第8話 彼女の計画 “会いましょう”と言われた瞬間
前回のお話、お読みいただきありがとうございます。
Xのあの新規アカウントは、まだ何も投稿していない。いいねも、それっきりだ。
拓は時々、そのアカウントを開いては、プロフィールを眺める。何か手がかりはないかと。指がスクロールするたび、画面の向こうに誰かの気配を感じる。でも、何もない。ただそこにあるだけだ。まるで、見られていることだけを伝えるために存在するかのように。無言の証人のように。
裏アカ。それは、自分が誰でもない誰かになれる場所。本当の自分を曝け出せると思っていた場所。でも、今は違う。あそこにあったのは「本当の自分」ではなく、「見せたい自分」だったのかもしれない。
あの新規アカウントは、その「見せたい自分」を映す鏡のように思えた。誰かが、俺の裏アカを見ている。その事実が、俺の存在を肯定しているようで、でも同時に、否定しているようでもある。
拓はスマホを置き、天井を見上げた。部屋の空気が、重くのしかかる。
誰が、何のために。
純か、瞳か。それとも、まったくの第三者か。あるいは――自分の妄想が生み出した幻か。
そして、自分はこれからどうするのか。このまま何もなかったかのように振る舞い、時が解決するのを待つのか。それとも、自ら確かめに行くのか。
答えは、まだ出ていない。
でも、胸の奥で、何かが蠢き始めている。長い冬眠から覚めた熊のように、ゆっくりと、重々しく。
窓の外で、夜が更けていく。
そして、彼はある「決断」を下すことになる。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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