はいっあと万能スライムなので
個体識別させたいんですが、いい方法ありますか?」
ラムムンは、皆をもぐもぐしながら、聞き耳中
「物をいれて、表示が一般的だな」
ぽんと、スライムを叩くと、ふよりと何かを中で浮遊させている
「ルイズ印・・・」
ぷふっと私は噴き出した
本当にそう書いてあるコインがぷかりぷかりと浮かんでる
「ちなみに、魔力倍増石だ」
ああ、あのおったかーいやつね
金属じゃなかったのかって言いたいぐらい
細かい銀がちりばめられた綺麗な石で
めちゃくちゃ固い、そして重い
一度魔法屋さんで後学のため持ってみなさいって触らせてもらったけど
銀貨サイズだと、家が一軒買えちゃうかもというかんじ
だから、山先生が本当にスライムとともに戦い
大事に使役してたのが分かる
「お前の場合は、さすがに、これを使うわけにはいかんだろう
異世界人ということで、独自の文字をもっているんだろ?」
「あ、はい」
私はメモに『杏』と漢字を書いた
「文字か」
「はい、漢字という種類の文字です
ちなみに私の名前の1文字です」
「へぇー絵みたいだね」
「そこから始まったものときいてますけど、よくわからないです」
「よし、それを採用しよう
その前に、茶だ、茶、おーい」
「はいはい、お待たせしましたー」
両手にお盆を持って、カールさんが入ってくる
ちらり、と私を見てにこりと挨拶
だけど、ギルドのおにーさんを見て、すっと目をそらした
あれ?仲悪いのかな
「はい、アンちゃんのね
スペシャルバージョン楽しんでね」
「わーい、おいしそうですっ」
目の前のふわふわのホットケーキと
たっぷりのクリーム
それに果物
贅沢すぎる
ラムムンが狙ってるっ確実にっ
「はいはい、ラムムンのはこっちね」
とんっととなりの席に置く
そこは、おにーさんの場所なんですが
とんとんっと並べて、人数分はあるけど
おにーさんのお茶が対角線上ですよーっ
カールさーんっ
「はい、どうぞ」
手を伸ばして取ると、あ、ああ、なんて後ろを振り返って
不穏な気配をひっこめたけど
やっぱり仲悪いんだー
うう、なんか知りたくなかった情報かも・・・
はい、二話連続でやっと人の名前が、ギルドのお兄さん派お待たせしましたーっ
ちびちゃんたちくっつく気なし、このままの数で行っちゃうよーっ




