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1話 天使、堕ちちゃった

「アザゼル、お前は天使失格だ」



人類は地上で暮らす、生まれてから、死ぬまでも暮らし続ける、人類は高みというのを知らない、その人類の頂点が集う場所、天界


天界では、天使が住んでいる、天使は一体何をしているのか?それは人が命の危機に瀕した時、それを危機一髪で助けるということをやっている、簡単に言えば奇跡を起こすことである。


奇跡というのは、そこで偶然起こったことにしなくてはならないため、その偶然に天使が関わっているということは知られてはならない。


知らたら最後、何をされるかは分からない


アザゼルという1人の天使は、その天使の頂点であるソロモンに天使失格を言い渡されていた


何故こうなったのか?それはここから5年前のことだった

―――――ー

5年前...


「そこ、さぼらない」

いつものように私はさぼっている天使に注意をする、私の役職は部下の見守り、簡単な仕事ではあるが、正直つまらない。


なにか刺激が欲しいと思う日々、例えば突然時空の裂け目が出てきてそこから謎の侵略者が現れたりだとか、はたまた天界が突然闇に包まれて一人一人殺されていくとか。


まあ、天界は大昔から大事件のような事は起こってない、本当に平和すぎる場所、起こるわけもない


私は子供の頃から新しいものが好きだった、新しい景色、新しい建物、子供の頃はいつも天界の色々な場所に行ったりしてた、遠くまで行き過ぎて迷子になったこともあった。


でももう行くところもない、全部見尽くしてしまったからだ。


本当に暇だ


次の日も、また次の日も、同じことをする、同じことをして、少し怒られて、1日が終わる。


しかし


今日も私は、部下の見守りをしていた

「暇だなぁ......」

私はそう思いながら座り込んだ

『少し眠くなってきたな...』

そう思った私は、少しだけ壁に寄りかかって仮眠をすることにした、どうせ少しぐらいサボっても文句は言われないだろ



私は壁によりかかり、睡眠の体制を取る、いかにも、ここから落ちることなどそうそうにない、だってここから落ちるのには際が遠すぎる、落ちることなんてない


ない、うん、大丈夫だ、落ちるなら寝ぼけて歩き回ることぐらいしか想像できない、落ちることなんて無かったんだ、無かったはずなんだけど




「やらかした」



恐れていたことが起こってしまった、今の私の状況は足が頭に、頭は足、空から地上に、これは自由落下状態だ、傍から見たら、晴天の青空に何故か白い流れ星のようなものが落ちてきてると思ってしまうだろう、翼を広げて飛ぼうと思っても、とんでもない速度で落ちているため、翼を広げても飛ぶことができない

さあどうしよう、このまま落ちたら、いくら天使とはいえ無事では済まない、空から地上までの距離はまだまだある、体を捻って体制を整えようとした、しかし、落ちたら瞬間なら大丈夫かもしれないが、もう落ちてからかなり経っている、私の速度は既に音速を超えているだろう、動かせない


空に戻ることよりも、地上にどうやって落ちたら無事なのかと考えた方が良い、そうして考えようとした、しかし、アザゼルの体から地上までの距離は遠くはなかった



考えようとした瞬間に、私の体は勢いよく頭から地面へ叩きつけられた、周囲の草木達が衝撃で揺れる、地面は陥没した



「痛い......」


私が天使で良かった、普通の人だったら粉微塵になっていた、まだ頭痛がする程度に収められていた




私は羽を広げて飛ぼうとした、しかし上手く飛ぶことが出来ない、どうやら頭だけでなく翼もやってしまったらしい、これでは飛ぶことが出来ない、回復するまではどこかで休もうと、身体を動かそうとした



動かない



身体中に激痛が走る、どうやら全身をやってしまったらしい.......


しょうがない......救護要請を.......


「大丈夫......ですか?」


突然後ろから話しかけられた、後ろを向くと、1人の男が立っていた


まずい、姿を見られてしまった。


「来るな!人間!」


しかし身体中ボロボロの状態でまともに動けるはずもなく、私はその場に倒れ込んでしまった。


男は近づいてきて、倒れ込んだ私に近づいてきた


「大丈夫ですか?身体、動かないんですか?」


「触、るな......」


私は少しの間状況が読めなかった、刺したはずの男が私を助けていたのである。そしてわざわざ森の奥まで連れて行ってくれ


「お前......なんで私の事を.......近づくなと言ったのに.......」


「貴方、孤児ですよね?」


「......は?」


「よくこの辺りにはいるんですよ、孤児がよくここに住んでいる」


なんてことだ、ラッキーと思うべきなのか、男は私を天使だと思ってはいなかったらしい、ならこのまま孤児として演じて、回復した隙に天界へ戻ろう。


だが......まだ聞き足りないことがある


「でも、なんで助けたんだ、私はお前を刺したんだぞ」


「そんなこと、きまってるじゃないですか、貴方がボロボロだったからです」


「...え?」


「私はね、辛そうな人は、放っては置けない性格なんですよ、特に貴方のような怪我人で、かつ孤児の人は」


「そんな理由で......私を......?」


「ええ、悪態つかれるのも慣れたもんですよ」


......私が教えられた人間と違う......人間は地上のゴミだって、私たちが作った綺麗な水を汚すような生物だと、大事な文明を容易く壊すような生物だと......私は教えられてきた......違う.....本当に人間?


「お前......優しいな.....」


「はぁ?なんですか突然」


「......名前は?」


「ユウキです!貴方は?」


「......アザ.......アベルだ」


「アベルですか、いい名前ですね!」


その後、私はユウキと時間を忘れて夢中に話した、本当に新鮮な気分だった、天界にいた時のような、同じことを続けるような、あのつまらない日々とは違う、心のそこから楽しかった。


天界にはない海の話、天界にはない山の話、天界にはない、祭の話。


いつしか私は、この場にずっと居たいと思ってしまった。


体が回復した、しかし、行きたくはない、だが行かなくてはならない。


「すまない、少しお手洗いに...」


「ああ、分かりました」


「......なぁ」


「どうしました?」


「海って、どこにある?」


「森の奥を進めばありますが.....」


だめだアザゼル、お前は天使、下級生物なんかと散歩など、屈辱以外の何物でもないぞ、その線を超えたら、お前は戻ってはこれない。


だけど.....


「連れて行って.....くれないか?」


「いいですよ!」



言ってしまったーー!!!!



「ここです」


「わぁ......」


圧巻だった、見渡す限り青が広がっている、新鮮だった、今まで見てきた景色の中で1番美しい


私が海に見とれていると横からユウキが何か、白い物を渡してきた


「なんだ、これ?」


「貝です」


「カイ?」


「知らないんですか?まあ簡単に言うと、海の生物です」


「海の、生物......」


それは私からみたら新しいものだった、ゴツゴツしてて汚いように見えるが、よく見ると美しい



「......なぁ、ちょっとお手洗いに行ってくるよ」


「またですか?分かりましたよ」


.....戻らなくてはならない、だが、もう多分天界には知られている、いっそ、堕天使にでもなって、ここで余生を過ごしていたい。


何故会って1日もしてない人間にここまで心が踊ってるのか、何故少し話しただけなのに、何故ここまで楽しいのか。

私はもう分かっていた、新しいものをみたい、新しい感覚を味わいたい、この感覚はこの500年、忘れかけていた感覚だった、久しぶりだった、楽しかった。


新しいものをもっと見たい、私は好奇心でいっぱいだった。


すぐに用を済ませたらまた会いに行く、長くなるかもしれないけど...だけど、会いに行く、また新しいものを教えて欲しい


そう、心の中で思いながら、アザゼルは天界へ飛んで行った



ーーーーーー


そして現在.....



「お前は人と関わった、天使は架空の存在じゃないといけない、その概念をお前は壊したのだ、天使失格は、何を意味するのか分かってるよな?」


「...」


「お前は羽を失い、惨めに地上人としてくらさなくてはならない」


天使は生物の頂点であり、それは天使達も理解している、その頂点の天使が地上に降りて人類と暮らすことは、天使達にとっては屈辱でしかないのだ


しかしソロモンは少し微笑み

「と、言いたいところなんだが、私はお前が気に入っている、お前のような優秀な天使を簡単に失うわけにはいかない」


「...なにが言いたい」


「いや、なにか対価をくれとは言わない、というよりも、もう対価も必要ない」


「...は?」


ソロモンは微笑みながら続けた


「お前の関わった人を始末した、要するに、無かったことにしたんだ」


「...!?」


「危機一髪だった、あと少し遅ければ天界中に知られることになっていた、この秘密は私とお前だけだ、これで明日からも普通に天使として暮らせる、良かったな」


ソロモンは嬉しそうに語った、しかし、アザゼルの反応は嬉しいものでは無かった


「...関わった...人?お前...ユウキを殺したのか?」


「ああ、お前だって不可抗力だったのだろう?」


ああそうだ、不可抗力だ、不可抗力なんだ、どうしてただの人間一人にここまで期待してたのだろう、平和にすごす方がいいじゃないか、だからこのまま変わることのない生活を、平和にのんびりと過ごせばいい、新しいものはもう...


「ふざけるな!!!お前...なんてことをしやがったんだ!!」


「...!?」


気がついたら声を上げていた、自分でもよくわからなかった、ただはっきりとわかるものがあった、「悲しい」それはアザゼルにとって初めての感覚だった、もう、自分では止められなかった


「ユウキは私に、色々なことを教えてくれたんだ!そのユウキを...お前は...!」


「お前...人と関わったのは不可抗力じゃないというのか...?」


「ああそうだよ、私はユウキと関わった」


「お前...!私の情けを踏みにじったんだぞ!馬鹿野郎が!天使共!こいつは天使失格だ!地上へ堕とせ!」


アザゼルはすぐに天使に取り押さえられた、そして羽をむしられた


「アザゼル、最後になにか言うことはあるか?」


「フン....」


「無いのか、残念だな、最後にお前の声を聞きたかった」


その時


アザゼルはソロモンに思いっきり体当たりをした


「ぐっ......この野郎!」


ソロモンはアザゼルの顔を殴った、そのままアザゼルは天界から地上へと落とされる


また落ちた、この感覚は初めてでは無い、さっきまで落ちた感覚と一緒だ、しかし、何故自分はあんなことをしたのだろうか、大人しくうんうんと頷いてれば、良かったのに、何故なんだろうか。

元はと言えば自分が地上に行きたかった理由はユウキだ、ユウキがいない地上などいる必要もない。


ただ、1つ分かってることがあった、ユウキが殺された時だ、あの時、初めて悲しいと感じた、今はもう恨めしくもなってきた。


もう決まりだった、目的がないのなら、作ればいい。


私は天界に戻り、ソロモンを殺す。



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