第19話 彼女の背中 第3話 “見ているのは誰か”
前回のお話、お読みいただきありがとうございます。
それから純は、密かに「観察」を続けた。
電車の中。カフェの窓際。公園のベンチ。見知らぬ人たちの一瞬の表情、何気ない仕草。それを頭の中で物語にする。
ある日、駅前のベンチでスケッチブックを広げている女性を見かけた。彼女は何かを描いている。でも、時々顔を上げては、通り過ぎる人たちをじっと見つめている。
「私と同じだ」
純は、そう思った。
数日後、また同じベンチでその女性を見かけた。純は勇気を出して声をかけた。
「すみません、何を描いているんですか?」
女性は驚いた顔をしたが、すぐに優しく笑った。
「人です。通り過ぎる人たちを、勝手に想像して描いてるんです」
純は、胸が高鳴った。
「私も、同じことをしています。観察するのが好きで」
「そうなんですか?」
二人は、それから時々会って話すようになった。女性の名前は沙織。イラストレーターを目指しているという。
純は沙織との時間を大切にしながらも、時々ふと、あの喫茶店での会話を思い出す。拓が「自分の弱さも認められる人だ」と言った言葉。あの時、自分は何かを変えたかったのだ。
その「何か」が、今、静かに形を結び始めようとしていた。沙織という、もう一人の「観察者」と出会うことで。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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