表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

涼やかのように | 天気:曇り

「そろそろいいかな〜」


そう言いながら水面を蹴りながら浸したスイカの方に向かう。


ポンっと手のひらでスイカを叩けば響く良い音。


「じゃあこっちに運んで〜」


そんな言葉を零しながらスイカを川から少し離れたところに運んでいく。


「こういう時に便利だな〜」


そうとも零しながらスイカを洗っていく。


神の力ってのは本当は社のためだとか人のためだとかのものだけどスイカを洗っちゃいけないとかの掟は無いからいいね!


「...これ本当に美味しいの?」


「すごい緑色......」


隣からスイカを撫でながら呟くように聞こえるキミの声。


「甘くて美味しいんだよ!!」


早く食べて欲しくて。

キミの笑顔が見れるかもと思って。


そんな明るい声を返す。




「わぁ...!!!」


緑を切れば顕になる真っ赤なスイカ。


それを見ただけで感動しそうなキミを見る。


愛おしいと思い、つい頭を撫でる手が出る。


それを不思議そうに見上げるキミ。


「...あったかい」


小さく呟くそんなキミの声が聞こえた。


聞こえてしまった。


「そ、そりゃあ僕は夏の神様だからね!!」


言い訳するように隠すように。

そう威張るように誇るように。



「あ!大事なの忘れてた!!」


独り言には思えない声量で呟いて懐からあるものを取り出す。


「じゃじゃ〜ん!!」


見せつけるように。

マジックの種明かしのように。


効果音をつけてキミに1粒渡す。


魔法のラムネを。


「...ラムネ?」


「なんで?」


ポンッポンッポンッとキミの頭上に次々とはてなマークが浮かぶのが見えた気がした。


なんだかキミの世界には疑問にありふれてて羨ましいなぁ...


ふとそんなことを考える。


「いいからいいから〜、食べて?」


そんな押しつけのような言葉を渡すとキミの警戒心は明らかに増し増しになる。


最初の時よりも。


まるで毒味を強要しているようで僕まで嫌な気分になる。


「...時雨さんもこれ食べますか?」


「当たり前じゃん!!ほら!」


そう言って僕は自分の手にあったラムネを口に放り込む。


犬が芸で飼い主に投げられたおやつを口でキャッチするようにパクリと。


「ん〜!!美味しい〜」


明らかにわざとぽかったのかキミは怪訝そうにこちらを見るだけで食べようとしない。


毒は入ってないのを証明するために食べて見せたけど意味なかったのかな...


ふとそんなことを思ってしまう。


「......」


ラムネを見つめてから僕の方を見る。


それを繰り返す隣に座るキミの姿。


「大丈夫だって〜!!毒とか入ってないから!」


そう言うとキミは『じゃあ』と言って口に放り込んだ。


舌で転がして口の中で味わい、

少ししてカリカリと噛む音が聞こえた。


「......美味しい」


「涼しい」


ぽつりぽつりと二言零した。


「でしょ!!」


そう自慢げにしながらも心では『普通のラムネなんだけどなぁ...』なんて余計な一言を零す。




「はい、どうぞ」


「キミの分ね」


そう言って明らかに大き過ぎでしょってくらいに切った大きなスイカをキミに渡す。


スイカの断面は真っ赤で種が太陽の光で黒曜石みたいにキラキラと輝く。


若種が無くて明らかに質がいい。


先代から伝わるスイカ畑で育てたスイカなんだけどなぁ...


結構良い代物なのかな...


そうまじまじとスイカを見つめながら心で呟く。


その時、

隣からシャクッという響き良い音が聞こえた。


「あ、」


『食べたんだ』自分では口に出して言っているはずだった。

が、現実は心で喋っているだけだった。


そのせいかキミはハッとしたように僕の方を見て戸惑うように慌てふためいて


「ぇ...、?」


「もしかして食べちゃダメでした?」


と涙目で言ってくる。


「違う違う!!」


「そうじゃなくって!」


「えっと、なんていうんだろ...」


「...美味しい?スイカ」


絞り出した挙句に出した言葉がそれ。


自分でも愚かだと思えた。


「美味しい...です......」


ふと今考えればキミはいつも敬語。


癖なのだろうか。


「敬語じゃなくていいのに」


ぽつりとそんな独り言を零す。


キミには聞こえないくらいの声量で。


「......ごめんなさい...」


しかしキミには聞こえていた。


とんだ地獄耳だと思った。


「なんで謝るのさ!!」


「別にそういう意味で言ったんじゃなくて!」


「全然敬語でもいいんだよ?!」


さっきのキミの戸惑い慌てが感染ったように手をあわあわさせながら長いレシートのようにつらつらと喋っていく。

だが早口で。


キミに聞こえてたかは分からない。

いや、聞き取れてたかは。



「というかスイカぬるくなっちゃうから食べよ?」


そう言い、

フライングするように僕はスイカにかぶりつく。


いやフライングしてるのは既にスイカに歯型の証拠が残ってるキミの方だけども。


「甘くて美味しい!ね!」


キミの方を向けばさっきの困惑顔は消えていて。


代わりにあるのは美し儚い笑顔で。


「...ラムネのおかげですか?」


「ん?何が?」


「...涼しいの」


「夏に冬が訪れたみたい」


また、それ。

詩じみた、言葉。


それを聞く度に胸が痛くなる。


なぜかは、知らない。


「そうだよ」


「ラムネ食べてからスイカ食べたらより涼しく感じるんだ!」


「へー...」


「......スイカ、好きです」


「好き......」


「それなら良かった!」


そう喋りながらスイカを食べ進めていく。


かじる度に水分と果汁が溢れ出てくる。


甘くて涼しくて。


同時に種飛ばしをして遊んでみたり。


はたまたどちらが遠い場所に飛ばせるかなんてまた競争してみたり。





「ふぅ〜...食べた食べた!」


お腹をポンっと鳴らせば先程のスイカみたいな音が響く。


まぁ、そんなわけないけど。


そう1人で心の中でクスクス笑いをしていると何やら肩に少し重みを感じた。


反射的にちらりとキミの方を見るとキミは僕の肩に寄りかかって寝ていた。


きっと満腹になって寝てしまったんだろう。


川で遊んだし尚更か。


「赤ちゃんみたいだなぁ...」


キミの頭を撫でながらそう呟く。

が、ふと気づく。


一瞬、避けられた。


寝ているのに頭を撫でようとした手を避けられた。


まるで反射的に避けるかのように。


「気のせいかな」


そう思い込みたい願望を口にしながらキミを抱き上げて暑くも寒くもない丁度いい温度の木の下の木陰に寝かせる。


もちろん僕も隣に。


追加で神の力で使って出した葉っぱたちの布団を僕とキミに掛けて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ