2話 地上へ
気づいたら、私は地上に落ちていた。
2回目の感覚、最初はうっかりしてただからだけど
幸い森の中に落ちたお陰で、木々がクッションになってくれたらしい、木の枝で少し切り傷を負ってしまってたが、前ほどの大怪我ではなかった。
羽は......無かった、そりゃあ当たり前か
さて、これからどうしようか、天界に行くと言ったものの、どうやって行くのかとか、ここはどういう場所なのかとか全く分からない。
まあとりあえずは前に進むのみ、私はもう天使じゃないから掟とかそんなもん関係ないのだ、ずっと見に行きたがってた新しいものを見に行ける
ユウキはいないけど.....
「とりあえず、森を出ようか」
考えてみれば、最初に地上に落ちた時は森から出ていなかった
アザゼルは光の射す方へ向かい、森を出た
「わぁ......」
その景色はアザゼルにとって初めてであり、最高のものだった
天から見たものとは違う、地面では野原が波打ち、所々では花々が揺れ、空では真っ白な雲が流れている
初めて見た景色に、アザゼルは少しの間見とれていた
「まちな」
突然、後ろから声をかけられた、声がした方向を見ると、1人の女性が立っていた
「なんだ?」
「怪我をしてる」
「ああ、この怪我か?重傷ではない、ほっとけば治るさ」
平気な顔をしてるアザゼルの話を遮り、女は強く続けた
「いや、少しの傷でも感染症にかかるかもしれない、念の為応急処置をする」
「は、はぁ...」
『早くどこかに行きたいんだけどな...』
言われるがまま、アザゼルは女性の処置を受けた
消毒液で消毒をし、その後にバックから取り出した聖水と書かれた瓶を開け、それを傷口に流す、そして、緊急用と書かれた瓶を開けて...
「おい、さすがに大袈裟じゃないか?、それに使ってるものも明らかに高価な物だったり、易易と使っちゃいけないものばかりじゃないか」
「少しの傷でも、感染症になって死ぬんだぞ」
そう言って女性はまた瓶を開けて傷口に流し続ける、もう腕が液体だらけでびしょびしょだ
「もういい!これ以上はもういいだろ!」
そう言ってアザゼルは掴まれた腕を無理やり振りほどいた
しかし、女性はまた腕を掴んで液体を流し続ける
「...ッ!もういいから!もういいって!」
抵抗するアザゼルをみて女性はようやく液体を流すのを辞めてくれた
「じゃあ今度は包帯だな」
「え」
「それと、絆創膏と、あと湿布とか...」
「〜ッ絆創膏だけでいいから!本当に大丈夫だから!!」
そう言われても女性は包帯もう少し巻くべきだとしつこく言われたため、アザゼルは女性の持ってた包帯を投げ捨て、何とか絆創膏と包帯だけに落ち着いた
包帯は五十重にまで巻かれた
腕が重い......
「な、なぁ?なんで傷に対してこんなに過剰なんだ?どうしてこんなに敏感に......」
「お前は知らないだろうが、ここはな、本来は戦場に出る兵士しかいない場所なんだ」
「そこで聞く、なんでここにいる?」
話を聞いてない.......
「なんでここにいる?」
女性が2度聞いてきた、明るい雰囲気だった草原は、いつのまにか女性の威圧によりピリついた雰囲気に変わっていた
辺りでは風に揺られる草の音が静かに流れている
ここは正直に言うべきだ、天使が架空の存在だからとかもう私には関係の無い話だ
私が天使だったってことを、正直に
「私は、ッ......」
言えない!?
これは困った、呪いなのか魔法なのかよく分からないが、自分が天使だということが言えない
そりゃあ長年天使が堕ちても地上では天使の存在が明らかにされなかった訳だ
さあ困った、こんな時、何をすればいい
そうだそういえば、昔本で読んだことのある、人間は謝れば許してくれると!
「....えと...ごめんなさい...?」
彼女の不格好な笑顔と許せるはずのない微妙な笑顔は、目の前の女性の一喝により牢獄の中へと放り込まれた
―――――――