第7話 彼女の計画 誰かに“見張られている”
前回のお話、お読みいただきありがとうございます。
夜、一人で酒を飲みながら、考える。
純が瞳に拓の裏アカを教えている可能性。二人が繋がっていて、拓を監視している可能性。もしそうなら、あの「不倫してるみたい」というメールは、わざと拓に送った警告か? 「私たちはあなたのことを知っている」という、暗黙のメッセージか?
でも、純の「それは分かってる」という返信。あれは、俺の動揺を確かめるためのものだったのか? それとも、純は俺の味方で、瞳の行動を教えてくれただけなのか?
純が拓に好意を持っている可能性。だから瞳を貶めたい。あのカフェでの会話――「変態ですね」と言いながら、目は笑っていなかった。あれは、興味だったのか、それとももっと別のものか。
瞳が他の男と会っている可能性。そしてそれを隠すために、ドタキャンを仕組んだ可能性。新規アカウントで拓を監視している可能性。彼女の計算高いところを知っている。彼女なら、やりかねない。
しかし、もし瞳が本当に離婚を考えているなら、その重みはどれほどのものか。夫との関係、社会的な立場、家族や友人への説明。すべてを投げ打ってまで、拓との未来を選ぼうとしているのか。それとも――
どの可能性も、完全には説明できない。どの可能性も、完全には否定できない。
その頃、純も同じ夜を過ごしていた。
窓の外の夜景を眺めながら、彼女は考えていた。
――彼は今、私のことを考えているだろうか。必死に推理しているだろうか。
その想像が、彼女に甘い興奮をもたらす。
でも、その興奮の奥で、かすかな罪悪感が芽生えているのも感じていた。
――私は、彼を弄んでいる。彼の不安を、自分の愉しみにしている。
それが、怖い。でも、止められない。
グラスの中の氷が、溶ける音がする。ちり、と、かすかに。
拓は窓の外を見る。雨は上がっていた。アスファルトが、街灯の光を反射して濡れ光っている。
明日も職場に行けば、瞳がいる。純がいる。二人は普通に振る舞うだろう。拓も普通に振る舞うだろう。
でも、心の中はもう普通じゃない。一度開いた亀裂は、広がる一方だ。
いつ、すべてが崩れるのか。あるいは、もう崩れ始めているのか。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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