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第90話 テネリタース教団への侵入

 「う~ん……むにゃむにゃ……。もうぉ~、美味しいけどそんなに食べられないよ~、PINK-87さん……」


 「(マスターっ!。寝言でしょうが今PINK-87さんと魂のコードネームを口走ってしまっていましたよっ!。今は誰も近くにいない為大丈夫でしょうがいつ誰がやって来るとも限りません。もう朝ですので早く起きて下さいっ!)」


 「えっ……なんだって……アイシア」


 「お~い、ヴァン君~。そろそろ朝食の時間だから早く食堂に行こ~」


 「(ほらっ!、モタモタしている間にターナさんが起こしに来てしまいましたよ。また不用意な寝言を口走ってしまう前に早く起きて下さいっ!)」


 「(早く起きるなの~っ!、LA7-93っ!)」

 

 「(起きるなの~っ!)」


 「ええ……そんなこと言わずにもう少しだけ寝かせてよ……むにゃむにゃ」


 工作任務の為テネリタース教団に入信して3日目の朝。


 僕はもう時刻は7時を回っているというのに僕は自室のベッドで眠ったまま不用意な寝言を口走ってしまっていた。


 アイシアとベル達が必死に僕を起こそうとしているが、夜な夜な工作任務について色々と計画を立てていた為か中々眠気から覚めることができない。


 【転生マスター】の何時如何なる時も魂の記憶と思考を有することができるという効果も寝ている時は例外となってしまうらしい。


 そんな僕を起こそうと寮のルームメイトがやって来て声を掛けてきた。


 「ねぇ~、早く起きてよ~、ヴァン君~」


 「何やってんのっ!、ターナっ!。早くしないと朝食に遅れちゃうよっ!」


 「あっ……ラナちゃん。でもヴァン君が……」


 「もうぉ~っ!。ターナはいつも起こし方が優しすぎるのよっ!。こいつは筋金入りの寝坊助なんだからこうして叩き起こすぐらいでないと……ほらっ!、とっと起きろっ!、ヴァンっ!」


 「うわぁっ!」


 ドスンっ!。


 っと鈍い音を立てて僕はベッドから転げ落ちてしまった。


 いつまでも目を覚まさない僕に腹を立ててルームメイトが僕ごと敷布団を捲り上げてしまったのだ。


 衝撃と痛みで流石の僕もそれで目を覚ました。


 目を覚ました後僕はルームメイト達と共に寮の部屋を出て朝食を取る為皆が集まる大食堂へと向かって行く。


 「ほらっ!、何ボサッとしてんのっ!。あんたのせいで遅刻しそうになってんだからもっと急ぎなさいよっ!」


 荒々しい口調で外の景色を見ながらゆっくりと歩く僕をまくし立てているのがルームメイトの1人であるラナリー・レントラス。


 ショートボブの真っ赤な髪が印象的な見ての通りとても気の強い女の子だ。


 只その分しっかり者で今朝眠り呆けていた僕を叩き起こしてくれたようにテネリタース教団に入信したばかりの僕に対し色々と世話を焼いてくれている。


 「確かにギリギリだけど何とか間に合いそうだしそんなに焦らなくても大丈夫だよ、ラナちゃん。ヴァン君はまだ目が覚めたばっかりなんだからもっとゆっくり行ってあげよう」


 優しい口調で僕のことを気遣ってくれているのがもう1人のルームメイトのターナ・リーフラスだ。


 長いベージュの髪をしていてラナリーとは打って変わってとても温厚で優しい性格をしている。


 ラナリーと共にターナも色々と僕に対し世話を焼いてくれて、入信して以来朝はこうして3人で時間ギリギリで食堂に向かうのが日課になっていた。


 「そんなのこいつが毎朝ギリギリまで眠り呆けてるのが悪いんでしょうが。全く毎朝毎朝私達に起こして貰った挙句慌てもしないで外の景色に魅入ちゃってどんだけ自分勝手な性格をしてるんだが」


 由緒あるテネリタース教団の本拠地となっているだけあってティアリス城はとてつもなく巨大で立派な造りとなっていた。


 内装も豪華で高級そうな装飾品や展示物が至るところに飾られている。


 ティアリス城は山中の比較的に高い場所に建てられているのだが、僕達の寮は《りょうとう》は城の本棟ほんとうから山中の川を挟んで建てられた東棟ひがしとうとなっている。


 寮のある東棟から大食堂のある本棟へと移動する際には今僕達が歩いている川を挟んで2つの棟を繋ぐ渡り廊下を通らなければならないのだが、この渡り廊下から見渡せる光景がこの上なく絶景なのだ。


 山頂側となる北側には50メートル以上の落差から巨大な滝が一直線に流れ落ちている。


 その流れ落ちた先にはこれまた巨大な滝壺が広がっていて、底まで見通せるような透き通った水に山の木々達の鮮やかな緑が映り込みとても神秘的だ。


 ふもとの側となる南側は川の流れていく先に神殿や教会などが数多く建つティアリステッラの神聖な街並みが一望できる。


 更に滝の水飛沫で程良く冷やされた山頂側から吹き込む風がとても心地よく、壮観な景色と相まってこの渡り廊下を通る度についつい足を止めてしまう。


 入信したばかりの僕達をこのような素晴らしい場所に住まわせてくれるなんて話に聞いていた以上にテネリタース教団はとても寛大な組織のようだ。


 「はぁ~、相変わらずこの渡り廊下は心地の良い風が吹いて眺めも最高だな~」


 「だから景色を堪能するんなら朝食を済ませてからにしなさいよっ!。もう私は先に行くからねっ!」


 「あっ!、待ってよ~、ラナちゃ~ん。ほら~、ラナちゃんも怒って先に行っちゃったしヴァン君も景色を楽しむのは後にして早く食堂に行こう」


 「あっ……ごめん、ターナ」

 

 しかし今は景色を堪能している場合ではない。


 このティアリス城では朝食と夕食は皆で決まった時間に集まって取るしきたりになっていた為少しでも時間に遅れれば食事を抜きされた挙句司教からのきついお説教が待っている。


 景色に魅入っていた意識を戻し僕はターナと共に少し駆け足になって皆が集まる大食堂へと向かって行く。

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