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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編ホラー

お弁当

作者: 壱原 一

皆で手を合わせて、一緒に「いただきます」をする。


アルミの蓋を開けると、歩いた揺れにびくともしていない綺麗なお料理が現れる。


エビしんじょに、カニクリームコロッケ、そば寿司、ほうれん草のピーナッツ和え、デザートに小さなエッグタルト。


Aの大好きな物ばかり、たくさん詰めたおいたよとママに笑顔で手渡された。


張り切って早起きして作った、絶対おいしい自信作だから、いっぱい遊んで、お腹すかせて、残さず食べて来てねって、上機嫌で頭を撫でられた。


残さず食べて来てくれなきゃ、ママやだよと、まだ引っ越したばっかりの、新しい道すがら言われた。


残したらすぐ分かっちゃうんだから、絶対残さず食べてよって。


Aは食べられないんだから。大した事になんないんだから。


あんたがやったことなんだから、必ず全部食べなさいよって。


――Bちゃんのお弁当まずそう。見て、Aちゃんのはおいしそう。ママ、Aちゃんの方が好きだからだよ。


あの朝、キッチンで、ママが後ろを向いていた時、無邪気に自慢したAちゃんに、Bはちょっとアレルギーだからだよ、ママが別で作ってくれてるんだよ、ママはAちゃんもBも好きだよって、ちゃんと言えれば良かった。


ちゃんと言えれば良かったけど、Aちゃんのママがいなければ、Bはまだお母さんといられたのに、ちょっとアレルギーがあったって、お母さんが工夫して作ってくれてた、おいしいお弁当を食べられたのに、なんであんたのママが作ったまずそうなお弁当と比べられて自慢されなきゃいけないのって。


気付いたらAちゃんを突き飛ばしてて、Aちゃんは角で頭を打った。


それからずっと病院にいる。


ママがAちゃんとBを乗せて、車で病院に行く間、ごめんなさい、お父さんに言わないでって、泣いてわがままを言ったBに、ママは何も言わなかった。


病院から帰って来た後、Aちゃんのお弁当を差し出して、お腹すいたでしょ食べなさいって、Bのお弁当を食べながら言った。


ぎゅっと頬っぺを引き締めて、赤くからからに乾いた目で、Bを静かに見詰めながら、あんたがこれを残さず食べたらAが転んだって言ってあげるって言った。


Bちゃん、食べて良いんだよと、新しい先生に言われてスプーンを持つ。


Aちゃんの病院の傍に、まだ引っ越したばっかりの、周りの新しいお友達は、おいしそうにお弁当を食べている。


Bもお弁当を食べる。


ママが作ったAちゃんの大好物のお弁当を食べる。


感触が広がっていく。



終.

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