このハンバーガーすげぇうめぇ!
この作品はSCPに多大なる影響を受けています
あなたは消された存在、美味を知っているだろうか。誰にでもある食べ物の好き嫌い。本来我慢するべきそれを殺し得た存在だ。今日は美味について語っていこう。
といっても、美味の説明はとても簡単だ。それは、味を変えるだけなのだから。
美味を利用すると、
ケーキはしょっぱく、塩焼きはすっぱく、ポン酢を飲めば旨味を感じるようにできる。
不味そうだ、と思っただろうか。しかし、これはほんの一例に過ぎない。
体に良い物は心に悪く、心に良いものは体に悪い。というように、好きなものだけを食べて生きていくことはとても難しい。
毎日ジャンクフードを食べれば早死にするし、体の健康だけに気をつけた食事は、心を病むだろう。
そんな中、この美味があれば話は変わる。
青汁がコーラの味ならみんなが健康優良児だ。
実際、この美味があったころ、人類の自殺率は一桁を下回った。美味は確かに人を幸せにしたのだ。
ではなぜ消されたのか。この理由は、美味が大量の人を殺したからだ。美味は自殺こそ減らしたが、美味が原因で世界人口のケタを二つも減らした。
疑問に思わないか?
健康食品の味が好きなものになったというのに、そんなにも人が死ぬことを。
これは美味のデメリットなどではない。かといって美味の奪い合いが起きたというわけでもない。人の怠惰が招いた事態だ。好きなものを好きな味で食べれるようになった人類は、美味に支配され、依存していき、食料を浪費するようになっていった。
では、人口減少の原因は食料不足か?
これも少し違う。飽食の時代に大量生産された食料は、確かに人を支えていた。問題となったのは、貧富の差の拡大。需要の膨大に増えた食料は、生存にこそ問題を出さなかったものの、嗜好品としては高額になりすぎた。
貧者の心は飢えたままだったのだ。
はじめは紙だった、そこから歯止めが効かず、釘やネジ、電池などに手を出されていった。
そう、食ったのだ。
紙を、釘を、ネジを、電池を…
大量のビルが立ち並ぶなか、草木は一切生えていない。建物の中は歯型のついた棚や机で溢れていて、倉庫は空になっていた。
「人は…虚しいな…」