第13話 彼女の計画 日常が“少しだけ狂い始めた”
前回のお話、お読みいただきありがとうございます。
数週間後、瞳の離婚が成立した。
その夜、二人はささやかな祝いの席を設けた。瞳の好きなイタリアンレストラン。窓際の席からは、街の夜景が広がっている。無数の灯りが、まるで地上の星のように瞬いていた。
「これから、どうする?」
瞳が、ワイングラスを手に尋ねた。
「どうするって?」
「私たち。正式に付き合う? それとも、まだ隠すの?」
拓は、瞳の手を取った。彼女の指は、少し冷たかった。
「隠さない。もう、隠す必要はないだろう?」
瞳は、微笑んだ。その笑顔は、今まで見た中で一番、晴れやかだった。
「そうね」
「でも、職場ではしばらく今まで通り。急に変わると、噂になる」
「分かってる。私はそれでいい。ただ、あなたと一緒にいられるなら」
瞳は、グラスを掲げた。
「拓さん、私ね、ずっと計画してたの」
「計画?」
「うん。離婚して、あなたと正式に付き合うこと。それが、私の計画だったの」
拓は、驚いた。同時に、胸の奥が温かくなるのを感じた。
「そうだったのか?」
「そうよ。でも、なかなか言い出せなくて。あなたを不安にさせたくなかったし、自分でも迷ってたから。でも、今は違う」
瞳は、拓の目をまっすぐ見た。
「迷わない。あなたと一緒にいることを、選んだから」
拓は、瞳の手を握りしめた。温もりが、互いに伝わる。
「ありがとう」
「こちらこそ」
グラスが、かちりと軽い音を立てた。窓の外では、夜景が静かに広がっている。
その夜、家に帰ってから、拓は裏アカを開いた。削除するかどうか、また迷っていた。でも、今日は違う意味で見つめた。
このアカウントは、かつての自分が必死に隠してきたものだ。恥ずかしい過去であり、消したい記憶でもある。でも、同時に、自分を作り上げたものでもある。
拓は、ノートにペンを走らせながら思う。
パンストフェチは、恥ずかしい過去じゃない。俺の一部だ。それを隠し続けるより、認めて生きる方が、楽だ。
彼は、ノートを開き、ペンを取った。
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